第11話 オタクでも身だしなみには気を使わないとね!
「いや、わからないです。」
蒼は正直にわからないと答えた。
やはり、これは悪手だった。
「なんでわからないの!?」
(やっぱりこうなった。)
蒼は予想通りの展開に内心ため息をついていた。
(こいつ、ストーカーの上にメンヘラ属性まで持ってるのかよ。ほんと俺はなんて奴に目をつけられてしまったんだ。)
怒られながら蒼は内心で自身のおかれている状況を振り返る。
実際何もしてないはずなのに何でこんなに怒られないといけないのかわからなかった。
「昨日一緒に買い物行く約束したよね?」
月は少し落ち着いたのか蒼に昨日の約束の件を話し始めた。
「、、、あ。」
そこまで言われて蒼はやっと思い出したらしく声を上げた。
「思い出した?」
「ああ。思い出した。そういえば昨日そんな約束をしたような気がするな。」
(そうだった。適当に流し過ぎて完全に忘れてた。)
しっかり怒られる要因は蒼にあったようだ。
「気がするじゃないよ!約束したんだよ!」
かなり食い気味に講義をする月。
「すまんすまん。昨日のコラボカフェがあまりにも楽しすぎて忘れてたよ。」
蒼は少し笑いながらそう言った。
(この言い訳でごまかせるか?)
「そんな言い訳で私は納得しないよ?」
どうやらダメだったようだ。
「まあ、それはいったんいいからとりあえず着替えなよ。」
ため息交じりに蒼に向けてそういう。
どうやらここで長い時間怒るよりも早く蒼と買い物に行きたいようだ。
「わかった。お前は部屋で待っててくれ。着替えてくるから。」
「わかった。早くしてよ~」
そんな月の声を聴きながら蒼は着替えるために自室へと移動した。
蒼はオタクではあるが意外と身だしなみには気を使うタイプの人間であるためしっかりとした服を選ぶ。
今は五月なので下は紺色のジーパンに上は半そでのTシャツの上にジャケットを羽織る。
蒼は自室においてある鏡を見ながら髪を整えて部屋を出る。
「も~おそい、よ。」
蒼に講義をしようとしていた月の口が止まる。
よく見てみるとその頬は少し赤くなっており表情はいつもより照れているように見える。
「どうした?そんなに見つめてきて。俺の顔になんかついてるか?」
(鏡でしっかり確認したはずなんだが。)
「え、あ、いやそんなことでは全然なくて。そんな風にしっかり身なりを整えてる星乃君を見たから少し照れちゃって。」
いつもは明るく騒がしい月だがそんな彼女が静かになるくらい照れているようだった。
「そうなのか?これくらい普通だろ。」
「いやいや全然普通じゃないでしょ?その格好で外に出て今まで女の人に声とかかけられなかったの?」
「何回かかけられたことはあるけど、それだけだぞ?」
「それだけって、何か言われたりしなかったの?」
「いや、少し話したいから連絡先を教えてほしいくらいしか言われたことないな。」
「ばっちり狙われてるじゃん!それでどうしたの?」
「いや、教えてねぇよ。俺は三次元に興味ないし話したいとも思わなかったからな。」
「そっか。よかった~」
そう言いながらほっと息をつく月。
「じゃあ、気を取り直して買い物に行こう!」
月は満面の笑みでそういうのだった。
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