第9話 そういえば君ストーカーだったね!?
月の看病をしてから数日が経ち蒼が待ちに待った土曜日がやってきた。
この日は蒼の推している配信者のコラボカフェに行く日だったのだ。
「よしっ!それじゃあ、行くか!」
蒼は身だしなみを整えて玄関を開ける。
そこには晴天の空
四月の下旬であるため涼しくもどこか暖かさを感じるそよ風。
それと、金髪の長い髪に美しい青色の瞳をした天使のような少女が立っていた。
(なんで?)
真っ先に蒼は疑問が浮かんだ。
なんでこいつがいるのかと。
「お前こんなところで何してるんだ?」
「ああ!ちょうどよかった。今インターホン鳴らそうと思ってたんだよね。」
笑顔で話す月をよそに蒼は考えていた。
(不味い。このままじゃ俺が楽しみにしていたコラボカフェに行けなくなってしまう。どうにかしてこいつを巻かなければ。)
まさにピンチといった状況に蒼は頭をフル回転させる。
もしかしたら受験の時よりも頭を使っているかもしれない。
(まずは素直に話してみるというのはどうだろうか?)
(いや、絶対にダメだ。そんなことをすれば絶対について来ようとするはずだ。そうなれば一人で優雅にコラボカフェを楽しむことができなくなってしまう。)
即座に自分が考えた案を自分で否定する。
「星乃君!一緒に買い物に行かない?」
蒼が必死に考えているところに月が蒼を買い物に誘う。
(どう断るのが最善なんだ?)
悩みに悩んだ結果蒼はシンプルな答えにたどり着いた。
「すまない。今日は用事があっていけないんだ。それじゃ。」
そういって蒼は月の隣を通り抜けて立ち去ろうとする。
「そっか。じゃあ、私もついていってもいい?」
(ですよね。やっぱりあんたならそう言いますよね。)
蒼は内心でうなだれる。
「いや、それは無理かな。」
「そっか残念。じゃあ、勝手についてくね。」
満面の笑みでそういう月が蒼には鎌を持った死神に見えた。
(そうだつた。忘れてたこいつもともと不法侵入してくるようなストーカーだった。どうすればいい?こいつがついてきたら間違いなく俺の楽しいコラボカフェはぶっ壊される。)
「待ってくれ。本当にやめてくれ。一人で行きたいんだ。」
蒼は切実に月に訴えてみることにした。
「いや、それはちょっとね。せっかくの休日なら星乃君と過ごしたいし。」
顔を赤らめながらもじもじしている。
(可愛くないからね?俺にはもう悪魔にしか見えないからね!?)
心の中で盛大に突っ込みを入れる蒼
「わかった。それじゃあ、明日買い物に付き合うから今日は一人にしてくれないか?」
「そういうことなら、ついていくのはやめるけど、どこに行くかだけ教えてもらってもいい?」
「なんでいわな、いや、ついてこないと誓うんなら教えてもいい。」
「わかった。」
「推しの配信者のコラボカフェだよ。じゃあ、俺は行くから。」
蒼は今度こそ月の横を通り抜けてコラボカフェへと向かうことができた。
…………………………………………………………………………………………………
(ああ、よかった。本当に良かった。)
蒼は家に帰る道すがらコラボカフェのことを思い出しながらニコニコとしていた
。
世界観に合わせた内装に推しモチーフの料理などがメニューにあり、そのすべてが蒼を魅了していた。
そうして幸せな気持ちになりながら帰路に就く。
蒼が家にたどり着いたころには19時を回っていた。
「ただいま~」
いつものように玄関の扉をあけて家に入る。
「またかよ。」
扉をあけると電気はついており、何ならおいしそうなにおいまで漂ってきていた。
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