第8話 アーカイブは見ないといけないよね?
「いきなり何言ってんだ?お前。」
「だって星乃君は彼女がいるんじゃないの?」
涙を流しながら蒼に聞く。
「いやいや、いないって。それにずっと言ってるだろ?俺は二次元にしか興味ないって。」
「でも、じゃあなんであんなに親しそうに女の子と電話してたの?」
「そりゃあ、昔からの幼馴染だからな。一応言っとくけど美波は彼氏いるぞ?」
「え?」
さっきまで勢いよく蒼を問い詰めていた月は口を大きく開けてフリーズする。
「おーい大丈夫か~?」
「えっと?つまり、美波さんっていう人は星乃君の幼馴染で美波さんには彼氏がいるってこと?」
今までに起きたことを整理するようにゆっくりと蒼に確認する。
「そういう事。それと何度でも言うが俺は三次元の女に興味はないし付き合うつもりもない。」
「そっか~よかったぁ~。」
満面の笑みでほっと胸をなでおろしている月。
どうやら、蒼が三次元の女性と付き合うつもりがないといった話はそもそも聞いていないようだった。
「じゃあ、俺はそろそろ行ってもいいか?」
「あ、うん。引き止めちゃってごめんね。」
蒼は足早に月の部屋を出るとキッチンで小粥の容器を洗う。
すぐに洗い終わり月の部屋をもう一度訪ねて帰ることを伝えた。
その時は泊まっていってほしいと言われた蒼だったが一瞬で拒否してそそくさと自宅に帰った。
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「ただいま~」
いつものように玄関を開けて誰もいない家にそう告げる。
(なんか疲れたな。)
この日の蒼はいつもとは比べ物にならないほどの疲労感を感じていた。
理由は簡単
さっきまで月の看病をしていたからに他ならない。
しかも、幼馴染である美波からの大量の不在着信の件やそれを月に問い詰められるなどつかれるイベントが多かった一日だった。
「とっととアーカイブでも見るか。」
蒼はそういうと来ていた制服を脱いでハンガーにかける。
そして部屋着に着替えたころにはすでに時刻は20時を過ぎていた。
蒼はパソコンの前に座ってyoutubeを開いて配信のアーカイブを見る。
サムネイルを見ると一時間弱ほどだったので蒼はサムネイルをクリックし動画を再生する。
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配信を見終えたころには時刻は21時を過ぎていた。
疲れていたこともあり今の蒼には料理を作るほどの気力が残っていないためこの日はカップラーメンにすることにした。
すぐにご飯を食べ終わるとお風呂に入って寝る準備をする。
「本当に今日は疲れた。」
布団に入って蒼はそうつぶやいた。
普通の男ならば美少女の部屋に入って看病をするなんて憧れのイベントなのかもしれない。
だが、蒼にとってはとても面倒な行為に他ならなった。
自分が風邪をうつしてしまった手前、看病をしないといけないという義務感と罪悪感から看病をしていた。
(正直もう二度としたくない。)
それに、幼馴染と連絡を取るだけであんなに詰め寄られるとは思いもしなかったのだ。
まあ、好きな人に自分以外の異性の影があると焦ってしまうのは理解できるがいちいちそんなことを聞かないでほしいというのが蒼の本音だった。
(やっぱり女ってのは怖いな。正直あんまり関わりたくはないがあまり邪険にしすぎるとそれはそれで同性からの反感を買う。一体どうすればいいんだか。)
蒼は布団にくるまりながらそんなことを考えて眠りについた。
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