第6話 やっぱり移っちゃったんだね?
次の日
すっかり体調が良くなった蒼はしっかりと登校していた。
いくらオタクといっても学校を休むようなことは極力したくないのだ。
「よお蒼。今日は登校してんだな。」
「ああ。昨日は熱っぽくて学校を休んでたんだよ。」
「お前が風邪ひくなんて珍しいな。なんか変なことでもしたのか?」
少しにやにやしながら海斗は蒼に問い掛ける。
「変なことをしたっていうよりはされてるのほうがどう考えても正しいだろ?」
「確かにそれはそうかもな。」
にししと笑う海斗に恨めしそうな視線をなげる。
「でも、お前あんな美少女に言い寄られて本当にうれしくないのか?」
「前から言ってるだろ?俺は二次元にしか興味ないんだって。三次元なんて何があってもごめんだね。それにお前だって告白されたら断るだろ?」
「それはまあな。だって二次元じゃないし。」
少し視線を泳がしながら蒼と同類であることを肯定した。
「ほらな?それと一緒だよ。」
(やっぱこいつ残念イケメンだな。)
「まあ、今度は体調崩さないように頑張れよ?お前がいないとアニメの話とかできなくて退屈なんだからな。」
「ああ、気を付けるよ。心配してくれてありがとな。」
「おうよ!」
にっこりと笑って海斗は踵を返して自身の教室に向かっていった。
それからは特に何事もなく一日が終わった。
気になることがあるとすれば今日は月が休みだったということくらいか。
(もしかして、昨日の風邪がうつったのか?)
だとしたら、知らないふりはできない。
昨日蒼は看病をしてもらったし、月に風邪をうつしたのは蒼なのだからその件に関しては責任を取らなければならないだろう。
(お見舞いいくかぁ~)
申し訳なさと少しのめんどくささにかられながら蒼は月の家に向かった。
…………………………………………………………………………………………………
ピンポーン
一度自宅に戻って着替えをしてお見舞いに持っていくものを袋に入れて月の家のインターホンを鳴らした。
それからしばらくすると扉がガチャリと音を立てて開かれた。
「はい?どちら様ですか、て星乃君!?」
かなり驚いたようなリアクションをしている月が立っていた。
その姿はいつも見慣れた制服姿ではなく、寝間着姿だった。
「よお、見舞いに来たんだが体調は大丈夫か?」
「え、あ、うん。朝よりは多少ましになったけどまだ熱はあるかな。」
「そうか、とりあえず部屋に上がっても大丈夫か?いろいろ買ってきたんだが、」
そういって蒼は手に持っていたビニール袋を掲げる。
「え、でもうつしちゃったら悪いし。」
少し目を伏せながら言う月だがその顔はかなり赤く熱があることがうかがえる。
よく見てみればかなり顔色も悪い。
「もともと俺がうつした風邪だろうし俺もマスクをつけるからさ。」
蒼は手に持ったビニール袋からマスクを取り出してつける。
「ほら?これなら移る心配もないだろ?まあ、お前がどうしてもいやだっていうのならこれだけおいて変えるけど。」
「待って待って!?看病していって!全然入って大丈夫だから。」
腕をぶんぶんと振りながらやや慌て気味に言う月
「了解。それじゃあ、お邪魔します。」
そういって蒼は月の家に入っていった。
(そういえば俺女子の部屋に入るのって初めてかもしれないな。なんか緊張してきた。)
「うん、じゃあお茶出すからちょっと待ってて。」
そういってすぐにキッチンに行こうとする月の手を掴む。
「何言ってんだ。お前はとっととベッドで横になってろ。何かしてほしいことがあれば言ってくれ。」
「いや、でも。」
「いいから。お前はゆっくりしてろって。食欲はあるか?」
掴んでいた手を放して月に向き直って問い掛ける。
その声はいつもの冷たい声とは違いどこか優しい声音であった。
「うん。食欲はあるかな。」
「わかった。小粥作るからキッチン借りるな~」
そういうと蒼はてきぱきと準備を始めた。
「やっぱり優しいんだね。星乃君は。」
準備をしている蒼を視界に納めながら蒼には聞こえないくらいの声量でぼそりと呟く月であった。
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