第2話 男の嫉妬って醜いよね!

「なんでしょうか?」


 蒼に声をかけてきたのは学校で一日もたたずに大人気となった少女

 陽炎 月がいた。


「私のこと覚えてますか?」


(なんのことだろう?)


 蒼にはまったくもって心あたりがなかった。

 先ほどの自己紹介のことを言っているのであればもちろん覚えている。


「同じクラスの陽炎さんですよね。」


「それはそうなんだけど他に覚えてることは無い?」


(いきなりなれなれしいなこの人)


 蒼にはこの少女との面識はないはずなんだがなんでこんなにも距離感が近いのだろう?


「いや、とくには無いですけど。」


「そっかぁ~」


 普通の男子高校生なら美少女にいきなり話しかけられるこのシチュエーションに憧れるんだろうが正直めんどくさい。

 だって、三次元に興味なんてないしこの人は綺麗な人だとは思うがそれだけだ。


(速く帰って配信見たいなぁ~)


(この人なんでついてきてるの???)


「あの、なんでついてくるんですか?」


「ん?だって私の家こっちだし。」


 数分歩いてようやく家にたどり着く。


「じゃあ、こんどこそさようなら。」


(やっと帰ってこれた。)


 俺はアパートの二階にある自身の部屋へと向かう。

 だが、


「だから、どこまでついてくるんですか?」


「え?だって私ここのアパートに住んでるんだもん。」


「は?」


「ちなみに202号室ね。」


(嘘だろ?隣?)


「星乃君は203号室だよね?」


「なんで知ってるの?普通に怖いんだけど。」


「だって、私君のこと好きだし。」


「なんで?」


(今日が初対面のはずなんだけど。)


「それは秘密。」


「じゃあ、また明日。」


 陽炎はそういって部屋に帰っていった。


(どうしてこうなった?)


 蒼は部屋にもどってそんなことを考えていた。


(生まれてこの方告白なんてされたことないし、ましてや仲のいい女の子もいない。だってのにいきなりやばそうなストーカーっぽい女につきまとわれるだと、)


 溜まったもんじゃない。

 俺の楽しく幸せな二次元ライフをぶち壊されてなるものか。

 二次元みたいなシチュエーションではあるが、こんなのごめんだ。

 何が悲しくて学校の人気者(予定)でいかにもギャルっぽいストーカー女にすかれにゃならんのだ。

 俺は二次元が好きなんだ!


(よし、関わらないようにしよう。)


 蒼は自身の部屋にてこんなことを誓ったのだった。


 だが、彼の甘い考えがぶち壊されるのにそう時間はかからなかった。



「私、星乃君のことが好きだからあなたとは付き合えない。ごめんなさい。」


 始業式から三週間くらいがたった。

 その中で陽炎に告白をした男子は両手では数えきれないだろう。

 だが、そのすべてをこういって断ったのだ。


 こうなってくると振られた男子たちのヘイトはもちろん俺に向けられる。


(理不尽だろ。)

 こうして、俺は何もしていないのに高校二年生が始まってから速攻でかなりの数の男子生徒から恨まれる羽目になったのであった。


 …………………………………………………………………………………………………


「お前最近大変そうだな。」


 昼休みに屋上で話している蒼と海斗


「お前他人事だからって軽く言いやがって。」


「実際他人事だしな。でも、なんでお前はあんなに陽炎さんに好かれてるんだ?」


「そんなのこっちが知りてぇよ。」


 実際蒼には何の心当たりもない。

 あったのは始業式が初めてのはずなのに家まで知られていてしかも隣の部屋に引っ越してきている。

 あの日の発言的に俺があそこに住んでることを知っている口ぶりだったし。


「まあ、頑張れよ。」


「ふざけんな!俺はただ平和なオタクライフを過ごしたかっただけなのに、俺が何したっていうんだよ!」


「まあまあ、落ち着けよ。でも、ほんと謎だよな。陽炎さんみたいな美人なら男なんて選び放題だろうになんでお前みたいな冴えないオタクなんだろうな?」


「冴えないは余計だ。」


 でも、実際そうなのだ。

 俺みたいな陰キャオタクじゃなくてもいい男はたくさんいるはずだ。

 それに、最近告白していた男子生徒の中にもかなりのイケメンはいたはずだし。


「ほんと、何が起こるかわかんねえわ」


 雲一つない空を見上げながら蒼はぽつりとつぶやいた。


 …………………………………………………………………………………………………


 授業が終わりやっと帰れるというタイミングで声をかけられる。


「一緒に帰ろ!」


「普通にヤダ。」


「そんなこと言ってもダメ~」


 そういうと月は蒼の腕に抱きついていた。


「何してんだここ教室だぞ???」


「だからなに?私愛情表現はしっかりとするべきだと思うの。」


「時と場合を考えろ。」


 そんなやり取りをしているだけで男子生徒からの殺意のこもった視線を向けられる。

 最初は無視していたんだが無視をすると陽炎が泣き始めるため、無視をすることは断念した。


「じゃあ、はやくいこ~」


「お前、人の話全く聞いてないだろ。」


 結局そのまま腕に抱きつれながら家まで帰ることになったのだった。



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