第15話ようやく…

「聖夜!」


 話掛けて来たのは田嶋だ。周りには誰もいない…。これはチャンスか?


「今日は珍しいな、田嶋が一人なんて…。彼女とは一緒じゃないのか?」


「今日は用事があるんだって…」


「そんなに落ち込まなくてもいいだろ〜に…」


「まあ、とにかくそういうわけで暇なんだよ」


「じゃあ、飲み物奢ってやるから公園にでも行こうぜ?丁度この間も話の途中だったろ?」


「おっ、サンキュー!」


 途中にある自販機で飲み物を買って2人で近くの公園に向かった。


「いや〜、それにしても聖夜のお陰で毎日ハッピーよ!彼女が出来るなんて転生前では考えられなかったし…」


「そういえば田嶋は―」

「啓祐ってそろそろ呼べよ!俺は親友だと思ってるしな!」

「…ああ、そうだな。啓祐は転生者だと言ってたけど…この世界ってゲームの世界なんだよな?」


「おう!それは間違いないぜっ!信じられないだろうけどな」


「啓祐の言う事なら信じるよ」


「サンキュー!」


「この間、途中迄聞いていたけど…姉さんが主人公なのか?」


「おっ!やっぱりそこは気になるよな?分かる分かる!んで…ぶっちゃけ、この世界はヴァーチャルゲームの世界なんだ」


 ヴァーチャル?俺がしていたのは、プ◯ステで出てたソフトだ…。


「前作は二十年前に出ていたゲームの続編で…」


「二十年も間があるのか!?」


 どおりで俺は知らないのか…。


「主人公は勿論プレイヤーは当然としてヒロイン達一人一人かな…」


「…んっ?ちょっと意味が分からないんだが…」


「ほらっ!ゲームって、だいたいプレイヤーが主人公だろ?」


「…え〜と…そうなのか?」


「そうそう…そうなんだよ!でも…このゲームは普通とは違ったんだよ」


「いまいちよく分からないが普通とは違う?」


「恋愛ゲームって言えば…ヒロインの好感度をあげて…お気に入りの子と、みたいな感じだろ?」


「うん、そこは分かる」


 俺も転生前は春ばかり攻略していたしな…。


「この間はゲームのパッケージが春さんがセンターだから敢えて春さんが主役って言ったけど…このゲームはヒロイン一人一人が主役って感じかな。AIで管理っていうのか?詳しい事は俺も分からないんだけど…自我があって…向こうが選ぶんだよ」


「…向こうが選ぶ?」


「そうそう…。だから当然の様にフラレるんだよ。恋愛ゲームなのに攻略ヒロインを選べないしな…。しかも…」


「しかも…?」


「誰一人攻略した者が居ないんだぜ?」


「そんなゲームがあるのか!?」


 恋愛ゲームでそれってどうなんだっ!?


「だから…みんな躍起になって…必ずヒロインの一人位は堕とすって…。でも攻略者は現れなかったんだ…」


「挑戦した人はみんな…フラレたという事か?」


「そうなんだよ…。凄いゲームだろ?ゲームでフラレるのは好感度がなければ当然なんだけど…攻略した者がいないんだから…それがまた凄いだろ?だから主人公はプレイヤーじゃなくて…彼女達ヒロイン一人一人が主人公って言ったんだよ」


「なるほど…」


 自我があるなら当然向こうが選ぶというわけか…。この後も色々聞いたんだけど…特に気になる事はなかった…。ただ一つ…完全に俺に知ってるゲームとは別物という事が分かった事位だ…。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る