第3話─で、どこに行くんだ?

「─で、何処に行くんだ結伊?」


「えっ!?」


えっ!?─って何なんだ?


「…もしかして…どこに行くか決めてなかったのか?」


「だ、だって…」

(ど、どこでも…聖夜となら楽しいし…私は聖夜と一緒に居たいだけ…だもん)


「はぁ~…仕方ないな…。じゃあラーメン食いに行くか?」


「はっ?」


「な、なんだよ…結伊?」


「こ、こんな時にラーメンなんて…も、もう少し雰囲気とか…そういうのを考えてくれても…ぶつぶつぶつ…」


 また何かぶつぶつ言ってるな?腹減ったし、やっぱりここはラーメンだろ?チャーシューメンにゆで玉子、メンマ、ナルトをトッピング…。サイドには餃子に炒飯…。うん…堪らないよな?


 早くも俺の脳はラーメン一色に染まった…。


「お~い…早く来ないと置いて行くぞ結伊?」


「もぅー!もぅー!待ってよ聖夜ぁー!」




***


「チャーシューメンにゆで玉子にメンマをトッピングで え〜と…え〜と…後、半炒飯に餃子もお願いします!」


「ノリノリじゃねぇかあ!?」


 あれだけ文句言ってた癖にっ…


「…聖夜が連れて来たんだから…しょうがないもん!」


「もんじゃないんだよ!もんじゃあ…」


「…聖夜の奢りだからね?」


「はあっ!?馬鹿な…俺の小遣いが幾らか知ってるだろ?」


「…奢りだもん…」


「…借りだぞ?借りっ!今度は結伊が奢ってくれよな?」


「…女子にそんな事言ったら駄目なんだよ?男は男らしく俺が奢ってやる位言わないと!」


「残念でしたぁ〜!今は平等なんだぜ?」


「ぶぅ~」


「頬をフグみたいに膨らませても意見は変えないからな?」


「ケチ…」



「ホントいつも仲良いねぇ~お二人さん!はい、ラーメンお待ちぃー!」


 結構な頻度で来てるからラーメン屋の大将には覚えられてるんだ。何故か結伊も付いてくるしな…。まあ、ラーメンが好きなんだろう…。ここのラーメン旨いしな…。


「そ、そんな…な、仲良くなんて…」

「そうそう…ただの幼馴染みだから…痛い痛い痛い!何で腕をツネるんだよ、結伊?」

「…知らない」


「こりゃあ…彼女は苦労しそうだな…」


「わ、分かりますか!?」


 ほらほらっ。そんなに前屈みにテーブルに身を乗り出すんじゃないの…。体勢が体勢だけに重みで胸が強調されるだろうよ?


「そりゃあ…色々な人見てるからね…はいっ!餃子と炒飯等もお待ちぃー!餃子少しサービスしといたから!」


「あざーす!」

「ありがとうございます!」


「じゃあ、ゆっくりな?」


 大将が俺達の注文を運び終え、調理場へと帰っていく。


「頂くぞ、結伊?」


「うん…」


「「いただきま~す!!」」




***


「いや~ラーメン最高だったな…」


「そうだね。ごめんね…ホントに奢って貰って…」


「いいよ、借り…だしな?」


「うん…じゃ、じゃあ、今度は私が奢るから!」


 何で奢るのに嬉しそうにしてるんだか…。それよりも…。


「…ちょっとここに座ってて待っててくれるか?」


「え…何で?」


「…トイレだトイレ…。そこを動くなよな?」


「えっ…うん…分かったよ」


 結伊を人通りが多い場所にあるベンチへと座らせ、俺は路地裏へと駆け出した。




***


~???~


 どうにもツイてないわね…。近道しようとしたのがマズかったわね…。この人達の目的って…


 やっぱりソレしか考えられないわね…。どうやって逃げようかしら…。


「なあなあ…聞いてる?」

「そうそう、俺達とさ、少し遊ばない?」

「楽しい場所に行こうよ?俺達そういう所、いっぱい知ってるからさ」


「結構です…それよりも…そこを退いてくれると助かるのですが?」


「ツレナイツレナイよぉ…」

「何歳?何歳なの?」

「見た目…高校生位?」


「…高校生に手を出したらマズいのでは?」


「合意の上ならオッケーじゃないの?」

「俺達の内、誰か1人が彼氏になればオールオッケーしょっ?」

「そうそう…だからさ? みんなヤってるし、もしアレなら俺達全員を相手にしてくれてもいいんだぜ?」


「…っ!?」

(この人達…やっぱりそういう目的で…だから…男って…)


「いやいや…高校生相手にそれはマズいと思いますよ?」


 ─誰っ?


「なんだよ、邪魔すんなよ」

「正義の味方気取りか?」

「この子は俺達と遊ぶ約束していて…」


「―してる訳ないでしょう!」


「─だ、そうですけど?」


「あ〜あ~うぜぇ…」

「それな…」

「どうせならやるか?」


「良いんですか?こっちに警察の人向かってますけど…」


 男の子がそんな事を言った…。


「どうせハッタリだろ?」


「じゃあ…!」


『もうすぐそちらに2名の警察官が着きます!そちらは大丈夫ですか!?』


 携帯からはそんな声が…


「うぉっ!?マジじゃねぇかあ!?」

「テ、テメェ…それは卑怯だろ…?」

「お、おい…それよりもズラかった方が…」


「少しばかり遅かったみたいですよ?ほらっ?」


 男の子が指を指した方にはすでに警察の人の姿が…


 


「「「くそっ!?」」」


「3人共動かない様に!」

「はいはい…3人共後ろに手を回してね?」

「君、大丈夫?何もされてない?」


「は、はい、助かりました…。その人達に連れて行かれそうになってて…」


「マジ…か」

「ただのナンパだろ?」

「嘘だろ?」


 警察の人達はその人達を捕まえてくれて、どうもこれから事情を聞かれるっぽい…私も含めて…


「そっちの子も通報ありがとうって…あれっ…」

「通報してくれた子は?」



 男の子の姿は既にそこには無かったの…。




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る