地獄道(1-6)
一つ、決して自殺しない事。
一つ、決して自傷しない事。
一つ、決して自壊しない事。
それらが、あなた達に力を貸す代わりに与える、
どうか、生きて。
夢の中で、彼女は力の使い方を教えてくれると同時、三つの枷を科した。
戦えでも守れでもなく、生きてと言った。
同情されたと思うと感じるところがあるが、代償と思えばまだ耐えられる。
地獄道、紅蓮。
漫画の主人公ポジションキャラにでも与えられていそうな、純粋かつ派手な力。純粋な火力なら、他の守護者の力と比較しても高いランクに入るらしい。
どうやら、地獄道は地獄道で能力のジャンルはある程度定まってはいる様だが、どんな能力が発現するかは与えたその人によって変わるようだ。
人には得意不得意があって、その人に見合った力が与えられていると言うのなら、自分にはシンプルながら強力――いや、シンプルだからこそ強力な力が合うと言う判断がされたと言う事。
ならば早々に下手をうって、即刻退場とはなりたくなかったが、どうやら初陣は白星で飾れたようだった。
ならば次は――
「助けるか?」
「
「ふぇっ、ふぇっ、ふぇっ。すぐに終わらせるとは言ってくれる。今すぐこの婆をどうにか出来ると思うてか?」
老婆のそれとは思えない鋭い手刀を躱し、
そのまま寝転んで締めようとしたが、その前に体を捻って抜け出された。
「ふぇっ、ふぇっ、ふぇっ。どうした、すぐに終わらせるのではなかったのか?」
「あぁ、終わらせるさ。いや、もう終わったと言うべき、かな?」
「何?」
突如、年相応の足腰にまで弱まったかの如く、老婆の脚が震えたかと思ったら、その場で尻餅を突いて立てなくなってしまった。
更に体を支えていた腕も、力を失って倒れ伏す。
突然の事態に、老婆は驚きを禁じ得ない。
「貴様、何をした」
「さぁ、何でしょう。でも、そんなの関係ないんじゃない? 今から死んじゃう身としては、さ?」
胸元から取り出した小型ナイフが、キラリと光る。
老婆は最後の抵抗として拳銃を取り出したが、直後、拳銃を含む老婆の半身があっという間に凍り付いた。
足に付いては、両足とも凍り付いて動かせない。
「き、貴様……!」
拳銃を見た瞬間、背後で地面に手を突いた新から伸びる氷が老婆を捕縛。ただでさえまともに動けない老婆の体を完全に硬直。全ての感覚を奪い取った。
「俺は熱を操る。熱は火だけじゃない。氷もまた、熱。残念だったな、婆さん」
「そう言う事。まぁ、サクッと終わらせるから、痛くないよ……多分ね」
首に一撃。深々とナイフが刺さる。
感覚も閉じ、意識も完全に閉ざされた老婆の肉体はそのまま完全に凍り付き、足が折れて倒れると、そのまま砕け散った。
「はい、終わり。ご苦労様。何だ、ちゃんと戦えるじゃん。新君」
「あぁ……そう、だな。戦え、たな」
「まだ実感湧かない感じ? そのうち慣れるよ」
「……そういうものか」
「そういうもの。さ、戻ろ。お姫様がお待ちだよ」
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