地獄道(1-3)
何処とも知らない地下都市へと連れて行かれた
ただしそれは
しかしそういう意味では、死んでいると言うのは便利だ。行方不明ならばまだ探す人もいようが、死亡と断定されてしまっていれば、最早探す人はいないのだから。
「夜遅くにごめんよ、皆。最近欠けてしまった地獄道の守護者、その後任がようやく決まった。佐藤新くんだ。仲良くしてあげてね」
歓迎の拍手が一名。
興味津々ながら無言を貫くのが一名。
興味関心ゼロが一名。
新を見ながら別の事を考えていそうなのが一名。
そして新と
この広大な――例として出される某首都のドーム何個分だろうかという規模の地下都市で、守護者と呼ばれる者はこの場、この部屋、ここに集うたった六名だけらしい。
それがどれだけ特別な事か、新はまだ理解出来ていなかった。
そんな新の内心を察して、神楽がお待たせしましたと微笑む。
「では新くんの歓迎会も兼ねて、僕ら守護者について改めて説明をしよう。新くんも、好きな席に座るといいよ」
巨大円卓を囲う椅子の数は、たった六人のためとは思えない。
今は四人がそれぞれ対になる位置で座っている。
新は何となく、真正面に自分を拍手で歓迎してくれた人を置く形で座った。
「ではまず、守護者とは何か。それはこの都市創設のきっかけであり、この地下空間創造のきっかけともなった我らが姫君、
屍姫。
先程神楽が寝かしつけ、新が飛び降りようとするより先に落ちて来た人物。
ずっと寝ていたので声は聞けていないが、チラッと見ただけでも、綺麗な顔立ちをした、まさしく姫と呼ばれるべき少女だった。
だからこそ逆に、屍という名前に違和感を抱かせる。
「姫様の本名、出生については僕らも、この都市にいる誰も知らない。知っている事は、あの人が不死である事。そしてあの人に触れた人は死ぬと言う事だ。不死であるが故の代償なのか、それらがあっての不死なのか。いずれにせよ、あの人は神様が認めてしまった唯一のイレギュラー。彼女を使って不老不死の研究をしようとしたりする連中もいれば、彼女を何とかして殺し、不死の存在を否定したい宗教団体のような連中もいる。僕らの使命は、そんな輩からあの方をお守りする事だ」
「守るって……どうやって」
「いい質問だ、新くん。その答えは、それこそ僕ら守護者とは何かという質問の答えにもなる」
と、神楽は円卓の中央に跳び上がって、そのまま浮いた。
何かで吊っている訳でもなく、円卓に細工がしてある訳でもない。痩身とはいえ、五〇キロは確実に超えているだろう体が、間違いなく円卓からわずかな高さを保って浮いていた。
「姫様は神様が認めてしまった唯一のイレギュラーなら、僕らは姫様が認めた数少ないイレギュラーだ。僕らは本来、触れたら死んでしまうはずの人に触れて死ななかった。僕らは死と引き換えに、姫様が不死足り得る力の一部を、譲り受けたのさ」
自分の手、体の至る箇所を見てみるが、そんな証拠はない。
そんな新の様子を見て、興味なさげに自分の爪を見ていた青年が、鼻で笑った。
「六道輪廻。此の世の生きとし生ける者全てが通過する六つの世界。穢土と浄土。僕らはそれぞれ、それらの世界の力の一端を、姫様から貰い受けているんだ。僕は天道。
冗談、で言っている目ではない。
現に天道と名乗った神楽の体は部屋中を浮かんで周り、最初の位置に降り立ってみせた。
「君がどんな力を貰ったのか、どうやって使うのか。それは徐々に、君自身が掴み取っていくだろう。それよりまず先にすべきことは、休息だ。しっかり食べて、寝て、休む。それが今の君の仕事だ。と言う訳で、今日はここで解散! 新くんは僕について来て。君の部屋に案内するから」
本当に、自分は異世界に転生したのではないか。
そう思わざるを得なかった。
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