第132話 目指せ、前世超え!


 俺達がリアーヌに触れると、一瞬で視界が森からどこかの部屋に変わる。


「うおっ! びっくりしたー……」


 後ろを振り向くと、ジェフリーが驚いた顔をしながらデスクについていた。


「転移だかなんだか知らんが俺のところに飛ぶのをやめろ!」


 至極、まっとうな言い分だ。


「うるさい。そんなことより、ユウマ様のパーティーはBランクな」


 さすがはリアーヌ。

 有無を言わさない感じだ。


「あー、それか……まあ、いずれはBランクに上げるつもりだったからいいけどよー。どう考えたってはえーよ」

「早さは関係ない。実力があれば上げろ」

「はいはい。じゃあ、お前ら、Bランクな」


 やったぜ。


「悪いな、ジェフリー」

「そんなに急ぐことないと思うんだけどなー。どうせ、冬になれば仕事しねーだろ」


 それはそうだな。


「冬って本当に何もしないのか?」

「外の仕事が減るってだけで町の中の仕事はあるぞ。ほぼ雑用や警備の仕事だからお前らはしねーだろうが」


 雑用は嫌だな。


「やらんな」

「それでも仕事がしたかったら雪が降らない南や西の方に遠征だな。実際、そういう冒険者もいる」

「なるほどな。まあ、ゆっくりするよ」

「そうしな。一度、死んで二度目の人生なんだから生き急ぐことねーだろ」


 確かにその通りだ。


 俺はジェフリーの言葉に納得すると、部屋を出て、パメラのもとに向かう。

 すると、部屋の隅でカリカリと音を出して爪とぎをしているタマちゃんが見えた。

 そんなタマちゃんを受付に座っている女3人は穏やかな目で見ている。


「パメラ」


 受付に行き、パメラに声をかけた。


「あ、おかえりなさい。どうでした?」

「リアーヌの依頼は終わった」

「うむ。問題なかったからそのように処理してくれ」


 リアーヌが頷く。


「わかりました。他は?」

「魔物をいくつか倒したから魔石がある」


 そう言うと、AIちゃんが受付に魔石を置く。


「はい、確かに。薬草の方は?」


 パメラがそう聞くと、ナタリアとリリーが前に出てきた。


「一応、これだけ」


 ナタリアとリリーが受付に採取した数束の薬草を置く。


「これだけですか?」

「もうダメっぽい。ほとんど枯れてるし、これは森の奥で採ったやつ」

「あの感じだと厳しいよ。まだ日が当たる東の遺跡の方が良いと思う。森はダメ」

「そうですか……仕方がないですね。では、精算をしましょう」


 状況を把握したパメラは精算をしてくれ、報酬をくれた。


「よし! これで何とかなる! 多分!」


 心配なエルフだなー。


「明日以降はお休みですか?」


 パメラが聞いてくる。


「とりあえずな。まあ、狩りとかには出るかもしれん」

「わかりました。では、その時にお待ちしております」


 当分は休みだな……

 何をしようか?


「リアーヌ、俺らは帰るがお前はどうする?」

「そうですね。少し仕事がありますので夕方くらいに伺います」

「場所はわかるか?」

「ええ。存じております。それにパメラと一緒に行きますので問題ないです」


 パメラも来るの?

 別にいいけど、都合を聞いてないぞ。

 パメラも首を傾げているし。


「パメラ、リアーヌがコタツを見てみたいっていうから夕食に誘ったんだが、お前もどうだ? 昨日もだったけど」

「あー、なるほど。そういうこと……誘ってくれるなら行くわ。リアーヌ様を連れていけばいいわけね?」

「頼むわ。じゃあ、後でな」


 俺達はリアーヌと別れると、ギルドを出る。


「お前ら、先に帰ってろ。俺とAIちゃんは区長のところに報告に行ってくる」

「わかった。じゃあ、私は買い物に行くよ。冬のためのものを買いたいし」


 暇つぶし用のかね?


「あ、私もナタリアについていく」


 リリーも買い物に行くらしい。


「散財はするなよ」


 一応、釘を刺しておこう。


「わ、わかってるよぅ」


 リリーはそう言いながらもナタリアと共に狛ちゃんを連れて、買い物に向かった。

 俺とAIちゃんは区長の屋敷に向かって歩いていく。


「マスター、寒くなりましたけど、温かくていいですね」


 歩いていると、AIちゃんがポツリとつぶやいた。


「マフラーか?」

「いえ、それも暖かいですが、人ですよ。ナタリアさん、アリスさん、リリーさん、アニーさん、それに加えてパメラさんとリアーヌさんです」


 そういう意味の温かいか。


「まあ、そうかもな。お前がいるとはいえ、一人は嫌だわ」

「マスターはそうでしょうね。生まれた時から家族と共に生き、さらに家族を作って死んでいったマスターは絶対に一人で生きられません」


 生きられないことはないだろうが、想像はつかないな。


「良いことじゃないか」

「そうですね。春になったら頑張ってお金を貯めましょう」


 甲斐性のことを言っているのかな?


「まあ、パーティーランクもBランクになったし、違う仕事も受けられるようになってさらに稼げるようになるだろ。あとは適当にやる」

「それがよろしいでしょう。私がマスターを導きましょう」


 お前の導く先は女ばっかりじゃん。


「俺がこの世界に来てひと月くらいだが、もう6人もいるぞ。最終的に何人になるんだよ……」

「いいじゃないですか。大勢で楽しいでしょう?」

「まあ、楽しいか楽しくないかで言えば楽しいな」


 賑やかだし。


「あなたはそういう人なんです。女性が好き。子供も好き」


 断言するな。

 多分、そうなんだろうけどな。

 じゃなきゃ、嫁が12人、子供が30人以上はバカだ。

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