第131話 Bランクパーティー


「そうだな……その通りだ。まあ、お前達は問題ないか。お前達がユウマ様を裏切ることはないだろうし」

「ないない。リーダー様だよ?」


 はたして、素直なリリーに人を貶めたり、裏切ったりすることができるのだろうか?


「本当にエルフらしくない……まあいい。さて、ユウマ様、スヴェンという男はどちらに逃げていきましたか?」

「あっちだ」


 奥の方を指差す。


「西ですか……いや、まあ、途中で方向を変えたかもしれないし、何とも言えませんね……わかりました。ギルドの長として西の森は問題ないと判断しましょう」

「レイラが調べただろうに」


 ぶつくさ言っていたが、あいつは仕事をちゃんとするだろう。

 他人を無能と罵るが、その分、仕事はする。


「レイラか……あいつ、どことなく偉そうなんですよ。Aランクとはいえ、たかが30年程度の人間のくせに」


 まーた、年齢気にする病が発症してる。


「あいつ、転生者だぞ。俺と同じ世界から来ている」

「え!? おいくつですか!?」


 えーっと、50歳で死んで、今が30歳前だから……


「80歳弱かな?」

「ふっ、私の方が年上」


 ババアじゃん……

 若い方が好まれる世界で年上の方が偉いらしいけど、マジで価値観がわからんな。


「リアーヌ、絶対にレイラにケンカを売るなよ」

「え? いやまあ、売りませんよ。Aランク冒険者じゃないですか」


 大盗賊ルドガーもといAランク冒険者であるオットーの扱いがひどかっただろ。


「あいつは俺の家と同格の貴族の当主だった奴だ。性格が破綻し、すべての人間に嫌われた冷酷な蛇女だった。今は腑抜けているが、下手に刺激すると、蛇の式神に丸呑みされるぞ」

「えー……強いんです?」


 リアーヌも強いから自信があるんだろうな。

 だが、リアーヌでも相手にならんだろう。


「俺の家と同格と言っただろう? 蛇の神の末裔で国一番の陰陽師と呼ばれた女だ。まあ、俺も国一番と呼ばれてたけど」


 時代が微妙にずれているからな。


「なるほど……だからユウマ様が下についても納得されているわけか……まあ、わかりました。留意します」

「そうしろ。依頼はこれで終わりか?」

「はい。これで結構です」


 簡単な仕事だったな。

 これで金貨60枚は破格だ。


「ナタリア、リリー、薬草はあるか?」


 王家からの依頼を終えたので自分達の仕事をすることにする。


「少しだけど、あるよ。採取してもいい?」

「ああ。パメラが採取してほしそうだったし、時間もある」

「じゃあ、採取するよ。リリーはどうする?」


 ナタリアがリリーに聞く。


「うーん、私も採取するよ。この辺には獣がいそうにないし」

「じゃあ、リリーはあっちをお願い」

「わかった!」


 ナタリアとリリーは二手に分かれて採取を始める。

 残った俺達はその場で見張りをしながら2人を眺めることにした。


「ユウマ様、良いパーティーですね」


 俺の隣にいるリアーヌが2人を眺めながらつぶやく。


「バランスが悪いけどな。俺とリリー以外は魔法使いだ」

「いえ、そういうことではなく、関係性です。皆が皆を信頼しています」


 そういう意味か。


「俺はそういうのを重視する」

「大変すばらしいことです。王都には全員がAランクのこの国一番の冒険者パーティーがおりますが、まあ、仲が悪いです。本当に仕事だけの関係ですね」


 それが悪いとは思わない。

 そういう関係だってありだし、儲かっているのなら良いだろう。


「仕事だと割り切ればありだな」

「あなた様は割り切らないのでしょうね。わかります」

「私もわかります」


 AIちゃんがうんうんと頷く。


「どういう意味だ?」

「わかってるくせにー」


 うぜ。


「ユウマ様、パメラが申請していたパーティーランクをBランクにする件ですが、問題ないと思われます」

「そういや、王都に行く前に申請したな」

「ジェフリーは早くないかと言っていましたが、私はそれだけの実力はあると判断しました」


 正直、ジェフリーが正しいと思う。


「まだアニーとアリスを見てないだろ」

「王都での仕事ぶりを聞いていますし、そもそもあの2人はBランクでしょう? 実力も問題ないです。それにその2人との関係性も良好なのですよね?」

「良好だな」


 特にケンカもない。


「言い切るマスターのすごさです。まあ、あの2人も問題ないでしょう。マスターが押せばすぐです。絶対に断りません」


 AIちゃんは冒険者パーティーの評価をしていないな。

 別の件だ。


「ならパーティーランクをBにしても問題ないです」


 まあ、Bランクになれるならそれでいいか。


「じゃあ、頼むわ」

「はい。ギルドに戻ったらジェフリーにハンコを押させましょう」


 ジェフリー、やりにくいだろうなー……


 俺達がその後も話をしながら採取をする2人を眺めていると、2人が立ち上がり、こちらにやってきた。


「こんなものかな。やっぱり薬草はちょっと厳しいよ」

「西の森でこれだと他でもかなー」


 採取が終わったらしい。


「その辺もパメラに報告しよう。じゃあ、帰るか」

「そうだね」

「あー、疲れた」


 お疲れさん。


「もう帰られますか?」


 仕事を終え、戻ることに決めると。リアーヌが聞いてくる。


「ああ。寒いし、区長のところに話をしないといけないから帰る」

「わかりました。では、私が送りましょう」


 ん?

 あ、転移か。


「いいのか?」

「もちろんです」


 あー、もしかして、王様がリアーヌに調査を命じたのは転移のことがあったからか。

 もし、またスタンピードが起きてもリアーヌが一度でもここに来ていれば、転移で飛べる。


「じゃあ、頼むわ」

「はい。では、私に触れてください」


 俺達はそう言われたのでリアーヌに触れる。

 すると、やはり俺が触れた時だけビクッとした。

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