第129話 久しぶりの仕事


 寒い中、ギルドにやってくると、そこそこ賑わっており、冒険者達が依頼票が貼ってある掲示板に群がっていた。


「懐かしい光景だな」


 確かに賑わっているが、王都のうるささはない。


「ですねー」


 俺達はそんな冒険者達を眺めながら受付に向かう。

 受付に行くと、パメラがいるが、タマちゃんがいない。


「あれ? タマちゃんは? 家か?」


 寒いからついてこなかったんだろうか?


「ここ」


 パメラが苦笑いを浮かべながら指を下に向けたので身を乗り出し、覗いてみる。

 すると、パメラの膝に上でタマちゃんが丸まって寝ていた。


「なるほど。パメラの足で暖を取っているわけか」

「私も暖かいんだけどね」

「まあいいか。仕事はどんなのがある?」

「あー……それなんですけど、指名依頼がありますね」


 指名?


「リアーヌか?」

「よくわかりましたね?」


 パメラが意外そうな顔をする。


「ジェフリーの部屋にいるだろ。あいつの魔力は特殊で異質だ。この町の中ならどこにいてもわかる」

「あ、うん……そうですか」


 パメラがちょっと引いている。

 ストーカーって思ってんな。


「魔力を隠せばわからん。だが、あいつ、隠す気がないようだ」

「あ、うん……」


 またしても引く。

 多分、俺じゃなくてリアーヌにだろう。


「私とかもわかるの?」


 ナタリアが聞いてきた。


「お前はわからん。魔力の質が平凡すぎる」


 魔力はそこそこあるんだが、マジで特徴がない。


「平凡……」

「いや、普通はそうだから。アニーもアリスもわからんし」


 言葉が悪かったな。


「私は!? 私は!?」


 リリーが嬉しそうに聞いてくる。


「お前はわかる。多分、種族のせいかもしれんな」

「なるほどー! 迷子になっても安心だ!」


 いや、迷子になるな。


「お前にはカラスちゃんがついてるから大丈夫だよ」

「カラスちゃん、ありがとー」


 カラスちゃんは外だよ。


「それでパメラ、指名依頼の内容は?」

「森の調査です。まあ、スタンピードのことを現場で教えてほしいそうですよ」


 あー、なるほど。


「連れていけばいいのか?」

「そうなりますね。依頼料が……金貨60枚です」


 すごい……


「私、あの人、好きだなー」


 リリーが嬉しそうに笑う。

 王都でも稼がせてもらったからだろう。


「まあ、ついでに薬草の採取や魔物を倒して魔石でも取ってください。特に薬草ですね。もうじき薬草も減りますからね」


 冬になれば枯れるか。

 草だもんな。


「わかった。リアーヌを連れてこい」

「すみませんが、ユウマさん達が呼びにいってくれません? 動けなくて……」


 タマちゃんか……


「はいはい。甘やかすのはいいが、トイレには行けよ」

「それはさすがに行くわよ」


 パメラが苦笑いを浮かべたのを見て、ジェフリーの部屋に向かう。

 すると、デスクにつくジェフリーとソファーに腰かける無表情のリアーヌがいた。


「あっ! ユウマ様!」


 部屋に入ってきた俺達に気付いたリアーヌがぱーっと華やぐ。


「よう。依頼だって?」


 そう聞きながら対面のソファーに腰かけた。


「ええ。スタンピードの件の最終調査です。実は叔父上から頼まれたんですよ。ユウマ様達のところのレイラが調査をし、問題ないという報告を受けましたので最後の確認です」


 念には念を入れてか。

 あれだけの災害ならそのくらいがちょうどいいかもしれんな。


「わかった。案内しよう」

「ありがとうございます! ところで、今日は4人なんですか?」


 リアーヌが俺達を見渡す。


「2人の魔法使いはコタツから出てこない」

「コタツ?」


 まあ、知らんわな。


「俺がいた世界の暖房器具だ。それを作ったんだが、出てこなくなった」


 顔と振ってくれた右手しか見ていない。


「へー……それはちょっと気になりますね」

「見せてやろうか?」

「いいんです?」

「問題ないだろ。ウチで夕食でも食べるか? ウチの専属の料理人はすごいぞ」

「専属って……クライヴさんも冒険者だよ」


 ナタリアが呆れたように言う。


「クライヴ? ああ、Bランクの……」


 クライヴは王都にしたし、リアーヌも知っているか。


「いつか自分の店を持ちたいんだと」

「夢があるんですね。それは良いことだと思います。では、お邪魔させてもらいます」


 変な生首が2人いるけどな。


「ああ……それで依頼だが、今からでもいいか?」

「はい。では、参りましょうか」


 リアーヌがそう言って立ち上がったので俺達も立ち上がった。

 そして、完全に空気と化しているジェフリーに見送られながら部屋を出て、そのままギルドも出る。


 ギルドの外では寒い中、狛ちゃんがおすわりをして待っていた。


「寒い……」


 外に出ると、リアーヌが寒そうに震える。


「あ、リアーヌ様。マフラーがありますけど……」


 ナタリアが空間魔法からまたもやマフラーを取り出す。


「おー! 悪いのう!」


 リアーヌが喜ぶと、ナタリアがリアーヌの首にマフラーを巻き始めた。

 正直、親子に見える。


「ナタリアさん、何枚持っているんですかね?」

「さあ?」

「ナタリアは裁縫とか編み物もやるんだよ。だからいっぱい持っているし、去年の冬なんか皆に配ってたよ」


 リリーが教えてくれる。


「やることがないからか」

「器用な人ですねー」


 ホント、ホント。


「ちなみに、ユウマが巻いてるやつは一番高い生地のやつだと思う」

「ナタリアさんはナタリアさんで差をつける人ですからねー」


 まあ、そんな気はする。

 ご飯を食べる時、いっつも俺の分だけ水を入れてくれるし。


「そんなことないよ」


 俺達の会話を聞いていたナタリアはリアーヌにマフラーを巻き終えると、ニコッと笑った。


「怖っ……ごめんよー。私、いつも余計なことを言っちゃうんだー」


 知ってる。





――――――――――――


新作も投稿しております。

読んでもらえると幸いです。


https://kakuyomu.jp/works/16818093075798434907


よろしくお願いいたします。

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