第104話 ギルドへ行く


 翌朝、遅い時間に起きた俺は店員を呼び、朝食を食べる。

 店員に話を聞くと、女性陣はすでに出かけたらしい。


 俺はAIちゃんと共に朝食を食べ終えると、昼まで時間をつぶしていった。

 そして、昼前には宿屋を出て、外をぶらつく。


 外を歩いていると、広場にやってきた。

 広場には屋台が多く並んでおり、たくさんの人で賑わっている。


「マスター、屋台がありますよ。昼食がてら食べましょう」

「そうだなー」


 俺は屋台で串焼きを買うと、ベンチにAIちゃんと並んで腰掛け、食べることにした。


「色んな人がいるな」

「各地から集まっているんでしょうね。あれは獣人族、あちらはドワーフですね」


 獣人族は見たことがある。

 ドワーフとかいうのは初めて見たが、背が低く、身体つきががっちりとしてる。


「AIちゃん、他の連中は?」

「ナタリアさんとアリスさんは実家の方ですね。アニーさんとリリーさんはお店が多い地区を歩いています」


 ナタリアとアリスには狛ちゃんを付けているし、アニーとリリーにはカラスちゃんが見ている。


「問題ないならいい」

「過保護ですねー。そういうところはお母様に似てます」


 嫌な評価。


「こう人が多いと不安になるんだよ」

「王都は治安が良いですよ。まあ、悪い所もありますが、皆さんはそういう所には近づかないです」


 俺よりあいつらの方が詳しいか。


「そうだな」

「マスター、気付いています?」


 AIちゃんが聞いてくる。


「俺らを見ている人間のことか?」

「はい。宿屋を出てから一定の距離を保って、つけています」

「ギルドだろ。昨日の夜もいた」


 俺達がクライヴ達に会いに歓楽街に行った時もいた。


「おそらくは……敵性反応もないですし、問題ないとは思います」


 見張りか身辺調査か……


「ナタリア達にはついていないんだろ?」

「はい。もちろんです」

「だったら問題ない」


 正直、つけられるのも見られるのも不快と思わないでもないが、俺が逆の立場でもそうするし、目くじらを立てるほどでもない。

 後でちょっと注意するだけで十分だろう。


「マスター、確認ですが、セリアの町を動かないということでいいですね?」

「それでいい。居心地も良いし、良くしてくれるじゃないか」


 レイラはあれだけど……


「そうですね。それにあんなに女性に囲まれたら身動きできませんもんね」

「言い方」

「あんなに頼られたら見捨てるわけにはいきませんもんね」


 そうそう。

 俺は義理堅いし、面倒見がいいのだ。


「お前、昨日もだが、いつも俺に女を集めさせようとするよな?」

「私はマスターの幸福を願っています。マスターの幸福は家族でした」


 そりゃ家族は大事だがね。


「そんなにいらなくないか?」

「たくさんの奥様、お子様、お孫さん……皆さんに囲まれて幸せそうでしたよ。マスターは愛がとても多い方でしたから」


 浮気性なだけな気がするがねー。

 自分のことだけど。


「まあいい。なるようになるさ」

「そうです、そうです。さて、そろそろ行きましょう」

「そうするか」


 俺達は串焼きを食べ終わると、ギルドに行くことにする。

 AIちゃんと共に歩き、ギルドまで行くと、中に入った。

 すると、すぐに俺達を担当してくれるというケネスが近づいてくる。


「こんにちは。昨日は休まれましたかな?」

「ああ。歓楽街というのにも行ってきた。さすがに女連れだったから誰も声をかけてこなったがな」


 そう言うと、ケネスがAIちゃんを見下ろして苦笑いを浮かべた。


「それはさすがにそうでしょう。楽しまれたかったのなら一人で向かわれることです」


 女は5人もいるのにAIちゃんが一緒だったことはわかるらしい。


「まあ、見学がてらにウチの者に会いに行っただけだ。それに女は足りている。それでギルマスはおられるか?」

「ええ、もちろんです。こちらになります」


 ケネスに案内され、奥の部屋に入る。

 奥の部屋に入ると、ソファーに腰かける黒髪の小さな女の子がいた。


「お前がユウマか?」


 小さな女の子が偉そうに聞いてきたのでケネスを見る。


「こちらが当ギルドのギルドマスターであるリアーヌになります。ギルマス、ユウマ殿です」


 ケネスが女の子を紹介してくれると、ギルマスにも俺を紹介した。


「うむ。まあ、座れ」


 そう促されたので対面のソファーに腰かけ、ギルマスと呼ばれた女の子をよく観察する。

 女の子はどう見ても子供であり、AIちゃんとそう変わらないように見えた。

 人形のように整った顔をしており、後ろで一本に結んでいる長い髪は艶めいている。


「いや、子供だろ」


 座らずにリアーヌの横で立っているケネスを見上げる。


「い、いえ。本当にギルマスになります」

「失礼なガキだな」


 リアーヌが目を吊り上げさせた。


「いや、ガキって……」


 こっちのセリフだ。


「私はこう見えても25歳だ。もっと言うと転生者であり、前世は60年も生きた。すなわち、85歳だ」


 転生者なのか……


「俺は前世を含めれば99歳だ」


 20歳に転生したから計算がよくわからないが……


「お、おう……」


 リアーヌは目が泳ぎ出すと、姿勢を正し始めた。


「転生者なのはわかるが、本当に25歳か? 10歳前後にしか見えんぞ」

「あ、はい。私の前世では若いほど価値がある世界だったんです。転生した今でもその名残がありますから魔法で成長を止めているんです」


 偉そうなしゃべり方をしていたリアーヌが急に敬語でしゃべり出した。


「急にどうした?」

「はい。これも私の前世の文化ですが、年長者が絶対なものでして……」


 まあ、俺の世界にも年長者を敬おうというものはある。

 それが極端なんだろうな。

 だから前世の年齢を加算してまで上から目線だったんだろう。


「まあ、いいけど。しかし、25歳でギルマスはすごいな。ウチのジェフリーなんか40歳ぐらいだぞ」

「頑張ったんです! あと、貴族なもんで。えへへ」


 権力かい。

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