第101話 結局、同じ部屋


 部屋に入ると、備え付けてある無駄に装飾されたテーブルにつく。


「あー、疲れた」

「マスター、お茶をお淹れします」


 AIちゃんがお茶の準備をし出した。


「悪いな」

「いえいえ。綺麗な部屋ですが、落ち着きませんね」


 この部屋は広く、俺が住んでいる部屋の2倍くらいの広さはある。

 ベッドも大きいし、このテーブルも椅子も精巧に作られており、一目で安物ではないとわかる。


「まず、普段の生活が床だからベッドもテーブルも落ち着かんからな。まあ、そういうものと思って楽しもうじゃないか」

「それもそうですね」


 AIちゃんがお茶の準備をし終え、テーブルにお茶セットを置くと、コンコンという扉をノックする音が聞こえてきた。


「誰でしょう?」

「ナタリアだろ。落ち着かないんだろうよ」


 そう答えると、AIちゃんが扉の方に向かう。

 そして、扉を開けると、そこには予想通り、ナタリアがいた。

 ただし、アニー、リリー、アリスの3人もいた。


「どうした?」


 部屋に入ってきた4人に聞く。


「落ち着かない……」

「話があってね」

「一人はつまんない」

「…………広すぎ。皆で大部屋の方が良かった」


 4人はそれぞれの理由を言い、こちらにやってくると、椅子に座った。

 それを見たAIちゃんがカップを人数分用意し、お茶を淹れ始める。


「そのうち慣れるだろ。アニー、話って何だ?」

「一応、確認。あんたのさっきの態度と言葉は何?」


 おや、気付いた奴がいるとはな。


「というと?」

「さりげなく、私達を自分の女認定してなかった?」

「…………私もそれは思った。部屋を分けるのに当たり前だろって言ってたけど、そういうことでしょ」


 アリスもわかったらしい。


「全然、わかんない」

「私も……」


 リリーとナタリアはわからないらしい。


「…………個室を分ける理由は旦那様が夜にそれぞれの部屋を訪れるため」

「説明しなくてもいいわよ……」


 説明したアリスをアニーが窘める。

 だが、全部説明した後なため、ナタリアとリリーの頬が若干、赤い。


「まあ、そういうことだな。これはAIちゃんとパメラが考えた王都のギルド対策だ」

「どういうこと?」

「わからない……」


 やはりリリーとナタリアはわからないらしい。


「…………そっちか。豪華な宿に泊めさせてやるし、奢ってやるんだからわかるだろ? 的な意味かと思ってた」

「アリス、少し黙りなさい……」


 またもやアニーがアリスを窘めた。


「王都のギルドが俺を勧誘してくるんだよ。パメラというか西区のギルドや区長的にはそれは許容できない。だから俺はお前らやパメラをそういうことにして、俺がセリアの町から出る気がないということにしたんだ」


 どちらにせよ、俺はセリアの町も西区も出る気はないが、パメラはともかく、区長とジェフリーは信用できないんだろう。


「なるほどー」

「確かにユウマはすごいもんね」

「…………だからあのソニアとかいう受付嬢に手紙を渡したんだ」

「あんた、王都でコレクションを増やしそうだしね」


 コレクション言うな。


「そういうわけだから気にするな」

「他にも案はあったんですけど、これが一番シンプルで説得力があるってことになりました」


 AIちゃんがテーブルの人数分のお茶を置きながら言う。


「まあ、パメラはともかく、私達は一緒に住んでいるから調べても、そうなのかって思うだけか……」


 アニーが考え出した。


「何でもいいわ。それよか、これからどうする? 明日は俺とAIちゃんでギルドに行くが……」

「まずはクランメンバーにレイラさんの招集命令を伝えないと。夕食を食べたら伝えに行くわ」


 それが最優先か……


「場所はわかるんだったな?」

「ええ。いつものところよ。女も……男も」


 アニーが呆れたように言う。


 男共は歓楽街か……

 想像がつくな。


「お前は歓楽街がダメだったな?」


 この格好で歓楽街は歩けないだろう。

 似合いすぎる。


「そうね。悪いけど、あんた、男共のところに行ってくれる?」

「いいぞ。場所を教えてくれ」


 それがいいだろう。


「…………私が案内するよ。私は別に気にしない」


 アリスがついてきてくれるらしい。


「頼むわ。女性陣はそっちに任せる」

「わかったわ。積もる話もあるし、あんたもゆっくりしていいわよ」


 アニーが半笑いで言う。


「アリスとAIちゃんを連れて、娼館に行けってか?」


 見た目は子供2人だぞ。


「無理ね」


 どっちみち、行かんわ。


「明日はどうする?」

「私は観光かなー……まあ、ゆっくりするわ」


 俺も観光したいな。

 時間はあるだろうし、後日、地元民のナタリアとアリスに案内してもらうか。


「私は実家に顔を出そうかな」

「…………私も」


 ナタリアとアリスは実家に行くらしい。


「私はどうしようかなー? この前来たし、ユウマに奢ってもらう物の下見でもしようかな」


 リリーにはカラスちゃんをつけないとな。


「じゃあ、明日は各自だな。夕食時にでもギルマスから聞いた話を伝えるわ」

「お願い。ユウマ、狛ちゃんを出して」


 アニーに頼まれたので狛ちゃんを出した。

 すると、アニーは狛ちゃんと遊びだす。


「ホント、大部屋でも良かったかもしれんな」


 どちらにせよ、同じ部屋で過ごしているし。


「私もそれでよかったよ。カルチャーショックがすごい」


 ナタリアまで個室は嫌らしい。


「わかる。こんな部屋で一人でいると、なんか落ちつかないよね」

「…………寝る時以外はここで過ごそう」


 まあ、どうせ暇だろうからいいけど。

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