第073話 成果と被害を報告


 遺跡を出た俺達はまたもや2時間くらいの時間をかけ、セリアの町に戻った。

 町に戻ると、すでに夕方になっており、辺りは茜色に染まっていた。


「ユウマ、アリス、私達は夕食の買い物とかあるし、先に帰って夕食を作るわ。あんたらでギルドに行ってきて」


 西区まで戻ると、アニーがそう提案してくる。


「俺とアリスか?」

「そう。戦力外2人」


 戦力外はひどい。

 その通りだけど。


「リリー、お前はこっちだろ」

「…………そう。こっち」


 俺とアリスはリリーを手招きで呼ぶ。


「なんで!? イメージで人を決めつけないで! 私はちゃんと手伝うし!」


 そうなの?

 てっきりできないものかと……


「いいから2人で行ってきなさい。ほら行くわよ」


 アニーがそう言うと、ナタリア、リリー、狛ちゃんがクランの寮の方に行ってしまった。


「私達も行きましょうか」

「そうだな」

「…………戦力外」


 アリスがちょっと傷付いているもののギルドに向かって歩き出す。


「お前、料理できるんだろ?」


 とぼとぼと歩くアリスに確認してみた。


「…………できるけど、やっているとナタリアがすぐに自分がやるよーって言う、甘える、何もしなくなる」


 そして、戦力外……


「あいつが悪いよな。すぐに自分でやろうとする」

「…………そうそう。昔からそうだったし、ダメ人間製造機は伊達じゃない」


 ホント、ホント。

 今日だって暇な俺らから解体の仕事を奪ってた。


「と、ダメ人間2人がこのように供述しております」


 子ギツネめ。

 お前の大元は本当に食っちゃ寝しかしないダメギツネなんだぞ。


「魚くらいは焼ける気がするんだけどなー」

「さばけないじゃないですか……鱗を取るんですよ?」


 そういえば、魚には鱗があったな……

 でも、頑張れば鱗も食えると思う。


「生魚にしようか」

「お腹を壊しますよ……」


 俺は壊さない。

 壊したこともない。


 俺達が不毛なことを話していると、ギルドに着いたため、中に入る。

 ギルドの中には数人の冒険者がいる程度でやはり少なかった。


「どうでしたー?」


 ギルドに入った俺達に気付いたパメラが声をかけてくる。


「そこそこ」


 受付まで行き、そう答えると、アリスが成果を出していった。


「おー! 今日一の成果ですよー」


 悲しいなー……


「そんなにか?」

「そんなにです……依頼の方はどうでした?」

「地図は少し待ってくれ。まだ半分しか描けていないそうだから完成したら渡す」


 ギルドも半分だけの地図はいらんだろ。


「わかりました。オークの方は?」

「一応、カラスちゃんが上空から見てくれたんだが、オークは見当たらなかった。次も探してみるけど、それでもいなかったらもういないと判断していいと思う」

「なるほど……じゃあ、次も探してみてください。その報告をもって依頼達成とします」


 そんなもんでいいだろ。


「わかった。それとだが、まーた、サイラス一味に絡まれたわ」

「え……東の遺跡ですよね?」

「アニーいわく、ストーカーだそうだ。まあ、昨日の狛ちゃんに気絶させられたことを恨んでだな」


 俺が明日は東の遺跡に行くって言ったから張ったのだろう。


「ハァ……その情熱を仕事に回して欲しいですねー」

「俺もそう思う。あと、えーっと、殺人未遂と婦女暴行未遂らしい」

「ん? 何ですか、それ? それにらしいとは?」


 パメラが首を傾げる。


「…………痛い目に遭わせてやると言って、ニヤニヤと笑いながら私達を見てきた。非常に身の危険を感じた。すると、それをユウマが庇うように止めてくれた。そしたらサイラスが斬りかかった」


 サイラスはずっと不機嫌そうだったし、ニヤニヤと笑ってはいなかった気がするが、被害者がそう感じたのならそうなんだろう。


「えー……ルール違反どころか犯罪じゃないですか……投獄案件ですよ。それでどうしたんです?」

「…………ユウマが蹴ったら一撃で沈んだ。かっこよかった 」


 まあな。

 アリスは人を見る目があるなー。


「それで?」

「…………終わり。沈んだサイラスと残りのパットとリックを残して帰ってきた、兵士に通報、南区のギルドと【ハッシュ】に抗議をよろしく」


 そういや、【ハッシュ】っていうクランだったな。


「今の状況でですか……」


 パメラが嫌そうな顔をする。

 まあ、ただでさえ、問題が起きているのにウチと南区の決定的な確執になりそうだもんな。


「…………いつもの嫌がらせも絡まれるのも我慢できる。でも、今日のは明らかに度を越している。野盗にしか見えなかったし、ユウマに切りかかった時点で犯罪者。こっちは出るところに出てもいい」

「まあ、そうなんですけどね。まずは事情聴取になると思います…………御二人共、すぐに帰ってレイラさんにこのことを報告してください」


 レイラ?


「あいつは留守だぞ。王都にいる」

「あ、いや、昼過ぎに戻ってこられましたよ。帰って休むって言ってましたから帰っているんじゃないですかね?」


 戻ってきたのか……


「レイラに報告すればいいのか?」

「はい。こちらでも動きますが、まずは自分達のクランリーダーに報告してください」


 そういうもんかね?


「まあ、わかったわ。明日は休みになると思うが、また仕事の際はよろしく」

「ええ。多分、明日、そちらに行きますのでまた……」


 来るの?

 ご飯を食べたいのかな?


「ん。じゃあ、帰るわ」

「はい。お疲れさまでした。あ、これが報酬です」


 俺達は薬草や武器、魔石などをパメラに精算してもらうと、ギルドを出で、家に帰ることにした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る