第067話 東の遺跡の依頼


 朝起きた俺達はナタリア、アリス、リリーと共に朝食を食べていた。


「アニーはどうした?」


 俺はパンを一口サイズにちぎりながら聞く。


「アニーさんはもう朝御飯を食べたよ」


 一緒に食べればいいのに。


「…………アニーは準備に時間がかかる。だから出かける時は早起き」


 準備?

 あー、女の準備ね。

 戦いが主な仕事に行くのにどうでもいいと思うが、前世でもそういう女の部下はいた。

 礼儀や身だしなみと言われたら何も言えないし、仕方がないだろう。

 ましてや、アニーは痴女っぽいが、こだわりが強そうだし。


「お前らは王都出身だけど、素朴だよな」

「普通でしょ」

「…………私の今日のおしゃれはこの跳ねた毛先」


 ただの寝ぐせだろ。


「私はー?」


 リリーが聞いてくる。


「お前さ、弓を射る時に耳に当たんないの?」

「おしゃれと関係ない!? 当たらないよ!」


 いや、ずっと気になってた。


「当たらないならいいんだけど」


 俺達はその後も楽しい朝食を続け、食べ終えると、一度解散し、エントランスの交流スペースに向かう。

 そこで待っていると、続々と女性陣がやってきた。

 そして、最後にアニーがやってきたのでクランの寮を出て、ギルドに向かう。


 ギルドに着くと、朝早いというのに昨日以上に冒険者がいなかった。

 10人くらいが依頼票が貼ってある掲示板を見ているだけだ。


「少ないわね……」


 アニーが冒険者達を眺めながらポツリとつぶやく。


「昨日も少なかったが、今日はさらに減っているな」

「まあ、仕事になんないしね」


 俺達は冒険者達を眺めながらもそのまま受付にいるパメラのもとに向かった。


「皆さん、おはようございます。あと、昨日はありがとうございました」


 パメラが笑顔で挨拶してくる。


「気にするな。皆で食べた方が良いだろう」


 この世界はそんな文化だ。


「ねえ、パメラ、あれ大丈夫?」


 アニーが冒険者達を見ながら尋ねた。


「まったく大丈夫じゃないです……あなた方のクランもそうでしょうが、仕事にならないということで王都へ出張る人が増えています。それだけならまだいいのですが、流出が起き始めていますね……はは」


 パメラが渇いた笑いを漏らす。


「流出って他所の区か?」

「いいえ、この町を出て、王都などに完全に移籍する人です。まず帰ってきません」


 スタンピードは起きるわ、仕事はないわ、だったらこの町に愛着がない者は出ていくか……


「俺の経験上、盗賊が増えるぞ?」


 腕っぷしの強い者が仕事を失うと自然とそうなる。


「わかっています。今はその対策会議で協議中です……」


 協議ねー……

 ギルド、区長、国……

 さらにはこの町は4つの区に分かれ、仲が悪い。

 時間がかかるな、これ。


「遺跡の方で稼いでくるわ」

「お願いします。ついでに地図も作ってきてください……買い取りますんで」


 ギルドの儲けがすごい減ってそうだな……


「依頼は何がある?」

「まずは常置依頼である魔物の討伐ですね。遺跡は主にスケルトンとゾンビが出ます」


 何それ?


「どんなの?」

「リビングデッドと呼ばれる種類の魔物ですね。スケルトンは骨でゾンビが腐った死体です」

「成仏できなかったのか?」

「いえ、人みたいな姿ですが、人ではないですよ。あくまでも魔物です」


 じゃあ、成仏させてやる必要はないな。

 お経もいらないだろう。

 まあ、覚えてないし、効くかは知らんが。


「それを倒せばいいのか?」

「スケルトンは剣や弓、槍を持っているのでそれらが売れます。金属ですので溶かして他の材料にするんです」

「骨は?」

「いらないです」


 骨はいらんか。

 狛ちゃんのおもちゃにしかならんかね?


「ゾンビは?」

「当然ですが、いりません。魔石をお願いします」


 誰も死肉なんか食わんわな。


「他の常置依頼はなんだ?」

「薬草の採取とかですね。その辺りはナタリアさんやアニーさんが詳しいので御二人に聞いてください」


 そうするか。

 どうせできないし、任せよう。


「普通の依頼は?」

「遺跡にオークらしき魔物を見たという目撃情報が出ているんですが、あそこはオークが出ないんです。多分、スタンピードの際に逃げたオークではないかという予想をしていますが、一応、調査してもらえませんか? ユウマさん、得意ですよね?」


 まあ、魔力探知をすればわかるな。

 それに森じゃないならカラスちゃんが上から探してくれればすぐだ。


「いいぞ」

「ありがとうございます。依頼料は金貨30枚になりますんで」

「多くないか?」

「遺跡って広いんですよ。この町くらいはあります」


 そりゃ広い。

 普通にやったら1日では終わらんな。


「わかった。カラスちゃんを使えばすぐだ」

「受けてもらって助かります。東区のギルドへの依頼だったんですけど、誰もやりたがらなかったのでこっちに回ってきたんですよ」

「誰もやらないのか? 常置依頼がてらにできるだろ」

「いやー、さすがに広すぎます。それに魔物もいますからね」


 2日くらいで終わると思ったが、魔物がいれば無理か……


「まあ、わかったわ。それもやってくる」


 地図を作るためにカラスちゃんが上空にいるだろうし、ついでに探してもらおう。


「お願いします」

「ん。じゃあ、行ってくるわ」

「お気をつけて」


 俺達はパメラに見送られ、ギルドを出ると、東区に向かった。

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