第031話 どこの世界もじじいは一緒 ★
「それで? オークがこんな浅いところに出ないっていうのは本当か?」
魔石の採取を終えたので確認する。
「うん。私達もよくここには来てたけど、初めてのことだね」
「…………この森は西区御用達だからね。森はわかりやすくて、奥に行くほど魔物が強くなる」
オークはDランクって言ってたし、もうちょっと奥なわけか。
だが……
「そう考えると異常な数だな。俺が確認できるだけでも10はいる。それに…………オークより魔力が高いのもいるな」
「10!? それにオークよりも上がいるの!? どこ、どこ!?」
ナタリアが周囲の森を見渡す。
「安心しろ。この辺にはいない。あ、いや、ゴブリンはいるがな……」
「あのー……ユウマはどれくらいの範囲のことを言っているの?」
「500メートル以内だな」
それから先は微妙にわからん。
集中すればわかると思うんだが、別の小さい魔力が多すぎる。
「500!? ……リリーが惨めな思いをするんじゃないかな?」
ナタリアがアリスを見る。
「…………大丈夫。それは私達も一緒」
「そうだね。私なんて何もしてないし」
いや、解体してくれたじゃん。
俺、自慢じゃないが、したことないぞ。
「御二方もリリーさんも惨めじゃないですよ。マスターが素晴らしいのです。ところで、マスター、前の森はどうでした? マスターが転生した森です」
AIちゃんが2人を慰めると、聞いてくる。
「あそこか…………いや、お姫様を襲ったオークがいたくらいで後はゴブリンばっかりだったぞ」
「ゴブリンばっかり…………確かに魔物の出現がおかしいですね。あそこはここよりも魔物が多いはずです。なのに逆に少ない。そして、街道に出て馬車を襲う……」
AIちゃんが悩みだした。
「どうする? もう少し調べるか?」
「いえ、このことをパメラさんに報告した方が良いと思います」
もう帰んの?
「お前らはどう思う?」
経験のある2人に確認してみる。
「私もAIちゃんに賛成。こんな状況なら一冒険者に判断できることじゃない」
「…………依頼達成には十分すぎると思う」
2人も賛成か……
「わかった。引き返そう。ん……?」
何かが気になり、森の奥を見る。
だが、何もいないし、特に変なことはない。
しかし、何かの違和感を覚える。
「どうしたの? 敵?」
ナタリアが不思議そうな顔で聞いてきた。
「いや、なんでもない。どうもこの森は感が狂うな」
魔力探知ができないわけではないが、微妙に雲がかっている感じがする。
「マスター、この森は薬草なんかの魔力を秘めた素材が多いんです。その影響だと思います」
それでか……?
まあ、俺はあくまでも陰陽師であって、森に慣れている狩人でも山師でもないからなー。
「まあいいや。帰ろう」
俺達は早々に引き返すことにし、森を出た。
◆◇◆
「――ッ!」
思わず、身が硬直してしまった。
目が合った?
バレたのか……?
そう思って、魔力を消したが、よく考えたら偶然だろう。
あいつらからここまでは1キロ以上も離れている。
それに森の木々という遮蔽物があるのだからバレるわけがない。
「ふう……引き返していったか」
男と女達……あと犬と鳥は森を出ていった。
「しかし…………なんだあれ?」
女共は普通の人間だろう。
だが、あの犬と鳥はなんだ?
獣か魔物かはわからなかったが、人にあれほど懐くだろうか?
それにあの男……何者だ?
あの金色に輝く炎は見たことがない。
しかも、あの火力……
もしかしたら相当な魔法使いかもしれない。
「まあいい……」
どうせあと少しだ。
さっさと仕上げにかかろう。
俺は次なる仕事をするためにさらに森の奥に向かうことにした。
◆◇◆
森を出てきた道を引き返してた俺達はセリアの町に戻ると、ギルドに向かう。
狛ちゃんをギルド前に待たせてギルドに入ると、暇そうに受付に座る受付嬢達だけで他の冒険者の姿はなかった。
「あれ? もう帰ってきたんですか?」
俺達に気付いたパメラが声をかけてきたので受付に向かう。
「ちょっとな。森に行ったんだが、すぐにオークに遭遇したんだよ」
「へー……どの辺りです?」
パメラが首を傾げながら聞いてきた。
「AIちゃん、地図出して」
「はい」
AIちゃんはどこからともなく作成した地図を取り出すと、受付に置く。
「えーっと、森に入ってすぐだから……」
俺が地図を見ながらオークに遭遇したところを探していると、パメラが地図をガン見してきた。
「あのー……」
「なんだ?」
「これ、なんです?」
「地図」
地図を知らんのか?
「いや、それはわかるんですけど、すごい精度の地図ですね…………これ、合っているんです?」
「上から見たやつだし、合ってるぞ」
作成したのはAIちゃんだから知らんけど。
でも、町の地図は完璧だったし、合っているだろう。
「へー……すごいですね。売ってくれません?」
「いくら?」
「金貨20枚出します」
「そんなに? 森の縁しか描いてないぞ?」
高くない?
「それで十分です」
ふーん……
「AIちゃん、どうする? お前の地図だけど」
「マスターのですけどね。別にいいんじゃないです? すでにインストールしているのでいくらでもアウトプットできますので」
意味はわからんが、覚えたからいつでも描けるってことね。
「じゃあ、それ売るわ」
「ありがとうございます。しかし、すごい能力ですねー」
パメラがそう言いながら金貨20枚をくれると、AIちゃんが誇らしげな顔をする。
俺はその金貨20枚をAIちゃんに渡し、頭を撫でた。
「よかったな。金貨20枚はお前の物だから好きに使え」
「いいんです?」
小さいAIちゃんが嬉しそうな顔で見上げてくる。
「ああ…………」
脳裏にお母さんには内緒だよっていう言葉が浮かんだな……
昔、孫にあげてたんだろうな……
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