第023話 配下をゲット


「泥に沈めて窒息死させたんだ。洗ってくれればいい」

「なるほどな。ということは傷はなしか?」

「ないな。あっても最初からあったやつだろう」


 俺は攻撃していないが、それより前に傷ついているかもしれない。


「ふーむ……まあ、洗って解体してみないことにはわからんな。夕方くらいに来い。それまでに解体して、料金を決めておく。全部買い取りでいいか?」

「肉はちょっともらうが、後は買い取りでいい」


 牙も毛皮もいらない。


「了解。じゃあ、夕方な」

「わかった。パメラ、討伐料金をくれ。買い物に行く」


 パメラに向かって、手を差し出す。

 すると、パメラがどこからともなく取りだした金貨10枚を渡してくれる。


「おめでとうございます。ユウマさんはこれでCランクです」


 ん?


「いくらなんでも早くないか?」


 昨日の今日だぞ。


「いえいえ、そんなことないですよ。これほどのビッグボアを仕留めることができる冒険者をDランクにしておくことはできません」


 パメラはニコニコと笑いながら言う。


「…………ユウマ、ユウマ」


 アリスが袖を引っ張ってきた。


「なんだ?」


 俺がそう聞くと、アリスが手招きをしてきたので顔を近づける。


「…………ビッグボアの討伐は普通、Cランクの依頼。だからユウマがDランクだとマズいんだと思う」


 アリスが耳打ちで教えてくれる。

 どうやら無理やりこの依頼を俺にくれたらしい。

 多分、後で色々と書類の操作をするんだろう。


「パメラって不正ばっかりだな」


 かわいい顔してひどい奴だ。


「…………許容範囲。他はもっとひどいところもある」


 他所の区と仲が悪いせいでダメな方で競争になっているんだろうな。


「まあいいや。買い物に行くわ。お前らはどうする? 付き合うか?」

「訳、俺はこの世界のことを知らんから手伝え」


 AIちゃんが補足してくれる。


「あ、うん。付き合うよ」

「…………まあ、暇だしね」


 2人が了承してくれたので4人で買い物に行くことにした。


 買い物は主に俺とAIちゃんの生活用品だったが、町に長くいるナタリアとアリスが案内してくれたうえに値切り交渉までしてくれたからかなりの量を買ったが、安く抑えることができた。

 俺は値切りどころか物を買うこと自体があまりなかったため、非常にありがたかった。


 俺達はある程度の物を購入すると、家具屋にやってきた。


「マスター、やはり靴を家で履く生活は落ち着きませんし、このカーペットを買って敷きませんか?」


 AIちゃんがふかふか素材の敷物を指差しながら提案する。


「それがいいな。ついでに机も買おう。あれは高すぎる」


 椅子に座るより、床の方がいい。

 そのまま寝れるし。


「そうですね。床に座るのなら机は低い方がいいでしょう。これとかどうです?」

「いいじゃないか? あの部屋の広さ的にそんなもんだろう」

「じゃあ、これも買いましょう」


 俺がAIちゃんのおすすめする敷物と机を買うと、AIちゃんが空間魔法でしまってくれた。


「どうした?」


 ナタリアとアリスが俺のことをじーっと見ていたので聞いてみる。


「ううん、なんでもない」

「…………いい買い物をしたね」


 2人がニコッと笑ったのを見て、何だろうと思ったが、ナタリアに金を返していないことを思い出した。


「あ、そうだ。ナタリア、金貨1枚な。助かったわ」


 ナタリアに借りていた金を返す。


「うん。別に今じゃなくてもいいよ。お金がなくなっちゃうじゃん」


 かなり買ったのでもう銅貨が数枚しか残っていない。


「素材を売った金が入るし、また明日稼げばいいだろ」

「それもそうか。どうする? もう夕方だけど、戻ってみる?」

「そうだな。行ってみよう」


 俺達は買い物を終えると、ギルド裏の解体屋に戻ることにした。


 解体屋に戻ると、職人達が大声を出しながら動いており、忙しそうだった。


「夕方は皆が持ち寄るから忙しいんだよ」


 俺がどうしようかなーと思いながら見渡していると、ナタリアが教えてくれる。


「明日にするか?」

「…………晩御飯をもらわないとダメ。バートー……」


 アリスがバートを呼ぶが、あまりにも声が小さいため、周囲の音でかき消えていた。


「おーいー、バートー!」


 アリスではダメだと思い、俺が声をかけた。

 すると、奥で作業をしていたバートが顔を上げ、こちらにやってくる。


「なんだ戻ってきてたのか」

「買い物が終わったんでな。作業は?」

「ああ、終わっている。肉以外は買取だったな? 肉はどれくらいいるんだ?」


 俺一人なそこまでいらないが……


 チラッとナタリアとアリスを見ると、期待している目で見ている。


「うーん……お前らのクランって何人いるんだ?」

「ウチ? 全員で22人かな? 半数は出かけているから今は10人ちょっとだと思う」

「…………うん、そのくらい。仕事だったり、リリーみたいに実家に帰っている」


 そんなもんか……


「せっかくだし、そいつらにもやった方が良いかな?」


 AIちゃんに聞いてみる。


「いいと思います。引っ越し祝いです」


 挨拶は大事だしな。


「あ、やっぱり居着く気だ」

「…………うすうす勘付いてたけど、完全に居座る気だね。家具も買ってたし」


 風呂もあるし、居心地がいいんだもん。

 しかも、料理まで出てくる。


「私達、仲間じゃないですか」

「ちゃんとお前らを導いてやるからな。Aランクも夢ではないぞ」


 俺ならできる。


「あ、こっちが勧誘する前に仲間にされた」

「…………しかも、新参のルーキーのくせにリーダーになる気だ」


 2人が呆れる。


「ん? あなた達は如月家当主にして、偉大なる金弧様の子であらせられるマスターに下につけと?」


 もう当主じゃないけどな。


「いや、まあいいよ。でも、リリーに相談してからね」

「…………おじいちゃんは年長者だしね」


 おじいちゃん言うな。


「バート、そういうわけだから10人分の肉をくれ。あとは買取」

「わかった。金貨24枚だな。パメラから受け取れ」


 討伐料より高いし……

 あんなに冒険者が殺到したのはこのためか。


「ん。ナタリア、アリス、肉を受け取ったら先に帰って、他の連中にやってくれ」

「いいよ。料理を作ってくれているクライヴさんに渡しておく」

「…………リーダーはどうするの?」


 アリスが聞いてくる。


「俺はパメラに金を受け取った後、ちょっと用事がある。とはいえ、すぐに帰る」


 俺はこいつらのリーダーとして、こいつらを強くしなければならない。

 だからAIちゃんと虫取りだ


「…………わかった。じゃあ、先に帰ってるね」


 俺とAIちゃんはこの場を2人に任せ、ギルドへと向かった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る