第7話 何故恐れる必要があるのか?

「クレームとか嫌っすね~」


相も変わらずビー田が俺に愚痴ぐちす。

席に着いて早々そうそうに上司から「これ君じゃないと無理そうだからお願い」とか言って渡された大クレーム確定の連絡受付された用紙のたば

ビー田よこれを見てもそれが言えるのか?

俺の手元を見たビー田が更に言いつのる。


「あ~それエースさんにしか無理でしょ」

「電話掛けてお客様の要望を聞き対応する簡単なお仕事だ、誰にでも出来るさ」

「はぁ?何言ってるんすか怒られるの確定した案件とか関わりたくないっすよ」

「それが仕事だし、手を出されることもメンチ切られるガンを飛ばされることも無いぞ」

「それはそうですけど・・・怖いじゃあないですか」


正直言ってしまえばコールセンターの仕事で何が良いかと言えば、お客様の所に行くことが無い事だろう。

以前の仕事でもクレーム処理をしていた俺は現場でのクレーム処理担当を任されていた。

任されていたと言っているが、させられていたが正しい日本語だろう。

切れまくっているお客様の所に行くと非常に危ないことがある。

3度ほど殴られそうになった。

その度に俺はお客様と言う名の戦闘民族にこう言っていた。


「あ、殴るのなら別にかまいませんけど、法的な手段は取りますので考えてから行動お願いしますね」


これで思い留まってくれた。


更には、電話でわめくお客様の相手をしてそのお客様の所へ伺うのだが、電話でのやり取り時点できな臭い。


「お前俺を誰だと思ってしゃべってる?」

「え?お客様ですよね?」

「はぁ?俺の素性を聞いてるの?」

「え?お客様がお困りなので詳しい私に代わって欲しいと言われたので代わっただけなのでお客様が如何どういう方かも知りませんし、素性分っても他のお客様と対応は変わりませんよ?」


自由業の方で若いかしらと書く役職名の方でした。

結局、事務所に行って作業となったのだが、5人の構成員の方が俺の後ろに張り付いて見学されていましたよ。

対応は他と変わらず行い、説明もちゃんとしてご納得いただきましたし、帰り際に「うちに来ないか」とお誘いされましたが、丁寧にお断りさせて頂きました。

若いかしらさんとの下記の様なやり取りもありましたよ。


「度胸あるな~怖くないのか?」

「え?行先を会社に告げている上に一般人の私をおそうとかそちらの方がリスクですよね?」

「それでも普通怖がるもんなんだよ」

「え~~例えばですけど、私がここで殺されたとします」

「お前行き成り中々物騒なこと言うな」

「例えですから死ぬ気は勿論ありませんよ」

「おう、そうか・・・それで?」

「誰が殺したかとなると、ここに居るどなたかが殺すことになると思いますが、その方、刑務所行きますよね?」

「まぁ行くだろうな」

「そうしたらその方、年間幾ら費用として掛かります?」

「費用?」

「はい、刑務所に入っていてもこちらで雇っていると言う事で給料?で良いんですかね。まぁ会社員として考えると出張みたいな形になるんですか?」

「まぁそう考えて良いのかな?」

「まぁその方を雇い続けるなら人件費掛かりますよね?」

「・・・掛かるな」

「会社員として年間300万とします。服役が何年か知りませんけど、計算し易い様に5年とします」

「1500万だな」

「はい、最低それが先ず掛かります。それから損害賠償になるんですかね?よく知らないけど民事で損害賠償で幾ら掛かるんですかね?」

「あ~お前の言いたいことは大体わかった」

「そうですか、簡単に言うと私殺すメリットが無いですからその点は怖がる必要ないです。暴力も同じですね」

「それでもな・・・」

「私はそんな狙われる様な失礼なことしました?」

「して無いな・・・まぁ分った。また困ったことがあったら連絡するわ」

「はい、会社の方にご連絡ください、では失礼します」


コールセンターにこんな案件来ないですから安心してお客様のお相手できますよ。


「お前舐めてるのか?殺すぞ!!」

「え?私何か失礼なこと言いましたか?それに、それっておどしですけど大丈夫ですか?」

「脅し?」

「はい、「殺すぞ」て言われましたし・・・」

「それは・・・言葉のあやだ」

「そうなんですか?殺すって脅しなんで使われるとお客様の方が困ったことになりますよ?今後は気を付けてくださいね」


今日もコールセンターは安全快適あんぜんかいてきな仕事内容であった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る