End of Day 1

 寝ぼけ眼に、短くカットされた髪や整った顔立ちが映っている。

 

 ”……睫毛長くて羨ましい”


 互いの顔が驚くほど近い。胸元まで覆う毛布の下では素肌同士が触れあい、二度寝を誘うほどに心地良かった。

 考えてみれば、他人の体温を感じながら目醒める事自体が久方ぶりだ。


 ”にしても……” 

 僅かに視線をズラせば、簡易寝台の凹凸に入り込んだ赤黒い汚れ ――血痕――白衣で拭いきれなった銃撃の痕跡―― が点々と目につく。


 ”私……ヒトを殺したハズなのに……”

 

 呵責や後悔といった心持ちには程遠く、悪夢も見ずに熟睡してしまった自分自身に驚き呆れる。


 ”この子のになるのかしら?”

 

 被験体サブジェクト《P5J348》……本名アレックス・ウォーカー。推定年齢13-14歳……そして性別不詳。

 寝息を立てる姿は天使めいていて、昨晩見せた表情や行為とのギャップが凄い。自然と顔が火照るのを感じながら、声に出さず問いかけてみる。


 「結局、君は男の子Alexanderなのかい? それとも女の子Alexandraなの?」

 

 当然の如く返事は無いが、仄かに電球色の灯りが車内を照らしているのに気づいた。未だ、夜は明けていないのだろう。


 ”なるべく早朝に出発して、《シカゴ》から離れないと……”


 理性がそう訴えるも、眠気混じりの感情は真逆のことを主張する。

 私はソッと毛布を持ち上げ、二人の身体を隠すように被せ直した。



 ”……もう少しだけ……寝顔を眺めていよう……”

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