Day 1 -2
”誰もいない世界みたい”
知識として知ってはいたものの、
人の営みが全く感じられない廃墟ばかりが過ぎ去り、頻繁に出現する巨大な
e-
”……秩序や法が遠く及ばない領域……”
即金を条件に私達を乗せてくれた《運び屋》の男が次第に余所余所しくなり、手慣れた様子で性犯罪に及ぼうとしたのも、今となっては納得できなくも無い。
手首内側に視線を向ければ、腕時計は既に午後4時を回っていた。埃で汚れたフロントガラスの向こう側には、淀んだ曇天と荒涼たる風景が延々と続く。
「こんな所まで追って来るかしら?」
カサつく唇から漏れ出した独白が、モーターエンジン特有の
何度か迷子になりつつ3時間以上ぶっ通しの運転を続けているが、途切れがちの
!!―― 騒音と共に車体が大きく上下する。
考え事で集中力を欠いた所為だろう、タイヤがコンクリート塊に乗り上げたようだ。慌てて後部座席を振り返れば、彼はシートベルトに抱きかかえられたまま眠り続けていた。
院内着に似た飾り気の無いスウェットの上下、事務的に刈られた短めの淡い金髪、薄い肉付きを予想させる白く細い腕。そして……美少年という他ない中性的な美貌。
”こんな揺れる車内でよく……”
安堵すると同時に、自分の顔に微苦笑が浮かんでいるのを自覚する。
”いや、彼の境遇を思えば当然かも”
私は運転に集中しようと努力するが、ついチラチラとルームミラーに意識が向くのを止められない。
この少年は、
”せめて今は精一杯、自由の身である事を満喫させてあげたい。
そして出来るなら、生き別れた親元に送り届けてあげたい”
世間知らずの研究員に過ぎない私の願いは叶うだろうか?
自然とハンドルを握る腕と、アクセルを踏むパンプスに力が入る。
気づけば、早くも日没の時間が迫っていた――。
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