4章 - 01
私がシロエと最後に会った日から23日後、研究所は勇者達の襲撃を受け壊滅。シロエも人間界へ戻った。
自分でも考え過ぎと思っていたセカンドムへの疑念を、ファーストリアにそれとなく確認したところ、本当にシロエが奪還されることが想定されていた。
シロエの魔力が必要だったことは本当だが、数日分を取得できれば十分だったと言う。
真に重要だったのはその次。
シロエの魔力が注がれたセカンドムの装置を起動させ、最大出力が出せるようになるまでの間、その装置に傷一つ付けさせないこと。
勇者には優秀な預言者がついている。放っておけば、装置のことに気づき、攻め込まれて装置が止められてしまう危険がある。
そこでセカンドムが考えた案が、シロエに時限式の呪いをかけ、勇者に奪還させることだった。
シロエをこちらから解放したのでは、警戒されて呪いがバレてしまうかもしれない。
装置を破壊しに来た勇者達を、魔界で迎え撃つのでは装置との距離が近すぎる。
逆にこちらから攻め入っては、魔界が手薄になってしまう。
だから、預言者が装置に気付く頃に、シロエの事にも気付くよう呪いの発現に遅延も設け、二者択一を迫ったのだ。
とはいっても、勇者達がどちらを取るかは明白だった。
呪いは魔王様がかけられたモノだと聞く。中途半端な対処では全滅する上、シロエの命もない。
装置の方は、最大出力になったとしても、その後に破壊できれば間に合う可能性が少しある。
結果はセカンドムの思惑通り、魔界はこの半年間、平穏そのものであり、来るべき時に備えていた。
そして今日が、その来るべき時、人間界を滅ぼすための決戦前夜。
私は、決戦最後の四天王の会合にいた。
「明日はいよいよ人間界に鉄槌を下す。この時をどれだけ待ちわびたか」
いつもと変わらず淡々と話すファーストリアから、決戦への並々ならぬ思いが感じられる。
「この左目の恨み、あのジジイを殺しただけじゃ収まらねぇ。人間は一人残らず皆殺しだ」
サードナーは勇者の師にやられた左目を隠す。
その深手が消えぬ屈辱として永遠に残ったのだ。この男の怒りはもう永遠に収まらないだろう。
「ついにこの時が来たか。夢にまでみたこの時が、研究の成果が出せる」
セカンドムもわかりやすく興奮している。
「これが成功すれば、魔王様がこの世の支配者になったも同然ですね」
私も、これで長きに渡る人間との争いが終わると思うと胸が高鳴った。
「あぁ、かならず成功させる」
ファーストリアの言葉には断固たる決意が込められていた。
「兵たちはすでに準備を終え、明日に備えています」
「そうか、皆頼もしいな」
私の報告を受け、ファーストリアは頷いた。
「それでは、決戦の最終確認を行う」
ファーストリアが手をかざすと、私達の中心に世界地図が姿を現した。
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