第四章
41:古代人の村
シャコ・ゾウリシゴ。
俺たちが今いる場所であり、これから多くのAランク冒険者がやってくる未開の地。
先祖から知識を受け継いだウパが言うには、ここは島であり、周りの海流や天候が特殊なため人間が来れなかったとのこと。
ウパの先祖はこの島出身であり、空間魔法でこちらへやってきて、古代人と一緒にこの島とを繋ぐ海底神殿を作ったそうだ。
海底に建設したのはマナの関係だそうで、それが幸運にもあの老婆から何百年も隠れることに繋がったのかもしれない。
俺らが向かっているのは、海底神殿と対になっている神殿である。
とりあえずシャコ神殿と呼ぶことにした。
「なんていうか、何百…へたすれば何千年と外の世界から隔離されていただけあって、独自の進化を遂げたって感じね」
素人の俺でも目を奪われる不思議な物ばかりだ。調合師のフレンさんからしたら、一つずつ持って帰りたいくらいだろう。
基本的には土に石が混じった地面があり、そこから草木が生えて、虫が飛んでいるといったところで、説明だけなら普通の森である。
しかし、その一つ一つが独特でか弱い印象があり、外に持ち出したらすぐに死滅してしまいそうだ。
これから多くの冒険者が足を踏み入れるとなると、ただではすまないかもしれない。
ウパに案内してもらいながら歩くこと2時間。
開けた土地に出た。そして、遠くに海底神殿ににた建造物が見える。
その周りには木造の家がいくつかあり、まるで村だった。
それを見てフレンさんが一端立ち止まる。
「もしかして、ウパの先祖と交流があった古代人?」
ウパが振り返って答える。
「たぶんそうだよ。私がハリネたちをつれてきたように、何人かつれてきていたみたい」
それを聞いて俺はちょっと怖くなる。
「でも何百年と経っているんだろ?赤髪のウパを見せたとして、わかってもらえるのか?
そもそも言語が違うんだろ?フレンさん話せる?」
「無理だって。古代言語は調べながら読むのがやっと、海底神殿の言語だったら読めもしなかったでしょ」
となれば、コミュニケーションはすべてウパ頼みになるな。
同じ人間といえど、歓迎してもらえる保障は無い。
それでも、あそこへ行かなくては何も始まらないのが現状である。
あの老婆なら、冒険者と共にかならずまた現れる。
それまでに対策ができなければ、どのみち俺たちに未来はない。
俺は覚悟を決めてシャコ神殿へと向かう。
村の入り口までやってくる。
外には誰もいなくて音もしない。無人かもしれないと思わせる。
「ライフサーチ」
魔具で確認してみると、反応がいくつもあった。みんな家の中にいるらしい。
「どうする?」
それを二人に伝えた。
「んー…、ウパには赤髪になってもらっておくのがいいんじゃない?
たぶん神様か先導者っぽい扱いだったと思うし、伝承くらい残っていれば少なくとも敵とは思われないかも…たぶん」
ウパもそれには納得したようで、赤髪の姿になった。
キン…と小さな音を立て、ウパを中心に静かな風が吹く。
すると、少しずつだが家の中から物音が立ち始める。
まるで真夜中の騒音にみんなが起き始めたようだった。
そのうちの一軒の出入り口から一人の男性が顔を出した。
草木で作ったワンピースのような服で、腰を紐で縛っている。
長い髪を後ろで縛り、手入れがされていないせいでごわごわしている。
両頬に何か模様が描かれていた。
外に一歩出ているが、近づいてくる様子はなく、俺たちを注意深く伺っている。
しばらくお互い見つめ合っていると、何かに気が付き、家の中へ引っ込んでしまう。
ちらほらと他の家からも人が出て来るが、みんなこちらを遠くから見るだけ。
いきなり襲ってこなかっただけよかったと思うが、逆に怯えられているようでこれはこれで困る。
俺らが手をこまねいていると、最初に顔を出した男性がおじいさんをつれて再び現れる。
おじいさんは俺たちを見ると「おぉ…」と小さく声を漏らし、男性に何かを言って、ゆっくりとこちらへ連れてきてもらう。
付き添いの男性は俺たちを警戒していてきびしい顔をしているが、おじいさんはウパをずっと見つめていた。ウパもおじいさんから目を離さない。
「カルパ モーィ」
おじいさんは、まるでウパの名を呼ぶようにそう言った。
「ヌア イ ウパ ハヅル カルパ イネ」
ウパが俺らではわからない言語で答える。
まぁでもたぶん、カルパの子孫のウパだと言ったのだろう。
その後、いくつか言葉を交わし、俺らの事について答えたりする。
おじいさんが身振り手振りで何かを説明すると、ウパがちょっと驚く。
そして、ウパが俺の手を取ると、何か呪文を唱える。
手を伝って、頭の中に少し温かみを感じる。
「私の言葉がわかりますか?」
急におじいさんの言っていることがわかるようになった。
正確には、おじいさんが伝えたい事を感じられるようになったようだ。
その証拠というか、おじいさんが発した音は何一つわからないし、俺はしゃべれない。
「私の理解をハリネにも伝える魔法なんだって」
ウパが俺にわかる言葉で教えてくれて、同じようにフレンさんにも魔法をかける。
おじいさんがまた何かを言うと、フレンさんも驚いて目を丸くした。
「神殿まで来ていただけますか?」
おじいさんはそう言い、村の奥にある神殿を見た。
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