第5話 取り込む
500ダメージ、500ダメージ、500ダメージ、1ダメージ!
500ダメージ、1ダメージ、500ダメージ、500ダメージ、1ダメージ!
あはははははははははは!!
一方的! 一方的ですよ!
やってしまいなさいド●リアさん、ザ●ボンさん!
……。いや悲しすぎだろ、これ!
勝ってるけど、攻撃力5の自分が惨めすぎるって!
強くなりてえ。無双してえ。俺もなんだかんだテンプレ展開が好きなんだからさぁ。
……。それとさ、まさかとは思うけど1番ダメージ入れた奴が経験値総取りとかないよね?
がくしゅうそ●ち持ってないけど戦闘参加してるから、渾身のタックル決めてるから大丈夫だよな!?
「くそ……。まさか、こんなところで……。この俺が、俺が負けるなんて……。……。本当は俺だけで勇者、じゃなかったが異常な反応の確認・排除をしてやろうって思ってたが、仕方ねえか。逆探知、範囲拡大!信号、パターン赤!」
ん? どんな強いスキルを使うと思ったらサポートスキル?
大袈裟な文言のスキル発動とか、こいつ中二病じゃないの? プークスクス――
『ヘリオスの絶命が確定。進行中のストーリーがハードモードに移行。窮地打破適正レベルが80に上がりました。あーあ、やっちゃいましたね』
ハードモード? 適正レベル……80!?
それって魔王討伐、表ボスも簡単になるレベルじゃん!!
なんでそれ早く言ってくれないのよおおっ!!
『だって楽しそうにしてたから。私は悪くないですよ』
むむむ……。それは、そうかもだけど……。てか一体何が来るの? そもそもこの段階でそんな強い奴いたっけ?
『ジュリアが助かったことで本筋のストーリーにも変化が出ています。と、なれば知ってるキャラクターのレベルが異常な数値になっててもおかしくはない。それに……以前のルートではありえなかった、ブロンズスライムとして生を受けたあなたやジュリアだけに与えられる強さも現れる……はず』
はず……。なんか変な間があったな。
いやでもゲームってバランスが重要だからさ、俺はまだ強くなれるって信じてるよ。
きっとヘリオスが消えたら俺はあり得ないくらいレベルアップして、多分経験値モンスターとしても超貴重なシルバースライムとかに進化できる。
うん。できる。できる。できたい。して欲しい。そうであって欲しいんです。お願いします。お願いしますお願いしますお願いします! ワンチャン! ワンチャンあって!
「――くくくく。しばらくしてここに俺と双璧をなす魔族がやってくる。俺を俺たちの飼っていたダークウルフを殺したお前のことは今のスキルで伝達済み。その首洗って待ってるがいいさ。あいつは俺よりも強いからな。じゃあな異常反応のスライム……。……。ん? 待てよ、そういえば俺のスキルは野生のモンスターには反応しない……。異常な反応なんてそもそもお前から発せられるわけがない。追いかけてた時、お前からあったのは……異常な反応はなくて普通のモンスターと同じような反応、だった。仲間やられてブチ切れてたとはいえ考えんのがおざなりになりすぎじゃん俺。いる。あの村に、まだ。勇者が。……パターン赤、【最大――】」
「ごおぉぉっ!!」
――ぷしゅ。
ゴーレムの強靭な腕が振り下ろされてついに頭から血を噴き出したヘリオス。
それでもまだ口元が動いていたから俺はこれでもかと追撃。
何とかその続きを言わすことなくヘリオスはとうとう絶命。
あっぶね。ワンチャンコールしてたら明らかに良くないこと呟き始めたよ、こいつ。
もしかすると今みたいな隙というか、殺す殺さないみたいな選択を迫られると無理矢理よりハードな方向にシフトされる仕組みなのか、このゲーム。
一瞬の判断が命取り。本当に現実みたいだな。
もしここに鱗●さんがいたら判断が遅いって、絶対怒られてるよ。
もう折角倒したってのに素直に喜べないって。ってかこの世界だと死体が消えるのに時間が掛かるんだな。ゲームだと一瞬で消えてドロップアイテムが――
『経験値を1000取得しました。レベルが20に上がりました。付与可能経験値が5000に上昇しました。転生後の姿がスライムだったことから、スキル【取り込み】を取得しました。【ストック】を取得しました。取り込みたい場合は急いで【取り込み】を開始してください』
付与可能経験値ってまぁ聞かないし、見ない表現だな。
で、なに取り込んでくださいって?
え、俺どうすればいいの?
取り込むの効果も分かんないんですけど……。
『ああ! もうヘリオスが消えてしまいます! 早くしないと取り込めなくなりますよ! これからダンジョンに潜るには絶対に取り込まないと!』
え!? そうなの!?
『はい! だから急いでヘリオスの側でスキルの発動を! できるだけ大きく口を開けて叫んでください!』
わ、分かった! あれ? でも俺スライム語? しか話せないんだけど……。ま、まあいいや! 時間無いんだもんね! 迅速な情報伝達サンキュー、アナウンスさん!
「――ぷぺえええええええええええええええええええええええええええええええ!!! (取り込みいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!)」
おお。ヘリオスの奴の死体がぐねぐねぐねぐね粘土みたいに伸びたり縮んだりして、ネギトロみたいな綺麗なピンク色の肉になって、大きな塊になってそんでもって俺の口に……。
「ぷぺぼえででべぃぎぎいあががあぺべえ!?」
俺の口の中にガンガン入ってきたんですけど!!
口閉じるどころか咀嚼する余裕もないんですけど!! 血と処理されてない生臭い肉の何とも言えない匂いが充満して……うぼぇ。
嗚咽する余裕もねぇ。スライムじゃなかったら喉詰まらせて死んでるってこんなん!! まっず! 俺、俺……うえ! 魔族だけど限りなく人間に近い存在食っちゃったよ! 強制ガルバニズムはヤバいって!!
『あはははははははははははははははははははははははは!! あーおもろ、じゃなくって……えー、取り込みにより上級火属性魔法【テラファイア】をストックしました。残り回数10。ストックされたスキル・魔法は現在【テラファイア】のみ。これは経験値と共に対象が取得できるものとなります』
なるほど! こうやってジュリアを俺色に育てることができるってわけか! いろんなスキルや魔法を集めるためにいっぱい取り込んで取り込んで、経験値と一緒にぶっぱってわけな!
面白い! 面白いシステム! それになんか隠された要素がありそうでいろいろ試してみたい! これオタクの血が騒ぎますなあ!
「……。っぺぷえぺうえぺうえぷえぺうえぺうえぷっぺぺっぽぽっぺぱぁぁあぁあ!! (って笑顔で納得してやれるかくそったれえええぇぇぇええぇ!!)」
死にかけたわ! 血が騒ぐって……口の中で血の味が大暴走だったわ! 笑いごとじゃねえぞおい! 食ったぞ! 飛んだぞ!
『さて、それじゃあダンジョンに進みましょう。ダンジョンの上層適正レベルは30。そんな風にふざけてるといくら防御力が高いからって死んでしまいますよ。蘇生スキルには当然デメリットがありますからね』
誰のせいでこんなに愉快なことになってると思ってんじゃわれぇえ! そんでもって蘇生のデメリットとかそんなに重要なことをさらっと流すんじゃなあい!
「ぷぺぇ……」
もう疲れた。ジュリアに会いたい。冷たくされるならジュリアに冷たくされたいや。アナウンスさんのそれはきつすぎて助かんないパターンだよ。
「ごお……」
「ごあ……」
一緒に戦ったこともあってかゴーレムたちが俺を見ながら悲し気に小さく鳴いた。
こいつら門番でゲームシステムでもあるから、もしかっしてアナウンス聞こえてたのかもな。
それにしても俺のことで悲しんでくれるとかもうお前たち親友。心の友――
「「ごあはっはっはっはっはっはっはっはっはっ!!」」
おい、笑うの堪えてただけかよ。
もう知らん! お前らなんかもう見たくねえ! やったるよダンジョン! お前らの仲間ばっきばきのべっきべきにしてやるかんな!!
そう、この20レベルになった俺のパラメーター……。ステータスで!!
アナウゥウウウンス!! ヘイ! アナウンス! マイステータス、プリーズッ!!
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