第4話 システムアタック
※次回10/10
えーっと、最初の村、ロロロ村の森林は縦に広くて……マップ表示がないと分かりにくいけど、北の方にダンジョンになってる洞窟があって……。
街道に出たり湖に出たりとか間違ったルートを選ばずに……。今大体30、40分は走ってる、か。
となればそろそろ見えてきてもいい頃合い――
「はぁはぁはぁ……。くそ! どこ行きやがった! テラファイア! テラファイアぁぁああぁぁぁあっ!!」
それにしてもまーだ追ってきてるよ、ヘリオスの奴。
俺の姿が見えてないわりにはずっと的確に。
なんかそういった探索スキルとか持ってるのか?
雑魚過ぎて持ってるスキルの全部を把握してるプレイヤーってあんまりいなかった、というか確定で勝てるイベントでスキルを使うこともなかったからそんなことを知る余地もなかったんだよな、こいつ。
顔面は割とイケメンよりでファンはいただろうし、そういう人からすればちょっとでも情報を知り得るこの状況って滅茶苦茶助かるんだろうけどさ……。
はっきりって鬱陶しいわお前!
ダンジョン潜る前にレベル上げでも出来たらとか思ってたらモンスター全部焼かれるし!
たまに当たるのよ! その魔法! 範囲広すぎて! 魔法無効じゃなかったら多分数回は死んでるぞ!
しかも魔法無効でHPは減らないって言っても、熱さは若干感じるから! 46度くらいのお湯をぶっかけられたくらいの刺激はあるんだよ!
まぁあのまま村を襲ったりされるとかそんなことになるよりはマシだけど――
『ジュリアの窮地は1週間。あなたがヘリオスに見つかりさえしなければ、もう1匹の中ボスが合流するまで村は平穏。ジュリアもあの村で大人しく暮らせていましたが……ルートは分岐。ジュリアの行動に変化が起きます』
マジですか、アナウンスさん……。
というかそんなことになるって分かってたなら蘇生場所くらい融通利かせてくださいよぉ。あ、そもそそんなことは不可能ですか?
『……いいえ。選択可能です。でも……ちょっと面白そうだったから』
「――こうなったらどんだけかかってもいい! 森全部燃やしてやらあ! テラ、ファイアああああああああああああああああああ!!」
あっぢいぃぃぃぃいいいぃぃぃぃぃいいいぃぃぃぃぃぃぃぃぃいいいぃいっ!!
ちょっ! 冗談でやっていいこととやっちゃいけないことあるって! 謝るから! 靴舐めするから! アナウンスさんは俺の味方であってよ!
『……。ふふ。あ、失礼しました。まぁ確かにこういった立場は公平性重視じゃないとゲームとして駄目ですよね。分かりました。今後任意でマップの表示ができるように致します。マップに刻むことのできる情報はマップの使用回数等によって増えます。それと……決して最初にマップ表示ができるようにすることを忘れていた訳でありませんからね』
そんなの分かってますよ、マップ表示ありがとうございます。これでダンジョンまで一直線……って言うと思ったかごらあ!!
も、もういいや。とにかくマップ表示!
心の中で呟くと目の前にホログラムでマップが表示された。
確かにまだマップは不完全で、魔王城の位置だとかアイテムの場所だとかダンジョン情報だとかそんなものの表示はないけど……。
「ぷ、ぺ!」
ここを抜けたところにある。洞窟状のダンジョン、『ゴーレムの巣窟』が。
最下層の適正レベルは30以上で冒険の中盤のダンジョンだけど上の方はそうでもなかったはずだからとにかくここに逃げ込む。
ただなぁ、最初の窮地の適正が20レベル。
それを考えるとこのダンジョンもちょっと不安なんだよな。
とはいえ……。
「テラファイ――。いた。見つけたぞ! このクソスライムが!」
不安がってる場合じゃねえ!
このままじゃ殺される!
蘇生スキルがあるけど、あれにデメリットがないとは思えないし……そもそも痛いのは嫌だ! ジュリアに初めて殺されて知っちゃったんだよ! 死ぬのって死ぬほど痛いんだぞ!
「あははははははは! もう逃がさねえ! このクソスライム! ここまでおちょくられたんだ、存分にいたぶって殺してやるよ!」
「ぷぺえええええぇぇぇえぇぇぇぇ!!」
魔法を撃つことを止めて走って追いかけてくるヘリオス。
スライム、とりわけこのブロンズスライムってのが元々敏捷性に長けたモンスターでスタミナもあるってこともあって直ぐに捕まるってことはなさそうだが、完全に詰められてる。
ダンジョン! ダンジョンの入口はまだなのかよ! ってかダンジョンまでこいつが追ってくるってことないよな!
「はぁはぁはぁ、もう少しで! もう少し、で――」
「ぷぺ!」
ヘリオスの影が俺の身体に覆いかぶさろうとした瞬間、ついに薄暗い視界が晴れた。
ゴーレムの像が2つ。その後ろには洞窟。これが『ゴーレムの巣』。ダンジョンの入口。
俺は一か八かスキル軟化を発動。その身体を思いっきり引き伸ばして、輪ゴムを指で飛ばす要領で……。
「ぷぺ!」
「こ、こいつ!」
飛んだ。
そしてその勢いでゴーレムの像を通過。
何とかダンジョンに辿り着いた。あとはあいつがここまで付いてこれるかどうかだけど……。
頼む! ボスって普通そのフィールドとかダンジョンとセットでしょ? お前はロロロの村とその森林と紐づいてる中ボスなんだから付いてく――
「あはははははは! そんなことで俺を撒けたとでも? 大人しく捕まれっ!」
嘘でしょ……。もうゴーレムの像の間足突っ込んで……。そんなのってないじゃんか!
「――グ、ゴ……」
「え?」
「ぷぺ?」
動き出すゴーレムの像。
これって俺がゲームをプレイしてた時はただのオブジェでしかなかったのに……。
本物のゴーレムだったの? しかもこの反応……。ボスとか、イベントキャラのダンジョン侵入を許さないようなシステムが作動した感じ、か……。
俺がスルーされた理由はあくまでただのモンスター。モブみたいな存在だから……ってことかな?
「どけ! くそゴーレム如きが俺の邪魔すんじゃねえ! テラ、ファイアっ!!」
「ぐ、ゴ」
「効かない、だと?」
いや、効いてない訳じゃない。
ただ……このゴーレムたちの強さが、終盤というか最下層基準の強さになってるだけで……。
◇
種族:ゴーレム
名前:アイアンゴーレム
HP:69990/70000
◇
あ、はは。硬すぎるだろこいつら。
「ぐ、ごあああ!」
「くっ! 魔法が効かないってことか? ならこの自慢の拳で!」
魔法が効かないと判断したヘリオスは素殴りに打って出た。
でもゴーレムはどちらかといえば魔法の方が利くモンスター。
ヘリオスによる攻撃はたったのダメージは5。
膨大なHPを削れるほどじゃない。
それどころか……。
「ぐごおおっ!」
「いっ!! おま! 離せよ!」
ゴーレムの1撃によって削れる量は500。
しかももう1匹のゴーレムがヘリオスを拘束してるって状況。
……。
「くそ、テラファイア! テラファイア! テラファイア! テラファイア!」
乱発される魔法。
普通ならレベル1のモンスターがこんなのに近づくことも危ない。
でも俺、魔法効かないんだよねぇ。ちょっと熱いだけで。
「ぷ、ぺえええええええええええええええええええええええええええ!!」
「な!? てめえ! スライムの分際で! ちっ! 離せよこの野郎!」
拘束されてる状態で振り回す拳なんか怖くもなんともないっての。
いやあ。なるほどね。こうやってゲームのシステムを使えば格上だって倒せる。いわゆるハメ技も可能、と……。
そんじゃあ……ダンジョンで思う存分経験値集めできるようにお前でレベルアップでもさせてもらおうかな!
逆襲の時じゃごらあああああああああっぁあああぁぁあぁあぁあぁあああ!!
「ぷぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺっぺっぺぺぺええええ!!」
『あ、それ倒すと……まぁいいか。楽しそうだし』
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。