第17話

「……」


「む」


 僕が纏う空気が変わったのを察知したのか、老人はさっき以上に警戒感を強めた。


「僕はね、あの日のことを後悔してるんだよ。もっと防御シールドを極めればとか、もっと周りを見ていればとか、色々ね。だから──」





 そこで僕は今まで





「その後悔の果てに生まれたこれを、お前にぶつける。あの時の後悔を払しょくするために」


「こ、これは……凄まじいな」


「覚悟することだよ。僕は今、近接もいけるんだから」


 そしてあまり使いたくないこれを使う。もう自分を縛るのは止めだ。僕は内心これを使い続けたいと思っていた部分があった。


 二重人格が何だ。


 それを制御してこそ、初めてあの日を乗り越えられたと言えるだろう。


「──反転インバース


 瞬間、僕が放っていた魔力の質が変わった。








「──ハァ……」


「っ」


「殺すぜ、ジジィ。覚悟しろよ」


「まさか……これほどとはな。どうやら儂らはとんでもない化け物を生み出したかもしれぬ」


 は今まで感じてこなかった全能感に浸っていた。これなら目の前の爺を殺すことができる。


 いや、殺すのは駄目だったか。


 半殺しにしよう。


「重点強化」


「っ!?」


 俺は一瞬で奴の懐に入る。それに気づいた爺は急いで刀を振るおうとするが、遅すぎる。


 俺はそっと爺の体と刀に触れた。


「──破壊」


「っっっ!?」



 バリン!!!


 

 大きな音を立てて刀身が粉々に砕けたと同時に、爺の骨が折れた音がした。それに怯んだ爺に向かって更に俺は拳を放つ。


「死ねよ」


「がはっ!?」


 容赦はしない。コイツからいろんなことを聞かないといけないからだ。


「ちぃっ!?」


「ふっ」


 爺は懐から小刀を取り出そうとしていたから、俺は更に腕を振るって爺の左腕を吹き飛ばした。そして胴を蹴り飛ばし壁に激突させる。


「今防御シールドが使えないからお前を拘束することができないからこうするしかねぇだろ」


「ゴホッ……ったく、老人に対してちいと酷くはないか……?」


「てめぇ、老人面してんじゃねぇよ。いや、一応老人か……?まぁそれほど頑丈だったら老人扱いしなくてもいいだろ」


「ふん、これだから近頃の若いもんは」


「負け犬が何か言ってらぁ」


「む……」


 すると奥から人がやってきたので、こっそり反転インバースを使って人格を戻した。









「ふぅ……」


「変わり身の早い奴め」


「うるさいよ」


「はぁ。もう儂は指一つ動けん。煮るなり焼くなり好きにせい」


「だったら、暁について聞かせてもらおうか」


 多くの護衛に囲まれながらザイン様がやってきた。そのそばにはセレスもいた。


「サフェト君、ご苦労だった」


「いえ」


「やはり、か。最初から仕組まれていたと」


「その通りだ。そろそろ仕掛けてくるかと思っていたからな」


「はぁ……」


「それで早速だが聞かせてもらいたいな。暁について。奴らは何を企んでいるのかを」


「ふぅ……潮時かのぉ」


「……なんだと?」


 すると老人は上を向いたかと思ったら不意に笑い始めた。


「ふっ、儂らは最初から最後まで、一つの目的のために動いていた。それはもうすぐ手に入る。まぁ、もうすぐと言っても──今日だがな」


「っ!?」


 その瞬間、僕らが経っている地面が突然揺れ始めた。



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