第13話
「じゃあ、昨日予告した通り、東京散策のグループ決めと計画表の作成をします!」
5限の開始と同時に、担任の女性教師が声を上げる。
今日はこれから2限連続で東京散策の計画を立てるための時間が取られていた。
……ちなみに、今日のランチタイムも我々は黙食でした。
「まずはグループ分けね〜。1グループは3人から5人で、クラス内の人と組むように。 で、ここで一つ注意なんだけど、各グループに1台ずつ配る携帯電話が合計で10個しかないの。だから、最大でも10グループになるように分かれてね!」
「じゃあ、先生は職員室に計画表取りに行ってくるから、それまでにグループ作っておいて!よろしく!」
先生が教室を出ていくと、皆席から立ってグループを作り始めた。
俺もとりあえずサクラと合流する。
しかし、周りを見渡すと、4、5人で集まり始めたグループが多いことに気づいた。
まずい……。
2人ではグループを作れないため、このままだとサクラと俺はそれぞれ別のグループに分かれなければならなくなる。
誰か2人のところは他にないだろうか。
そう思いながら教室中に視線を巡らせていた時だった。
「ユウジくん。入れてくれない?」
「え」
仲西さんに声を掛けられた。
しかも、どうやら一人のようだ。
「え、えっと、いいよ」
「ありがとう」
とっさに承諾してしまったが、まだサクラの許可を取っていない。
サクラに目を向ければ、彼女も驚いた様子で目を見開いていた。
「え!? なんで仲西さんが!?」
という心の声が聞こえてくる。
そしてそれは俺も同意見であり、普段なら引く手数多であろう仲西さんが俺達に声をかけた理由がわからなかった。
特にいつも一緒にいるレンと佐伯さんを探してみれば、それぞれ別のグループに集まっているのが見えた。
どうやらレンの方はサッカー部で、佐伯さんの方はバレー部で集まっているらしい。
そういえば、このクラスって陸上部の女子が少ないんだよな。
そして、その陸上部の彼女たちも他のクラスメイトと一緒に5人で集まっていた。
そうこうしているうちに、
「ただいま! グループできた!?」
先生が戻ってきてしまい、結局サクラに確認することができないままグループ決めは終了してしまった。
「次は東京散策の計画表を書いてもらいます! 皆行きたい場所は調べてきたかな? 今から本と路線図を配るから、それも参考にしてね〜」
グループごとに机をくっつけて座り、引き続き先生の指示を聞いていた。
配られる本というのは、東京の観光地が説明とともに載っているガイドブックらしい。
俺達は特に行きたい場所を考えていなかったため、とりあえずこれを見ながら計画を考えることにした。
「えっと、仲西さんは行きたい所ある?」
「どこでもいいよ」
「そ、そう?」
「うん、ユウジ君とサクラちゃんの行きたいところで」
サクラの方を見れば、彼女も困った様子でこちらを見ていた。
その後、なんとなく南の方で周るということは決まったものの、移動にかかる時間がわからないということで、俺は一人でPC室向かっていた。
他クラスも使うから、PC室に行けるのは各グループから2人までらしい。
サクラを一人にするというのはないし、仲西さんを一人にするのも躊躇われたので俺が行くことにしたのだ。
★☆★
ユウジがPC室に行ってしばらく経った頃。
ガイドブックを眺めていたサクラに、硬い表情のカエデが声を掛けてきた。
「ごめんねサクラちゃん」
「え?」
「ほら、私サクラちゃんとユウジくんに迷惑かけてるから」
ぶんぶんと首を振りながら否定する。
「仲西さんがいなかったら困ってたのは私たちの方だよ」
「……そう、ありがとう」
そして、しばらく沈黙が続いた後。
「……私のことって何か知ってる?」
「な、何か?」
「うん。IINE見てない?」
「わ、私スマホ持ってないから」
「えっ」
大きな声ではないものの、口に手を当てて、驚いた表情を浮かべた。
そして、
「はあぁ~」
「ご、ごめんなさい!?」
「ああ、ごめんね。怒ってるわけじゃないの。むしろ安心して、力が抜けたというか」
「……?」
「カエデ」
「え?」
「カエデって名前で呼んで?」
「う、うん。えっと、カエデ……ちゃん」
ユウジが帰ってきたのは、それからすぐのことだった。
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『計画表』
9:00 舞浜駅発
9:40 チームラボプラネッツ着
11:30 チームラボプラネッツ発
11:50 東京もんじゃ月着
13:00 東京もんじゃ月発
13:20 フシテレビ着
14:20 フシテレビ発
15:00 東京駅着
16:00 東京駅集合
グループメンバー
・(代表)此花優慈
・稲垣桜
・仲西楓
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