第12話
「…………」
誰も言葉を発することなく、黙々と眼の前のご飯を食べ進める。
周りのグループは夏休み前と同じようにわいわいと話しているのに、うちのグループだけまるでお通夜のよう。
息苦しいランチタイムであった。
☆★☆
夏休みが明けて2日。
昨日は始業式だけだったのですぐに帰ることができたが、今日は普通に6限まで授業がある。
夏休み明けの学校って本当に行きたくない……。
「「「ありがとうございました」」」
4限の授業が終わり、凝った背筋を伸ばす。
だんだんと騒がしくなる教室の中で、視界の端には数人の男子が急いで教室を出ていくのが見えた。
彼らはランチボックスの大盛りご飯を確保するために急いでいるのだ。
うちの中学は昼食に弁当を持参するか、ランチボックスを購入するかを選ぶことができる。
ランチボックスはおかずと白米で容器が別れており、白米に関しては数量限定で大盛りが用意されているのだ。
そのため、大盛りご飯を求めて男子達が急いで教室を出ていく様子は見慣れた光景になっていた。
俺は弁当組なので、自分の机を動かしてグループを作ることにする。
近場の席を5つか6つ固めて、一緒にご飯を食べるのだ。
ちなみにこれは仲良しだからやっている訳ではなく、グループで顔を合わせながらご飯を食べることがクラスの決まりになっていた。
先生もグループを変えながら、生徒と一緒にランチボックスを食べている。
牛乳係が運んできた牛乳瓶を、俺が持てる4本だけ取りグループの席に置く。
「ユウジー食べよー」
牛乳瓶を器用に5本持ったエイトが声をかけてきた。
それらを適当に配ったところで着席する。
こいつも弁当組なので、夏休み前も2人で一緒に食べ始めることが多かった。
ちなみに、クラス全員での挨拶はなく、各自好きなタイミングで食べ始めるのだが、ランチボックス組は受け取りに並ぶのですぐには来ない。
夏休み何してた?だの宿題終わったか?だの、他愛もない話をしながら、母さんが用意してくれた久しぶりの弁当を食べ始めた。
問題は、残りのグループメンバーが着席した時に起きた。
いや、むしろ何も起きなかったというべきだろうか。
いつもなら仲の良さが伝わるような賑やかな会話を繰り広げる3人が、今日は一言たりとも発することなく、下を向きながらご飯を食べ始めたのだ。
なんというか、相手と目を合わせることを避けている感じで、表情も硬い。
それを見ていた俺とエイトの間にも、いつしか会話がなくなり、気まずさを感じながら黙々と箸だけを動かしていた。
まず、俺の正面に座っているのは、爽やか系イケメンでサッカー部キャプテンの
その人気はクラスに留まらず、学年、いや校内で1番の人気者は誰かと訪ねたら必ず候補には挙がるであろう人物だ。
その上性格も良く、隣の席の俺も英語の授業でTalkする度にそれを実感している。
続いて、俺の左に座るのが
彼女は陸上部のキャプテンでありながら、テストでは毎回上位5位以内に入るほど頭も良く、さらにはモデルのような容姿を併せ持つという、レンと並んで校内トップの人気を誇る人物だ。
授業中、後ろの席から目に入るやや茶色がかったロングヘアーは、邪な考えなしに美しいと感じていた。
そして、俺から見て左斜め前に座るのは、バレー部キャプテンの
背が高く、後頭部の高い位置で纏められた長い黒髪がよく似合う人だ。
さっぱりとした話し方をする人で、柔らかみのある話し方の仲西さんと相性の良い組み合わせだと感じていた。
もちろん彼女も校内トップクラスの人気を誇っており、要するに3人共校内のトップ層に属しているリア充集団であった。
ちなみに、エイトは俺の右側、5人グループの凸の部分に座っている。
こいつは小学校からの友達で、今は科学部の部長をやっているらしい。
家が離れているのであまり外では遊んだことがないが、学校ではよく話す相手だった。
結局その後も会話は生まれぬまま、チャイムがランチタイムの終了を告げた。
☆☆☆
「ユウくん、東京散策誰と行くか決まってる?」
「いや、決まってないよ。一緒に行く?」
「うん!」
学校からの帰り道。
俺達は明日予定されている、修学旅行の東京散策グループ決めについて話していた。
修学旅行中にはいくつかグループを組む場面があり、これまでにも行きと帰りの新幹線の座席決め、1泊目の部屋割り決め、2泊目の部屋割り決め、最終日のバーベキューのグループ決めが行われてきた。
そして、明日は最後のグループ決めとなる東京散策のグループ決めが予定されている。
帰りの会での先生の話によると、クラス内のメンバーで好きに組んで良いそうだが、グループに支給される携帯電話の数に限りがあるらしく、それだけよろしくとのことだった。
詳細についてはまた明日教えてもらえるそうなのでとりあえずサクラと組む約束をし、残りのメンバーについては明日の流れに身を任せることにした。
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