第6話

状況を整理しよう。


まず、俺たちは布団を横に5枚並べて寝ることになっている。

その上で、今から始まるUNOによって各々の寝る場所が決まり、1番最初に上がった人が一番奥へ、次に上がった人がその隣に、というように奥から詰めていく形になった。


全員に7枚ずつカードが渡ったところで、ゲームスタートだ。

順番は、母さん→父さん→カリン姉さん→俺→カレン姉さんで、簡単に我が家のルールを確認しておくと、


・同じ数字や記号のカードは同時に出せる

・記号カードを同時に出したとき、枚数分の効果が発動される

・ドロー2にはドロー2を、ドロー4にはドロー4を返すことができるが、ドロー2にドロー4を返したり、その逆を行うことはできない

・カードを引いたターンにはカードを出すことができない

・記号カードで上がることはできない


という感じだ。

公式ルールとは異なるかもしれないが、俺にとっては慣れ親しんだルールである。

修学旅行のとき、大富豪は小学校や家族単位で結構ルールが違っていて擦り合わせるのに苦労した記憶があるが、UNOは比較的すぐに合わせることができた気がする。




「よっしゃあ!」


まず、母さんが上がった。

カレン姉さんから受けた攻撃をことごとく隣の父さんに回すプレイは見事で、それを受けた父さんは涙目になっていた。


母さんが上がったことで、順番は父さん→カリン姉さん→俺→カレン姉さんになった。

が、カリン姉さんがリバースを出し、俺に回ってくる前に父さんへとターンが移る。

現在一番カードを持っていた父さんが7を4枚出したところで、枚数的にはほぼドローの状態へ。

その後は膠着状態が続いた。

まず、姉さん達は2枚出しては次のターンに1枚引くというように、大きくカードを減らすことはなかった。

次に、俺も一見皆と変わらない枚数に見えるが、その手札には同じ種類のカードが集まっていた。

1ターンにカードを一気に出して上がる作戦だ。

最後に、父さんはこの中で一番順調に枚数を減らしているように見えた。



再びリバースによって順番が変わったところで、


「よし、UNOだ!」


父さんが残り1枚になり、UNOを宣言した。

次のカリン姉さんは同じ色の数字カードで場を流す。

回ってきた俺のターン。

俺はドロー2を3枚同時に出した。


「みゅ!?!?」


カレン姉さんは驚いたように変な声を発し、その後すごく悩んだ顔をした。

そして、出したのはドロー2。

記号カードで上がることはできないため、もちろん父さんはこれを受けるしかない。


「ぐわあああ!!!!」


父さんの手札に8枚のカードが加わった。



そして、次のターンに俺は上がった。

ちなみに、同じ数字のカードを同時に出して上がることは禁止されておらず、UNOの宣言をする必要もない。

これによって、残る3人はカリン姉さん→カレン姉さん→父さんの順でゲームを進めていくことになった。


「ふふふ、ごめんねカレン」


そういってカリン姉さんが出したのはドロー2。

カレン姉さんは悔しそうにカードを2枚引いた。

そして、続く父さんは──


「パパ!?」


ドロー4を出した。

カリン姉さんは唸り、カレン姉さんは笑いながら数字カードを出す。


そして、



「よっしゃああああああ!!!!!あがりだああああ!!!!!」



父さんが大声とともに出したカードは1。


しかし、なんとそれは、8枚もあった。



「「ええーーーー!!!!????」」


理論上はあり得えても、確率は限りなく低い、奇跡の勝利だった。


父さんはこういうゲームに弱いから、姉さん達に勝つのは本当に珍しい。




皆が寝静まった頃。

カリンは誰にも悟られぬよう、慎重に起き上がった。

そして、その足はユウジの元へ

……と向かい始めた時、


「カリン、抜け駆けは許さないわ」


「む」


横になったままのカレンから声がかかった。

仕方がないといった表情のカリンは、カレンが起き上がるのを待ち、今度は2人でユウジの元へと歩みを進める。



そして、ユウジの布団に近づいた時。


「あんた達」


「「(びくっ)」」


布団に横になったまま、こちらに顔を向ける母と目が合った。

不正を何よりも嫌う彼女によって向けられた、刺すような視線によって、2人は硬直する。


そして、母は告げた。


「敗者は黙って寝ろ」




翌朝、俺が目を覚ますと、母さんが既に起きていた。

俺はトイレに行くため、部屋の入口に向かっていると、


姉さん達が1つの布団で仲良く向き合うようにして眠っていた。


手を繋ぎ、身を寄せ合って眠る姿は、見方によっては何かに怯えているように見えなくもない。

俺はスマホを手に取ると、その寝姿を写真に収めた。



家族全員が起きたところで、朝ごはんを食べに食堂へ向かう。

朝はバイキング形式で、俺はパンをメインに、姉さん達はご飯をメインにお腹いっぱい食べた。



そして、旅館を出て俺達が向かったのは、


「よし、今からそばを打つぞ!」


そば打ち体験ができるお店だった。

ここでは粉からそば打ちを体験でき、できたそばはお昼ごはんとして食べることができるらしい。

今はまだ昼前ではあるが、作ったそばが茹で上がる頃にはちょうど良い時間になるだろう。



茹で上がったそばが、薬味や天ぷらとともに提供された。

家族でわいわいと作った蕎麦は不揃いだったが、とても美味しかった。




その後は道の駅やサービスエリアでお土産を買い、名残惜しさを感じつつも、俺たちは帰路を辿り始めた。

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