お引越し先は最高でした。(太刀川あゆむ視点)
マリクラスとユリグラドと一緒に教団の監禁先から抜け道を通って、市井を出た。
途中でマリクラスは修道服を脱ぎ捨て、街で買った白いワンピースに着替える。
ユリグラドはノーマルの白いシャツとパンツに着替える。
「うぅ・・なんか着心地がゴワゴワするなあ・・。」
「しょうがないですわよ・・私たちが今まで着ていたものの素材が良すぎたんです。」
「そうだけどさ・・。」
「私が聞いた話ですと、洗っているうちにだんだんと柔らかくなって着心地が良くなるみたいですわよ!」
「え?そうなの??なら引越し先に着いたら洗いまくろう!!」
私はマリクラスとユリグラドの話を聞いてくすくす笑ってしまった。
「ユリグラド。こういう服は最初はゴワゴワするけど着ていくうちに体にあってきて洗ううちにだんだんと柔らかくなっていくの。洗濯をたくさんしても逆に体にあってないから、もっと着心地悪くなるよ。」
「そうなんだ!!あゆむは物知りだなあ・・。」
「徐々に慣れていくしかないと思うよ。それにしてもこの街ってさっきから思うんだけど、色々あってなんでも揃いそうだし賑やかなのに、なんで空気がこんなに停滞してるの??」
本当に不思議・・。なんでこんなに空気が停滞してるんだろう?
賑やかさの中に虚無感とか、なんらかの諦め感が漂ってる。
それを見ないふりして無理やり賑やかでいる・・みたいな空気感。
異世界でも元の世界でも空気感って違わないんだなって実感する。
こっちにきた時は不愉快な理由でも、どことなく異世界に期待をしていた。
そんな期待はあっという間に崩れてしまったけど。
ただ、私にはマリクラスとユリグラドの二人がいる。
こんな私をありのままに受け止めて、私を一人の人間だと接してくれる。
日本で過ごしていたらどうだったのだろう?
まず両親は私のことを頭がおかしくなったと頭ごしに否定した。
姉は私を可哀想だと思い接してくれた。
友人はあゆむはあゆむなんだから、なんも気負いしないであゆむのままで生きていけば良いと思うよ。
と口にはするけど、でも言葉の奥底にどこか差別意識が含んでいたと思う。
多様性と声高く叫ばれてる時代に過ごしていたのに、結果みんな好き勝手自分勝手な多様性を声を上げて、本当の多様性についてすごく浅かったんではないだろうか?
最初は多様性という言葉に惹かれていたけど、時間が経つにつれて多様性という言葉に嫌悪感を持ってた。
どうしよう・・。だんだんとこの二人に依存していってないだろうか?
優しさに無条件に甘えたりしていないだろうか?
ふと。そんな考えが頭に入ってきた。
「あ!!着いたよ。引越し先。」
私はこれから住む家に目をむける。
ヨーロッパの街の可愛い家といえば良いだろうか?
その家が今目の前にあった。
「さあさあ早速入ってみましょう!!」
マリクラスがユリグラドと私の手を掴んで家の中に入っていく。
「うわあ!!ダイニング日当たりが最高で良き!住みやすそうな家だね!!」
私は入った瞬間日当たりがいいダイニングに目を向ける。
ダイニングテーブルとかソファの配置があんまり気に入らないけど、それはなんとかなるだろう。
この世界も日本とあんまり変わらずに生活に必要なものがはいていって、ホッとする。つーか暗殺者さん。結構頑張ったんじゃないのだろうか??いつからこの家を探して用意していたんだろう?
あれは?冷蔵庫かな??
私は気になったものを触る。うん!冷蔵庫だ!!なんか自分が思ってるのと違うような気がするけど、冷蔵庫があるのは助かる!!
冷凍庫・・はないんだね。冷蔵庫があるだけいっか。
「あゆむ。この冷たい箱は何に使うんだい。」
「これは冷蔵庫と言って食べ物を傷まないようにしたり飲み物を冷やしたりするの。
すごく便利なんだよ。」
二人はへえ〜と想像つかない感じの声を上げてる。
・・・これは私が生活面を担当するしかないかも??
「マリクラス、ユリグラド・・。確か市井の勉強をしていたと言っていなかった?
私。すごく先行き不安なんだけど・・。」
「「え?」」
「「そ・・そんなことは!!」」
「「不安ですわね!(だね!!)」」
二人はふんすと鼻息荒く言い放った。
ですよねー。私は苦笑いを浮かべてしまった。
「とりあえず、生活は少しずつ慣れていって、せっかくだから今を三人で毎日楽しもうよ。楽しみながら少しずつ私の夢のことを解決していく?それでおっけー??」
思った以上に自分たちの思い描いたことと違ってしょんぼりしている二人に私は笑いながら言った。
「・・・・夢??・・そうですわ!!夢!!夢のことを話すって言ったのにすっかり忘れていましたわ!!」
「あ・・。忘れていたんだ。」
だと思った。私がみたあの気持ち悪い夢のことを話した時に二人ともなんてこと・・。って言って、街に出たら話って言ったのに一向に話してくれないから
こっちからふってみたんだけど、忘れていたのね笑
「さてマリクラスが思い出したことで夢のことは後で話すことにして、僕さずっと待っているんだけど、あれでしょ?引っ越ししたらお隣に挨拶するんだよね??
早くいこうよ!!」
「すごく目をキラキラさせながらいうことなのかしら?でもお隣さんは大事ですものね!!早速いきましょう!!」
夢の話も気になるけど、確かにお隣さんも気になる!!
「そうだね・・お隣さんに挨拶いかないと。でもお隣さんいるかな?」
「こちらの窓からお隣さん見えますけれどもいらっしゃるみたいですわよ。」
「あ!本当だ!!よしいってみよう!!」
ユリグラドは玄関にさっさと向かう。
マリクラスと顔を見合わせてくすくす笑う。
「こんなに急がなくても大丈夫だよー。」
「そうですわよ。落ち着いてくださりませ。」
お隣の家の玄関を叩く。
男性と女性の声が聞こえてくる。
爽やかなイケメンが玄関を開けて、ひょこっと日本人が顔を覗かせる。
え?あれ??
「ルカさん!!」
私はしまったと思った。召喚時に名前も聞いていない。
夢で名前を知ったのに・・。私は冷や汗をかいた。
「え?聖女様??うそ!!」
ルカさんは少し頭を傾げたけど、すぐに気を取り直したみたいで
私たちにめっちゃ笑顔を向けてくる。
なんだ?この可愛い人。
私もすぐにきゃあーと言って手を取り合って喜びの声を上げてしまった。
このひとすごい。人に身構えさせないですぐにパーソナルスペースに入ってきて
すぐに人と打ち解けるように持っていく。
マリクラスとユリグラドは男性の顔を見てなんか話していたけど、私はルカさんに会えたのが嬉しくってその気持ちのまま話をしていたのでなんて話したのか聞いていなかった。
「せっかくだから、うちでお茶しましょう?」
「え?いいんですか??」
「いいよー!入って入って。」
私はマリクラスとユリグラドの二人を見る。
二人ともうなづく。
「「お邪魔します。」」
ルカさんとお茶を飲みながら召喚されてからのことをお互い話していたら、時間がすぐにさってしまった。
「そろそろお暇しなくっちゃ。」
私が声を上げて二人もハッとなって窓を見ると夕暮れ近くになっていた。
席をたった私にルカさんが声をかけてくれた。
「あゆむくん。明日時間ある?私のお買い物ついでで申し訳ないんだけどよかったら一緒に行かない??よかったらマリクラスさんとユリグラドさんもいきましょう?
お二人とも育ちがいいんでしょ?服に着慣れてなさ感が出ていて少し浮いてしまってるわ。私お気に入りのお洋服屋さんがあるのでそこもいきましょう?」
「え?いいんですか??うわー助かります!!ルカさんのきているお洋服を見ていてどこで見つけてきたんだろう?ってずっと思っていたんですよ。」
ルカさん。マジでいい人すぎるんだけど!?
同郷でしかも先に町で暮らしてる先輩がお隣さんって・・。
この偶然に感謝しかない。
ルカさんとあんまり話していないマリクラスとユリグラドもコクコクうなづいて笑顔を見せる。
「それではまた明日ねー。あ!そうだ!!ちょっと待ってこれ。昨日の残り物だけどよかったら持っていて。パンとかもどうぞ。」
ルカさんは冷蔵庫から鍋を持ってきて私に渡してくれた。
何から何まで気遣いをいただいて申し訳なる。
「そんなこと気にしないで。お隣さん同士じゃない。しかも異世界から来た日本人同士仲良くしましょ!」
そう言ってルカさんはウインクしてみせた。
気遣いも自然にできてしかも可愛いって・・。リーノさんがメロメロになる気持ちわかるよ。
「お言葉に甘えて頂戴します。」
私は鍋とパンをもらって頭を下げる。
「是非是非ー。別に洗わないでもいいからね。」
ルカさんはひらひら手を振ってそんなことを言ったけど。
いやいや・・それは流石に洗うよ。逆に洗わせてください。
ここまでやってもらってなんもしないのは失礼だもん。
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