隣に住み人はまさかの・・・

私は鼻歌を歌いながらリーノさんと部屋の中を掃除していた。

二人で住み始めてどれくらい経ったのかな?

なんか最近は色々とあったし、リーノさんは最近は騎士団が忙しいみたいで

家に帰ってくる時間も遅かったり、騎士団に泊まったりしてなかなか家に帰ってこられなくて、二人で過ごす時間が減っていて、久々の時間を過ごせて私はかなり幸せだ。


この異世界に巻き添えみたいな形で転移して、あのデブにさっさと出ていけと言われて、リーノさんに拾われなかったらきっと私はこの世界で途方に暮れていたし、なんなら世界を憎んでいたと思う。

たとえショッピングスキルというチートすぎるスキルがあっても、世界の色はきっと黒かったと思う。

自分が異世界に転移してわかる。自分は一人では生きていけない人間だ。

一人で生きていける!って日本にいる時は思っていた。でも実際は直人や塁とかがいて私に寄り添っていたし、会社に行ったらなんだかんだ話しかけてくれる人がいて本当に一人で過ごす時間は1日のほんの数時間。それでよく一人で生きていけるって思い込んでいたものだ。そのことに気づいた時、周りの人の大事さに改めて気がついた。


一人でご飯を食べるよりも、リーノさんとご飯を食べるのが楽しい。

一人で家事をするよりも、二人で分け合って家事をするのが楽しい。

あんなに大好きだった一人で買い物することも、二人で一緒に買い物するのが楽しいなんて!!

ここに来てから、気づくこと知らないことが増えていく。その積み重ねが日常なのかと思うと毎日が幸せに感じる。


掃除をし終えて、二人が好きなお菓子屋さんで買った焼き菓子をお皿に盛り付けて、お茶の準備をする。

「リーノさん。お休みの時なのにお掃除手伝ってくれてありがとう。」

「いえいえ。お安い御用ですよ!しかしルカさんがウチに住むようになってから見違えるように綺麗になりました。うちってこんなに綺麗だったんですね。」

住み始めた時の悲惨な状況を思い出して二人でくすくすと笑ってしまった。

どんな人間でも苦手なものがあるけど、リーノさんの場合は掃除と片付けを始め家事がどうも苦手みたいだ。


今日は雑貨屋さんで買ったマグカップを使おう。

マグカップにコーヒーを入れる。

日本と繋がってるけど、流石に日本のものをこっちに輸入するわけにはいかない。

私が無性にコーヒーを飲みたくて、探していたらこっちにも会った時は感動した。

コヒールという名前で売っていたのよ!!

コーヒーミルも売っていたので、早速買って手挽きでこっちに来て初めて挑戦したのだけど、それが案外楽しくって、最近はお茶の時間はコヒールを出すようにしてる。

リーノさん的にはどうかな?と思っていたけど、案外この苦味が気に入ったみたい。

そして、コヒールと焼き菓子の組み合わせを知ってからは焼き菓子には絶対コヒールになってしまった。紅茶にコヒールに緑茶に、だんだんとお茶の種類も増えてきてなんかうれしい。


焼き菓子とコヒールを味わいながら、最近忙しかったからお互いの話をしていく。

リーノさんが忙しい理由は、最近魔物の出現頻度が高くなってるらしい。

いつもは年の夏の時期に出て、あとは冬の時期に少しだけ出るくらいで、

あとはそこまで魔物討伐をしなくて良いのに、今年は四季ごとに魔物がある程度出てきているらしいのと、王都の近くの村にも魔物が出てきてその討伐に駆り出されているみたい・・。

「あんまり体験したことなくって、最初は不安だったのですが過去の文献を読んでいたら過去にも結構あったみたいで、騎士団一同安心したんですよ。安心してもいつでも討伐できる準備は欠かしていないですが・・。しかし最近はイミドナの方には魔物がきていなかったので、この増え具合は少し注意ですね。」

そしてリーノさんが笑う。

「しかし、人間って不思議ですね。守るものができると不安要素が増えるのが一気に怖くなる。でもその怖さがなんか嬉しいんです。ルカさんと出会わなかったらこのような気持ちを味わえなかったから・・。ルカさんに出会えて良かった。」

私はその言葉を聞いてなぜか顔が一気に赤くなる。

「あれ?どうしましたか??ルカさん顔が赤くなってますよ。」

んもう。リーノさんのせいだって!

私はお返しとばかりにさっき思ったことを言った。

ふふ・・。今度はリーノさんの顔が赤い。

「まいったな・・。ますますルカさんのことが好きになっていく。」

「私だって。毎日リーノさんのことが好きになっていきますよ。

お互いもっともっと好きになっていけば良いですよね?」

お互い顔を赤くしながら、キスをする。


「あ!そういえば。お隣さん誰か引っ越してくるみたいですよ?」

「え?そうなんですか??誰なんだろう??」

少し気まずくなった雰囲気を察したからか、リーノさんが話を変えてくれた。

隣って確か急にいなくなったんだよね?あんまり交流がなかったから誰だかわからないけど、今回はお隣さんと仲良くしたいなあ・・。

「前の人は交流なかったから、今回はお隣さん同士仲良くできたら嬉しいですね。」

「あ!それ私も思っていました!!」


トントントン・・。

「あ!噂をすれば誰かが来たみたいですね。」

「本当だ!!」

リーノさんと一緒に玄関に向かう。

「はい。ただいま開けます。」

リーノさんが玄関を開けて、私がリーノさんの後ろ側からひょこっと顔を覗かせる。


うわあ・・なかなかお見えにならない美少女にリーノさんとの違う雰囲気のイケメンというか美青年。そして可愛い日本人・・。うん?日本人?あれ??あの子・・。

「え?うそ!!ルカさん??」

「やっぱり!!召喚された聖女様??」

二人できゃあーーって喜び合ってる。

あれ??私名前って教えたっけ??ま、いっか。

それよりも何よりも再会できて嬉しい!!

しかもお隣さんだなんて!!もう絶対に仲良くするんだから??

「あ!私。太刀川あゆむです。右隣の女性はマリクラスさん。そして男性の方はユリグラドさんです。お隣に引っ越してきたのでこれからもよろしくお願いします。」

「うわあ!!嬉しいよー!私は高橋瑠花。隣の人はカメリーノさん。私はリーノさんと呼んでるんだ!!ねえあゆむくんと呼んで良いかな?私はルカとよんで!!」

「是非是非ー。私はルカさんと呼びますね。」

二人がキャアキャア言っていたからか、リーノさんとマリクラスさんとユリグラドさんの表情に気づかなかった。



「まさか・・ユリグラド皇太子様・・。マリクラス侯爵令嬢・・」

「リーノ。私とマリクラスは王族と貴族を捨てたんだよ。これからは一市井として生きていくから、普通の隣人として接してくれないか?」

「リーノ兄様。大変お久しぶりですわ。お隣さんが顔見知りでとても心強いです。

私もユリグラドと同じく貴族を捨てたのです。ですから普通のマリクラス、ユリグラドと接してくださると嬉しいですわ。」

「わかり・・わかった。リーノだ。これからよろしく頼む。」

「こちらこそ、マリクラスと言います。」

「こちらこそ、ユリグラドと言います。まさか隣があゆむと顔見知りなんてなんて幸運なんだろう。あゆむよかったな。」

「うん!!ルカさんともう仲良くなっちゃった。お茶に呼んでくれたけどどうする?」

「隣人の交流は大事だからお邪魔しよう。」


私はユリグラドさんの言葉にぷっと吹き出しそうになるのを抑える。

「リーノさん。ごめんなさい勝手にお茶に誘ってしまって。」

「いえいえ。大丈夫ですよ。しかしあの時の聖女様だとは!奇遇ですね。

お隣さんと仲良くするきっかけがあってルカさんよかったですね。」


私たちが中に入ると、あゆむくんとマリクラスさんとユリグラドさんがお邪魔しますと入ってくる。

私は急いで席を用意して、お茶を用意する。

私たちは召喚された後の話をお互い話していった。


まさか隣に聖女ことあゆむくんが引っ越してくるなんて思わなかったよ。

これからもっと楽しくなりそうな予感がする。

お茶を楽しみながらそんなことを思った。






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