持つべきものは友達。

私はマリクラスにさっき見た夢のことを話した。

私を軽く抱きしめてるユリグラドも大丈夫だよと言いながら聞いてる。


二人は最初は怖い夢だと思っていたみたいだけど、だんだん表情が真剣味を帯びてきてる。

最後まで聞いて、マリクラスとユリグラドは「ああなんてこと!!」って呟いた。


「ユリグラド。もう悠長にしていられませんわ。明日ここを抜け出しましょう。」

「そうだな・・。あの教皇が殺されるのは別に構わないが、ここにいてもたかが知れてる。情報を集めないと!!」


「マリクラス、ユリグラド。私の夢を信じてくれるの・・。」

二人は私の自信無さげな表情を見て、顔を見合わせてもちろん!とうなづく。


「詳しい話は明日、街に出たら話しましょう。大丈夫ですわ。さあさあこうしていられませんわよ。ユリグラドも街を出る準備をしてくださりませ。ふふふ・・。少し早めになりましたが、混乱なくここを抜け出すことは良かったですわね。

教団と貴族と王家の三つ巴の醜い戦いも楽しみにしておりましたが、それはまた次の機会に楽しみにしましょう。」

「マリクラス・・。君は。本当に・・・。」

「あらなんですの?私が性格悪くなったのは、全てクソくだらない貴族の争いに負けたからですわよ。」

「僕は性格悪いって言ってないけどね・・。なんで自分でバラしていくスタイル取るかなぁ??」

「ちょっ!さっきから失礼ですわよ!!ほらさっさと脱出する準備をなさりませ。

ちなみに私はいつでも大丈夫ですわよ!!変装もバッチリですわ!!」


私はいつもの二人のやり取りを聞いてくすくす笑ってしまった。

「本当に二人はここから抜け出せるの楽しみにしていたんだね?

でも二人ともいつでも抜け出せそうなのに・・なんで抜け出さなかったの??」

私の質問に二人は顔を見合わす。

「ちょうどいいかな?」

「ちょうどいいですわね・・。話す前にお茶の準備をしますわ。」

二人は深いため息をつきながら、私に話す前にマリクラスはお茶の準備をする。

そして一口飲んでから話し始める。


「あゆむは知らなくて当たり前ですが、この世界・・この場合は貴族や教団や王族を指しますが、魑魅魍魎の世界なんですのよ。王族は王になるための争いが王宮で王妃が子供を生まれた瞬間から始まりますし、あ!このはじまるというのは子供どころか王妃一族もろともを葬るという計画の始まりという意味ですわ。私たちが位置する上位貴族はどの王子を味方するかというところから始まり、王家に権力を蔓延らせるためにそりゃあ熾烈な争いが繰り広げられるんですの。私たち子供なんて道具にしかすぎませんわ。特に長男次男なんて、全ては家のためですし、次男以下の男子は長男次男がもし万が一無くなった時のスペアなんですの。まぁ・・。スペアといっても自由はありますね。長男と次男が生きていれば自由に生きていけますもの。上位貴族の次男以下は美味しいポジションですわね。まあ家が死ぬまでついて回りますが・・。

上位貴族の女性に生まれたなら、それはただ政略結婚の道具にしかすぎませんわ。

家の現状維持とより良い権力を家にもたらすための道具ですわね。だから必然的に上位貴族の血の繋がりは濃くなりますわね。そして上位貴族の娘たちにとって最高で最悪の婚約が王子との婚約ですわね。最高な理由。未来の王妃になれるんですもの。最悪な理由。もし王妃になれなければ、一族から見捨てられ、貴族からも冷たい視線を一生浴びる羽目になって、最終的に心が壊れて、療養という名目で僻地に捨てられてそこで一生を終える。それがイミドナの貴族ですわ。教団は、貴族王族とあっちやこっちについて、教団の寄付というお金を貪り尽くせるところまで貪り尽くす。

昔は教団もちゃんと機能していたらしいですけど、あの教皇が入ってから腐敗し尽くしてる感じですわね。バルダン教団の教えなんて今や貴族や市井の方たちも覚えてるからいないんじゃないのかしら??」


私はマリクラスから出てくる言葉をなんとか鵜呑みにしようと思ったけど、消化不良起こしそうになった。

つーか異世界でしょ?私が知ってる異世界貴族女子じゃない!!ねえ誰??シンデレラという全女子憧れの王道を作ったやつぅぅぅっっ!!とりあえずマリクラスに謝ってほしい。


マリクラスは喉が渇きましたわね。とお茶を一口飲む。

「で、やっと先ほどのあゆむの質問に答えられるのですが、貴族も王族も負けた人間は徹底的に潰すのです。潰さないといけない理由はもし万が一生きて、また力をつけてしまったら家が潰される可能性が出てくるんですのね。先ほどの話で検討つくかも知れませんが、貴族は自分の家を守るためになんでもします。私やユリグラドも何度も殺されそうになってますの。今は快適ですが、初期の方は本当に・・私たちよく生き延びましたわよねぇ・・。こんな状態でしたらどこ行っても私たちの命がすぐに潰えてしまします。ですからこの状態を打破しないといけなくって、まあ紆余曲折の末に暗殺に来る人間たちを味方にすることに成功しまして・・。そしてその味方になった暗殺者さんたちにあるお願いして、やっと脱出できるようになったのですわ。」


紆余曲折の末・・暗殺者を味方につけた・・とは?

味方になった暗殺者にあるお願いした・・とは??

貴族って・・王族って・・・・怖いよ泣


「あ!あるお願いに関してはあゆむは知らなくていいよ。あゆむはこんなに汚いものを知らなくていい。そういうのは僕たちに任せれば良いからさ。」

「あら?そんなの当たり前ですわ!!何せあゆむは聖女様なんですから・・。

こんな俗に触れてはいけませんわ。ただ、これから生きていく中でこういう俗の部分も必要になってきますもの。いくら市井で暮らすとはいえ・・。私たちは死ぬまで王族や貴族ですから・・。」


「そうそう。あの人たちに連絡したら、もうバッチリ住むところまで決めてるって!!明日から生活できるだってさ。」

「あらあら!さすがですわね。」

「今日でこの監禁生活おしまいかあ・・。長かったなあ・・。」

「長かったですわね。でも・あゆむが来てから毎日が楽しくて、これからも続くとなったら良いですわね。」

「だね。僕たちの生活を楽しむために、あゆむの夢の原因を取り除けるよう頑張るぞー!!」


ああ・・救われるなあ・・。

私、本当にこの二人と友達になって良かった。





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