聖女は予知夢を見る。(太刀川あゆむ視点)

なんで・・どうして??

どうして・・・こうなったの??

平和だったんじゃないの?

それがなんでこんなにイミドナの街に暴動が起こってるの?

人がなぜ?こんなにも死んでるの??

ねえ・・なんで?どうして??




あの子は誰?黒いフードを深く被ってるあの子。

一体何をやってるの?

なんでこんな森の奥深くにいるの?

その子はカゴに小さい魔物を何匹か入れていて

その魔物に注射をした。

なんの注射をしたの?

そしてあなたは何を森の地面に書いてるの?

フード越しの中であの子は何かを呟いてる。

何を呟いてるの・・。

「・・・・う・・・・あ

・・・・を・・・ころ・・・せ・・・・」

何を呟いてるのか知りたい。

「とうとう・・・あいつを殺せる時が来た。

ふふふ・・ふふ・・ふふふふ・・・。

我が一族の恨みを晴らしてやる・・。

たとえ犠牲が広がってもしょうがないよね・・・。」

その子は私の方に視線を向ける。

「ねえ・・。お姉ちゃん。」


待って!あなたは私の姿が見えないはず。だってこれは夢なんだから・・。


場面が転換する。


多数の騎士が魔物を討伐してる。

魔物の返り血を騎士を浴びる。

騎士たちは魔物討伐に慣れているみたいだ。

その慣れている様子に少し私はホッとする


それも束の間、騎士たちは続々倒れていく。

え?どういうこと??

騎士たちの顔を見てヒッと声を上げてしまった。

だって騎士の顔に黒い吹き出物ができていたのだ。

その吹き出物から膿が出てる。

これは・・・。



場面が転換する。


イミドナの街。

住人たちがみんな咳き込んで血を吐いて倒れてる。

顔に吹き出物ができて膿ができて、みんな倒れてる。

その住人たちをネズミが群がってる。

死体を食べてる。


街に絶望が広がっている中声をあげている人たちがいる。

「皆さん!!マスクをしてください!消毒をしっかりしてください!!」

「罹った人は隔離します!私たちが必ず治しますので!!」

「わたくしたちも治癒魔法術師たちを今集めておりますので、どうか皆さん、お気を確かにお持ちになってください。」

「僕たちの事を今は信じなくていい。だが助かるものを助けたいのだ!今はぼくは王族ではないが、どうか今だけは僕を・・いや僕たちを信じてくれないだろうか?』

あれ・・は・・私とショッピングスキルのお姉さん??

そしてマリクラスにユリグラド??

「聖女様。本当ですか?本当に私たちは助かるのですか??」

「馬鹿助かるはずねえだろうが!!何が聖女だ!!この偽物め!!」

私に縋りついた老女に一人の男が私に罵声を浴びせる。

そして手に持った私に石を投げる・・。

私は甘んじて受けようとするところを一人の騎士が私の前に立つ。

騎士さんは石を受け止める。

「馬鹿者!!今はこのお方たちの事を聞くのだ!!」

「しかしリーノ!!なんでこいつらは予防法を知ってるんだ?

そしてなんで今流行ってる病気を知ってるんだ??こいつらが今の病気を流行らした原因じゃねえのか??」

「それは!!違います!!!」

「ルカ!!あんたもこいつらの味方なのか?」

「お前は馬鹿か!!ルカはこの病気の便りを聞いた時俺たちに言ったよな?

『ねえ?おじさん。おばさん。今からいうことを信じられないかもしれないけど聞いてね。今から外に出る時はこのように口を覆う布を絶対にして外に出て、そして必ず石鹸で手を洗って、この液で手や周りを消毒して、人と話す時は必ず15分以内に終わらして、さらに人を並ばす時は私が今おじさんとおばさんと話してるくらいの距離をとって。そしてね、もしもしね・・咳がとまなくて熱が一気に高くなったら、すぐに部屋に閉じこもって誰にも会わないようにして、ご飯を食べるときも家族にあわないようにして・・。家族も二週間くらい家の中にいて絶対に人に会わないようにして・・。それでももしかしたら命がなくなるかもしれないけど、それでも治る人はちゃんと治るから。』俺たちはルカが言ったことをちゃんと信じて聞いた人が何人いる??ちゃんと聞いた人がこの病気にかかってないだろ?聞いてない人がかかって死んで行ってる?そりゃあ俺たちだって最初は信じなかったさ。でもな。母ちゃんがこの病気にかかった時に、俺は思い出したんだ。そしてルカがいう通りにしたよ。

二週間家を出るのがきつかったけどさ。そんな時タカハシ商会の人たちが食べ物や着替えとか必要物資を提供してくれたんだよ・・。そのおかげで母ちゃんは治ったんだよ。俺たちの命の恩人なんだよ!!ルカは!!それを勝手にお前らが信じなかった行いで、ここまで酷くなったんだろうがよ!!それを全部聖女やルカのせいにするんじゃねえ!!なあ頼むよ。これ以上ひどくならないために、聖女様やルカのいう事を聞いてくれ。信じてくれよ。頼む・・・頼むから・・・。」


待って!これは何??あのパンデミックと同じような・・ううん。

あれは人災じゃない。これは明らかにあの子が広めた人災。

あの子が魔物に注射をしたのはきっとこの疫病のもと。

なんで??なんでどうしてあの子はそんなことをしたの??



場面転換する。

バルダン教団の教皇室に一人の男が咳混みながらも女と寝屋を共にしていた。

「全くこんなの普通の風邪だろう?そんなものになんでみんな怖がっているんだ?

こんな時は神頼みなのに、この街のものはダメだなあ・・」

「・・コホコホ・・ええ・・。本当ですわね・・・。」

「・・・・っ!!馬鹿者おまえ!!おまえ!!私の前によくも咳をしたな!!」

男は女を殴りつける。強く殴ったのか女はぐったりをする。

冷ややかな目で男は女を蹴り上げる。

あいつだ!私たちを召喚した教皇だ。

そんな男のところに一人の人間が近寄ってくる。

「教皇様。お薬の時間です。どうぞお飲みください。」

「ああ。」

教皇は一人の人間が手渡した薬を飲む。

「お飲みになりましたね。教皇様。」

「ああ。しかしよくも・・・」

教皇は咳き込みながら血を出す。

吹き出物ができて膿ができる。

だが・・それだけではなかった。

教皇の体は徐々に膨らんでいき・・・・そして破裂した。


「疫病で死んでくれると思っていたのですが、この疫病予想外のことがあったみたいであなたにはあんまり効かなかったみたいですね。あなたを確実に殺すためにこの疫病を広めたのに、完璧に計算外でしたよ。ですから確実にあなたの息の根を止めるためにもう一段階の疫病を入れた薬をあなたに飲ませたんですよ・・・ようやく私たち一族の恨みを晴らせた。」


薬を渡した人間は扉を閉めて、破裂音を聞いてからそんな事を呟いた・・。



待って!!こいつを殺すために疫病を広めたの?

そしてスタンビートも起こしたの??

一族の恨みって何?

あなたはあのことなんの関係があるの?



「いやあああああああああああああああああああっっっっっっっっ」

私は叫び声をあげて目が覚めた。


私の声にマリクラスとユリグラドが駆け込んでくる。

「「あゆむ!!どうしたの??」」


私はマリクラスとユリグラドを見て、二人に駆け寄って抱きしめる。

「まあまあどうしたんですの??そんなに怖い夢を見たのですの??」

「あゆむもまだまだ子供だなあ・・。大丈夫だ。俺たちはずっといるよ」


怖い夢?違う!怖い夢で片付けることができない生々しさがあった。

「怖い夢・・・??

マリクラス。ユリグラド。どうしよう・・・。私・・・。」

二人は顔を見合わせていつものおちゃらけた表情を消した。

「どうしたんですの?あゆむ。わたくしとユリグラドがそばにいるから

ちゃんとおしゃって?一人で抱え込んだり絶対にしないで三人で考えましょう・・。」

マリクラスが私の手をそっと添えて真剣な目で言ってくれる。

ユリグラドも私を抱きしめてくれてる。

私はコクっとうなづいてさっき見た夢の内容を話した。









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