タカハシ異世界支店課発足

直人はイミドナ王国にタカハシを進出するためのプロジェクトを任されるようになった。


「にしても、先輩すごいっすね。本社だけじゃなくあらゆる支社から異世界行きが殺到していてますね。」

孝之と美恵が応募書類の合否を分けているのだが、数が多すぎて普段の仕事プラス採用の仕分けというのが加わって、連日三人とも残業をしているのだ。


直人も孝之も美恵も応募書類の多さに辟易しながら背筋を伸ばす。


「とりあえず、一人は決めたぞ!こいつだ!!」

直人は一人の応募書類を出す。


「えっと営業三課 長越悠馬・・。なんで営業三課なんすか??

海外とかなら営業一課の方が専門じゃないっすか??」

「いや。こいつの経歴見てみろ。」

孝之の質問に直人はパソコンを見せる。


アイビーリーグに進学してから、ソルボンヌ大学に留学。

そこから海外を放浪。

中国語。英語。フランス語。イタリア語。スペイン語。ポルトガル語。

を流暢に話す。

「うわぁ・・。マルチリンガルって本当にいるんすね。俺なんて日本語でさえ不自由なのに・・。」

「あんたの場合はそうよね。」

「うるせえ!お前だって大概俺と違わねえだろ?」

「え?ごめん。私韓国語なら喋られるよ?」

「は?」

「推し活で韓国語覚えたから。」

「は?」

孝之は違う!お前はこっち側だ!ってわけわからない事を喚いてるのを美恵はうるさいと頭を引っ叩く。


「それくらいにしとけー。さっさと人間を決めなくっちゃな。」

直人は二人のやり取りに苦笑いを浮かべながら、人を決めていく。



それから一週間後。


「それでは、タカハシ異世界課の発起会を開催しようと思います!」

おー!!と歓声が広がる。


「とりあえず、自己紹介でもするか。」


「俺がこの課の課長の片隅直人だ。タカハシはまず、イミドナ王国に出店をする。そこを足がかりにして、異世界の世界にタカハシのなを広めることにする。

何せ前例がない事だから、失敗もすることが多いが腐れずに頑張っていこう。」


「私は宮下美恵です。私は日本に残って、イミドナと日本のバックアップをしていきますので、よろしくお願いします。」


「俺は長坂孝之。俺はイミドナの方で日本とイミドナのバックアップをします。

要は俺と宮下は日本とイミドナの橋渡しだな。よろしく頼む。」


「初めまして、僕は長越悠馬って言います!まさか異世界に行けるなんて思っていなかったので嬉しいです。」

「悠馬くんには録音したイミドナの言葉を聴いてもらったけど、どうだいなんとかうまくいきそうか??」

「はい直人課長。最初はうん?と思っていたのですが、何度か聴いてるうちにわかってきました。」

「え?すご・・。私あの録音を聞いても全然わからなかったよ。」

「そうだよな・・。俺も。つーか。あっち行った時俺ら喋っていたの日本語だったのに、それで通じていたのに、なんでこっちに戻ってきて直人さんが録音したのを聞いたら全然わからない言葉になって驚いたもんな。」


直人はこの前行った時に実はスマホで録音をしていた。

イミドナでは普通に日本語を喋っていたのに違和感を感じていたからだ。

異世界で言語体系も違うはずなのに、なぜ日本語が通じるのだろう??

もしかしたら、異世界支店を出す前の最大のネックが言語かもしれない。

そして、そのネックを突破できそうだったのが、長越悠馬だった。

マルチリンガルのことも含めて、彼は言語学博士号をとっている秀才だったのだ。


「えっとイミドナの国の言葉は英語フランス語イタリア語に近いと思います。

この言語をミックスしてるような感じですね・・。そこに少しスラブの言葉が

入ってるような気がするんですよね。とりあえず訳してみたので、みてもらっていいですか??」

悠馬は直人に直人が録音したのを訳したのを見せる。


「はは・・すごいな。悠馬。ちゃんと訳されてる。だが、ここの部分がおかしいな。」

直人は可笑しい部分を指差す。

「うわぁ・やっぱりそこか。そこスラブの言葉が入ってるような気がしたんですよ。

ただ、そっち方面勉強していなくって、辞書を調べながらなんとか訳したのですが、

おかしかったですよね。」


「あのう・・。私がこの課にいてもいいんでしょうか??私なんも役に立てなさそう・・。」

おずおずと一人の女性が手をあげる。今まで存在感がなかったのだが声を上げることに一気に存在感がました。


「何を言ってるんですか?美里さんがいないとダメですよ!美里さんの能力はすごく高いのですから・・。どこでも紛れ込んで必要な情報を集めてくるのってすごいですよ。」

直人がすぐに反応してにこやかな笑みを女性に浮かべる。


「唐島さんが持ってくる情報はいつも助かってるっす。まじでいつも感謝してるっす。」

孝之が美里を見て親指をグッと立てる。


大きな会社になればなるほど、自分の会社の利益になるために必要な情報を集めてきたり、必要な人脈が必要になったりする。もしくは逆に相手の会社が不利益になるような事をリークしたりもする。

そういう情報や人脈を集めてくる人間がいたりするのだ。

それが唐沢美里の仕事だった。

メガネをかけて地味目の女性だが、タカハシ随一の情報収集力、人脈力がある。

会長推薦で、こっちに異動になった。


片隅直人、長坂孝之、宮下美恵、長越悠馬、唐島美里の五人がタカハシ異世界支店課の少数精鋭の初期メンバーとなった。

最初の一歩がうまくいくようになったら、またメンバーを募集する事に会長と副会長と話し合って決めた。


この五人がイミドナに支店を出すようになってから、イミドナ王国は変わっていくことになる。




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