第11話 高橋瑠花という女性について。(親友視点)

親友が行方不明になって、はや2年経った。

私、千早塁と親友の高橋瑠花が出会ったのは、小学生の頃。

その頃から、彼女は変わっていた子だった。

周りが校庭で元気よく遊んでいる中、図書館で本を読んでいるようなそんな子だった。


最初はわからなかったけど、彼女の家は裕福でありながらも子供には無関心なそんな家だった。瑠花の世話はパートの家政婦に任せ、保護者会とかも一回も出てこない親だった。

それをなんとなく察したうちの両親が家政婦が来ない日とかうちで過ごすように言うようになってから、だんだんと瑠花と私は親友というよりか姉妹になっていった。

同い年というなのに次第に役割みたいな感じが出てきた。

私も、瑠花と付き合うまで、こんなに自分がしっかりしてる姉御肌だとは思っていなかった。どちらかといえば、おっとりのんびりしてる人間だと思っていたのだ。


だが、瑠花という人間は目を離した瞬間。何かをやらかすのだ。

目を離した瞬間。転けたり、何かにぶつかったりするのは当たり前。

信号もよく見ないからか、赤なのに普通に歩こうとする。

口やかましく何度も注意をしても、治らなかった。


そんな彼女がファッションが好きになったのはいつの頃だろうか?

気がついたら、ファッション雑誌を買い漁り、自分でコラージュを作り、

いつか、こんな素敵な服を買うんだと目を輝かしながら行ったあの日のことを

今でも思い出す。


そんな彼女が、表参道で公衆の面前で行方不明になるという事件が起きた。

しかもこのご時世。動画を撮っていたということもあって、その動画が拡散されて、現代の神隠しって世間を賑わして、瑠花が勤めていた会社の人たちや、私たちにもマスコミが来たりしてしばらくは落ち着かなかった。

その過程で知ったのは瑠花が周りの人間に愛されていたということだ。

特に会社の人、過去のバイト先の友人数人と瑠花について語る会という、瑠花が行方不明になった原因について語ったり、行方不明前の瑠花の話をする会が定期的に開かれるようになったおかげで、私は親友の喪失感というのをそこまで感じられずにいたのだ。


今日。東京の居酒屋チェーン店に来ていた。

一週間前。たまたまピクスタ(写真投稿型SNS)を覗いていたら、瑠花のアカウントが投稿されていたのだ!

その投稿を見つけた瞬間。急いでグループラインでこの投稿をスクショして載せた。

その時の反応の飛びつき具合がすごくて、とりあえず、みんなで集まってこのことについて話そう。となって今に至る。


私が席に着いた瞬間。みんな待っていた。

瑠花の上司の片隅直人

瑠花の部下の宮下美恵、長坂孝之

瑠花のバイトの時の友人の伊藤大地と早坂みゆき

そして私の6人がメンバーだった。

「ごめんなさい。遅くなってしまって。」

「いえいえー。塁さんもお疲れ様です〜。あ!とりあえずカシスオレンジを頼んでおきましたよ。」

「え?ありがとうみゆきちゃん。」

「塁姉様。こちらに座ってくださーい。」

私を姉様と呼ぶのは宮下美恵だ。

「おい。それ俺の席だろ?」

「うっさい。むさい孝之より絶対にいい匂いがする塁姉様がいいの!ねえ。みゆきちゃんもそう思うよね?」

「おいおい・・。長坂くんもそんなこと言ったら可哀想だろう?」

「うーっ。でもですね!課長もルイ姉様が目の前の方がいいですよね?」

「それは・・・。認める。」

「なあ・・。みゆき・・直人先輩。」

「しっ。それは言ったらダメ。」

なんかみんなコソコソ言ってるけどなんだろう?

「直人さん。こんばんは。」

美恵ちゃんが言った席は直人さんの目の前だった。

「こんばんは。塁さん。」

私が席に着いた瞬間。ちょうど私の飲み物がついて、みんなで乾杯をする。

「「「「「「かんぱーーーーーーーい」」」」」」


「で、塁さん。あのアカウントって本当に瑠花さんのアカウントなんですか?」

居酒屋について、みんなの近況の話をしてしばらく落ち着いてから本題に入った。

「そうなのよ。あれからDMでやり取りをしていたのだけど、私たちしか知らないことを質問したの。私と瑠花の間でしか知らないことよ。それを言ったら間髪入れずに答えたのよ。」

「まじか!。そうだ俺からもなんすけど、ピクスタのあの画像。画像解析が得意な友人に頼んだんすけど、あれ。合成ではないと言ってました。今の技術ではあのような合成を作ることは不可能らしいっす。」

「え?ということは・・・。え?まじで異世界にいるのおーーーー」

「声が大きいですよ。美恵さん。しぃーーーーー。」

「あ!ごめん。みゆきちゃん。」

「なんか・・瑠花くんらしいなぁ・・。」

「いやいやいや・・。なに感心してるんですか?課長。瑠花先輩。異世界にいるんですよ??異世界ですよ!!」

「うーん。でもなぁ・・長坂くん。瑠花くん仕事以外色々としでかしているからなぁ・・。」

「いや。でも。ほらあれですよ。みなさん・・・。とりあえず瑠花さんは生きているからいいじゃないですか?」

「そうね。恋人もいるみたいだし。」

私の発言に、みんな一瞬シンとなる。

「は?え??なんで??なんで恋人いるんですかああああああ!!!」

「うっさい孝之!!あんた本当に瑠花さんと恋人になれると思っていたの?受けすぎなんですけどー。」

「うっせえよ。美恵。お前に言われる筋合いどこにもねえわ!」

「ほらほら二人とも喧嘩しない。全く君たちはお互いなんで顔を見合わせたらこうもいがみ合うかね??」

いや・・直人さん。これは歪みあってるんじゃ・・・。

美恵ちゃんほっとしてるんじゃないのかな?頑張れ美恵ちゃん。

私は心の中でエールを送った。

「で。どこのどいつなんですか?」

「きゃーーーーー!!うそ!!やばっっ!」

美恵ちゃんがスマホを覗き込んで叫んだ後、私たちにそれを見せた。

みんながガン見してその画像を見ている。

瑠花・・・。あんたなんていうイケメンを捕まえたのよ・・。

「孝之・・・あんたはじめから勝ち目ないじゃん。」

美恵ちゃん。あなたそんな追い打ちを言ったらダメよ。

「く・・・・くそがああああああああっっっっ。あ!お姉さん生一つ!!」

やけ酒を食らうのか孝之くん。

「やけ酒を食らってもいいけど、明日は大事な会議があるからね。」

「く・・・・。会社離れてるのに鬼上司がここにいる・・。」

「仕事外だから、鬼上司というのを聞かないことにしてあげよう。

明日の仕事が楽しみだなぁ・・。」

ニヤっと悪い笑みを浮かべる直人さん。でも目の奥がしょうがないなあって笑ってる。

「直人さんって本当にいい上司なんですね。」

「あ・・ありがとうございます。」

あれ?なんで直人さん顔が赤くなってるのかな??

お酒強いはずなのに・・もう酔っ払ったかな??

「そういえば、瑠花から申し訳ないけど、瑠花が借りている部屋を更新してもらうのと、部屋を掃除してくれないか?って言われていたんだっけ??美恵ちゃんもみゆきちゃんも行く??」

「「行きます!!」」

二人は手を合わせて喜んでる。

特にみゆきちゃんは今少しずつ売れてきてるモデルだから、瑠花のコレクションは気になっているだろう・・。

「俺たちも行きたいなあ・・・。」

直人さんの呟きに、大の大人が6人行っても狭いじゃないかと思っていたけど、何か私の直感が働いて、これはみんなで行った方がいいんじゃないか?って思ってついこう聞いていた。

「いいですね!!みんなでいきましょう。男性陣は瑠花のコレクションつまらないと思いますが、女性陣は喜びますよ。あの子の服にかける情熱は本物だから。」


まさか瑠花のアパートであんなことが起きるとはその時私たちはなんも知らなかった。



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