第7話。奇妙で不思議な女性。(カメリーノ視点)

俺は、今日ほど教会へ行くのが嫌だと思った日がなかった。

どうやら、教皇が聖女召喚の儀をするらしい。


しかし俺を含め、市井の人たちはわかってる。

どうせ、教皇は自分の力を誇示したいがための召喚だと。

確かに、今年の魔素は結構濃くなってる気がする。

だが、俺が所属する王立第二騎士団も、諸先輩方のデーターにより強くなっていってる。魔物の習性も、逐一データーを更新している。

その結果。聖女という存在がなくても、あらゆる魔物を駆逐できるまでになったのだ。


もう一つ。聖女は国のために癒しの力を使う。というのも、それだって今の平和の世の中では特に必要ないものだと思うのだ。

ただ。地方に行けば行くほどまだ”聖女”のありがたみが強いわけで・・。

きっと召喚された聖女は癒しの巡礼をするのだろう?

そして、教会は聖女を召喚し、聖女の力を民に見せつけることで、教会の寄付を募ろうという魂胆なのだろう。

はっきり言おう。教会の求心力はもう落ちている。

そして、国の力も徐々に落ちている。

そこから生まれる停滞感がこの国に蔓延する前に、聖女の力を使おうというわけなのだろう・・。


「はあ・・。本当この国はいつの間にこんな国になってしまったんだろう・・。」

俺の独り言のような呟きを隣に歩いている男はギョッとして見てる。

「お前。それ不敬になるからな。騎士団のお前がそれを言ったらダメだろ。

わかるけどよ。」

「ローランだって思っているじゃないか。」

俺の恨み言にローランは苦笑いする。

「お前は第二騎士団だけど、俺は第一騎士団なんだよ!!わかるだろ??

今回のとか、王族の護衛とか・・本当クソがって思いながらもやってるんだよ。お前も少しは大人になれよ。」

確かにローレンが所属する第一騎士団は王族や貴族、そして教皇や聖女を護衛する役割を持つ。

第二騎士団は魔物中心で、第三騎士団は市井を守るという役割がある。


そして、第一は貴族の子弟中心。第二は貴族の子弟と平民が半々。第3騎士団は平民が中心になってるのだ。

と言っても、最初に騎士団養成所に入って貴族も平民も関係なく訓練を受けて騎士という連帯感を養っていくので、自分が貴族だと偉そうにしている奴らは先生や先輩から地獄のようなお仕置きを受けることになる。

第一騎士団が一番ストレスたまるのは王族や貴族のわがままに耐えないといけないからだろう・・。

そんなことをローレンと話していたら召喚の儀の間についた。



まさか。そんなことが起こるなんて・・。

聖女は二人なのか??

「二人とも気を失ってるな・・。よし今のうちにスキル鑑定するぞ。」

なんで目覚めないうちにスキル鑑定をするんだ?目が覚めたらでいいだろう??

「おおー!!一人が聖魔法のスキルがあるぞ。そして一人がショッピング??

なんだそれは。まあいい聖女が召喚されただけ儲けもんだ。こっちの女は

適当に捨ておけ。」

なるほど、気を失ってるうちにどれが聖女かあるいは二人とも聖女じゃないかを調べたかったんだな。


なんだ??もう一人のショッピングのスキルの女性に対して酷い扱いだな。

それから教皇はショッピングというスキルが出た女性に対して失礼千万な態度を示したあと、俺が指名され、その女性に説明することになった。

あまりにも教皇の態度が酷すぎて、騎士の一人として自分だけはその女性に誠意になろうと思って、この国のことに対して説明を始めた。


元々この国では見られない、この王族でも着ることができない素材の服を着ていて、靴もこの国では見たこともない靴の踵に小枝が刺さっているのか?と思うような奇妙な靴を履いていたりと、奇妙で不思議な女性というのが俺の印象だった。

だが、話していくうちに、彼女の賢さが見えて、だんだんと好印象になっていった。そして、彼女の前向きさに惹かれていった。ただ、このまちでルカ様が一人で生活するということに漠然な不安が残った。話をしているうちに不安げな表情から、ここで生きていくという表情に映っていくのを見ていたら、彼女は一人でも生きていける女性だと思う。それでも不安だった俺は生活に慣れるまで一緒に暮らさないか?と提案した。

おいおい!!馬鹿か!!出会って1時間に満たない女性に対して、なんてことを言うんだ俺は!!

彼女はそんな俺の気持ちを知ってか知らずか、素直に受け入れてくれた。

そして、そのままうちに連れていって、部屋の汚さとか自分の生活能力の無さを露呈したり、まあ・・俺は色々としでかしてしまったのだ。

そして、俺はこの街に溶け込んだ、庶民だと自負していたのだが、、まだまだだと痛感したのだ。この街に来て数時間の彼女に逆に教わるという・・。

そして、古着屋さんにしろ、野菜屋さんも肉屋さんも彼女は店主とどんどん仲良くなっていってる。

うん?彼女は本当にこの街に来て数時間の人なのだろうか??溶け込むの早くないか??

少しはカッコつけたかったが、もうここまで来たらカッコつけることは野暮だなと諦めた。


彼女が俺のことをリーノさんと呼んでくるたびに、愛しさが込み上げてくるのだが、それはなぜなのか??保護欲がそそられてるということなのだろうか??


そして、彼女のスキル。ショッピングとは買い物という意味らしい。

買い物がスキルとは変わってるな。と思っていたのだが、彼女からスキルの説明を受けているうちに、俺はとんでもない人と一緒に住むことになってしまったのではないか?と思ったのだ。まさか、あれほどまでに精密な地図を持っているとは、スマホとやらも地図とやらもこの世界では機密事項だぞ・・。

しかし、スマホの問題はあっけなく解決した。彼女のスキルの力のおかげで。

おいおい・・こんなスキルみたことないぞ。どうなってるんだ??


俺はもう・・この人を本気で守らないといけなくなってしまった。

彼女は俺と暮らすことはどんな気持ちを持っているだろうか??

彼女の手料理の夕ご飯を食べた時、俺は完璧に胃袋が捕まってしまった。

がっちり掴まれてしまった。

野菜のスープがこんなに美味しいとは??

今まで食べた野菜はなんだったんだ??

そして、彼女はスキルのおかげなのかどうか知らないが、食材の目利きでもあるみたいなのだ。はっきり言ってボークの肉やピッフの肉があんなに上手いとも知らなかった。肉は全般的に好きだし、色々な味付けを食べてきたが、ルカさんが作ってくれたものほど美味しいものはないって断言できる。


彼女はその後、食後のお茶も出してくれた。そのお茶も美味しかった。

今まで飲んでいたお茶はなんだったんだろう??

数時間前。教会に行くのが散々嫌がっていたが、ルカさんに出会えたことは

俺が生きていた中で一番の奇跡ではないのだろうか??

少しは教会に寄付をしてやろうか??幹部の私服を肥やすだけだから、寄付はしたくないのだが、彼女に出会えた奇跡に関しての寄付はしてもいい。


そして俺は確信した。彼女を嫁にしないと俺はその先生きていけないって。

さあ・・どうしよう。俺は自他共に見惚れる恋愛音痴だ。

彼女をどう落としていけばいいのだろうか??

そういう時神頼みするべきだろうか??

教えてくれないか?神様・・。









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