第2話状況説明をしてください。

部屋は壁紙がモリス柄っぽくなっていて、それに合わせてアンティーク調の家具が品よく揃えられていて、落ち着く空間になってる。

私はソファーに座って部屋の中から見える外の風景を眺めていた。

「お茶を入れますのでしばらくお待ちください。」

そういってカメリーノさんはお茶の準備をして向かいの席にすわる。


「まず。説明する前にこの度のことを謝らせてください。」

そういって、カメリーノさんが頭をさげる。

「いえ。頭を上げてください。カメリーノさんが悪いことなんてないではないですか。悪いのはあの人であって、あなたが謝ることなんてありませんよ。」

カメリーノさんはそういってほっとしてるようだ。

そりゃあそうだ。カメリーノさんがわるいことなんてしてない。


「それでは説明させていただきますね・・・。」


転移した国はイミドナ王国と言う国。国教はバンデル教団

世界は平和が一応保たれているが、魔素というものが存在していること。

魔素から生まれるのが魔物であり、国を脅かしている存在であること。

聖女は魔素を癒す力と国に癒しを与える存在であること。

そして、数十年から数百年に一度の割合で聖女が一人も生まれなくなる年があり、そういう年はバンデル教の儀式のみ、この世界へ聖女を呼ぶことができるということ。

そして、聖女召喚の儀式を行えるのは教団の最高責任者である教皇が責任を持って召喚され、聖女は必ず一人召喚されるということ。

聖女は教会が匿うことになり、癒しの巡礼の時以外は教会の中で過ごすことになるらしい。


じゃあ。あの子ほぼずっと教会に軟禁されてるようなものじゃない?ありえない。

私はほとんど身の上も知らないあの子のことが、気になっていた。

だって、JKだよ??恋もしていただろうし、友達ともたくさん笑い合っていただろうし、甘いことも苦いことも苦しいこともこれからたくさん経験していくんだっていう一番楽しくってそして辛い時期じゃない?そんな時期にほぼ教会で軟禁生活?ありえないでしょ!!

「ルカ様は自分のことよりも聖女様のことを心配されるのですか?」

カメリーノさんはそんなことを言ってるけど、優しくはないと思う。正直私はいきなり聖女って言われて、召喚されて有無を言わさず教会へ連れて行かれて、軟禁生活を送りますがいいですよね?っていう急に有無を言わさずに自由を奪われた方の怒りが強いと思う。

それに、一気にこの数時間の間に色々とありすぎて、気持ちが全然追いついていなかったけど、カメリーノさんのお茶を飲んで、一息ついたら少し客観的になれたというのもある。

「ルカ様はご自分の心配をされた方がいいと思います。」

そう言ってカメリーノさんは少し私のことを厳しめな視線でまた話し始めた。


「まず。ルカ様の服装ですが、この世界であなた様が着るような服や素材はありません。もちろんあなた様が履いている靴もです。あなた様が持ってるチェーンバッグ、何かしらの金属を使っていますよね?金属を使うというのありますが、バッグの小物に使うなんて聞いたことがありません。それに身につけてるものがどれもこれも王族でも着ないような一級品ばかり・・はっきり言ってこのまま外に出たら身ぐるみ剥がされてしまいます。それにあなたが持ってる四角い形状のものはなんですか?」

カメリーノさんの話を聞いていて、改めて私は異世界に来たんだなって思った。

私と聖女は日本という国に生まれたということ、私が身につけているものはそれなりの値段がするっていうこと。今自分が身につけてる総額を話したら目の玉が飛び出るくらいの顔をしていた・・

「ルカ様は日本という国で貴族だったのですか?」

「いいえ。一般庶民でしたよ。うーん。人様に比べるとお洋服やお買い物が大好きだけで・・」

むしろお洋服やお買い物にお金を使いたいがために日々の生活は切り詰めていたと言っても過言ではないかもしれない。

学生の時は家賃三万のボロアパートに住んでいたけれど、社会人の時にそこに住むのは世間体が悪くて見栄を張って6万にしたけれど、それを親友に言ったらあんたの見栄の張り方おかしいって冷静に言われたことあったっけ?

あの六万のアパートは私が探していた部屋の中でクローゼットが広かったから悔いはないし、周りもすごく住みやすかったのよねぇ・・。


一般庶民ということにカメリーノさんは驚いていたなあ。

スマホのことを話していたらますます頭を抱えてしまった・・・。


「あのう・・ルカ様。もしよろしければ私が住んでいるところで一緒に住んで

生活に慣れていきませんか?今あなたを放り出すのはすごく心配だ。」

私は考えもしないでその提案を受けてしまった。

私が先行き不安というのもあるけど、話しているうちにカメリーノさんの人の良さというのが垣間見えていた。

間違いなくこの人はいい人。で、いい人すぎて恋人がいない人という認定を勝手にしてしまったのだ。

そして、私は後々この選択が間違っていなかったと思い知る。



「あ!そうだ。」

異世界につきもののアレを急に聞いてみたくなった。

異世界だからあるとは限らないアレ。スキルのことを。

「私のスキルってなんですか?」

カメリーノさんはそれを聞いて一瞬悲しげな顔になった。

え?なんでそんな顔をするの??そんなに悪いスキルだったの??

「すみません。まずそれをいうのが先でしたね。申し訳ありませんでした。」

カメリーノさんが頭を下げる。

「ルカ様のスキルはショッピングでした。」

え?は??ショッピング!!スキルがショッピング!!!

何それ??私にうってつけのスキルじゃない??

「教皇もその場にいた人もショッピングという言葉がわからず、ハズレスキルだとわかって、あのような態度を取られたのかと・・。」

カメリーノさんは本当に申し訳なさそうな顔をする。

いい人すぎるでしょ。あなたはなんも悪くないんだから。


だがしかし。ただでさえバルダン教団の印象が悪いのにさらに悪くなったわ。

教皇ぶん殴りたい!!






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