第17話
「瑠果! 話があるんだけど!」
や、やばい。緊張して声が大きくなってしまった。
クラス中の視線が私に集まる。お願いだから見ないでー!!
「……はあ、やっとか。待ちすぎて気がおかしくなるかと思った」
一気に視線を浴びたことで顔に熱が集まり慌てていると、瑠果が何かを呟いてこちらに近付いてきた。
どこか呆れたような顔だ。
や、やっぱり嫌がられたかな。でも良かった、無視はされなかった。
立ち上がった私の前まで瑠果が来て、身が強張る。
視界の端では委員長が心底安堵した顔で両手を合わせていた。
「話って何?」
「こ、ここじゃちょっと……」
「じゃあこっち来て」
さすがに視線が集まる中話し始める勇気がなくてモジモジしていると、瑠果が私の手を取って歩き出した。
「ひゅー! 頑張れ!」
「ちょっとマキ!」
マキちゃんの応援と委員長の咎める声を背に教室を出る。
連れてこられたのはよくお昼を食べていた中庭だった。
「……それで話って?」
「うん……私なりに考えたんだけど……」
真正面に立つ瑠果のことを直視はできず、両手の指を絡ませながら話し始める。
あああ……やっぱり恥ずかしいいい。
「今までは、瑠果が隣にいることが当たり前で、瑠果から好意を向けられることにも慣れきってたの」
「うん」
「瑠果が所構わずグイグイ来るから、それが嫌で……諦めてほしくて……」
「うん」
「でも、瑠果に笑いかけてもらえなくなって、話すことが減って、ようやく気付いた。……私は、瑠果と一緒にいたい! 前みたいに遊びたいし、他愛ない話で笑いたい! だって瑠果が……好きだから!!」
「……ッ!」
バッと顔を上げて、瑠果の目を真っ直ぐ見る。
そこにはただでさえ大きい瞳を更に膨らませた瑠果が私をじっと見ていた。
はあ、やった……!
ようやく言えた……!!
よし、あともうひと頑張りだ! 最後の一言を言って、私はやり切る……!
と、その時。
「梨紗……、俺も……!」
どことなく嬉しそうな瑠果の声と、
「だから、これからもずっと仲良くしてほしい!」
私の真剣味を帯びた声が……、重なった。
「……は?」
遅れて瑠果のすっとぼけた声が聞こえる。
何故か不機嫌そうだけど、私は言いたいことが言えて大満足だ。
「そういうことだから!」
「……ねえ、」
「勝手なことだと思うけど、私は瑠果と一緒にいたい!」
「ちょっと、」
「もう我が儘言わないから……!」
「……梨紗!!」
「えっ!?」
一度開いた口はなかなか閉じようとしない。
瑠果のことなんかお構いなく言いたいことを大放出していたら、キリリとした顔の瑠果に両腕を掴まれて視線を合わせられた。
いきなりの至近距離に飛び上がりそうになるも、ガッチリ固定されているため身動きできない。
綺麗な形をした唇が、呆れたように息を吐く。
「あのさ、流れ的に『付き合って』って言われると思ってたんだけど?」
「え?」
「なのに『仲良くしたい』?『一緒にいたい』? それだけ? 意味わかんないんだけど」
「えーっと……」
ビシビシと厳しい視線が注がれる。
意味わからないと言われましても……私の望みは今まで通り瑠果と仲良くしたいだけだったからなぁ。
「梨紗……俺のこと、恋愛的な意味で好きなんじゃないの?」
「……ええっ!?」
想定していなかった瑠果の反応になんて言ったらいいか困っていたら、それを上回る奇想天外なことを言われ驚く。
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