第12話
『私のことが好きじゃない』
その言葉が、ストンと胸に落ちる。
瑠果から直接聞くまでもなかった。
これだけ行動に如実に表れているんだから。
なんだ、良かったじゃない。
ようやく私のことを諦めてくれたんだから。
昔から唯一聞いてくれなかったお願いを、ようやく聞いてくれたんだ。
いや……この場合は『諦めた』というより、ただ私に冷めただけか。
きっと我が儘すぎたんだ。
私が『不良がいい』なんて言っておきながら、『不良はやめろ』なんて反対なことを言って。
今までも瑠果を呆れさせるためにコロコロ意見を変えてたけど、ついに嫌気がさしたのね。
不良をやめるついでに私を好きなこともやめたのだ。
まあ、どっちにしろこれでもう私に付き纏うことはなくなるわけだ。
私のことが好きな瑠果ではなく、ただの幼馴染の瑠果。
……じゃあ、もう一緒にいることもなくなるのかな。
今までは学校がある日も休日も、瑠果が誘うから一緒にいた。
勿論予定がある日は断っていたけど、暇な日はほとんど瑠果と一緒だった。
だって、瑠果のことは人として好きだったから。
男として見たことは一度もないけど、瑠果と一緒に過ごす時間はなんだかんだ楽しかった。
今考えれば、付き合う気がないのなら瑠果のことを徹底的に避ければ良かったのに。
ズルい私は瑠果を拒み切れなかった。
……でも、私のことが好きじゃないならもう瑠果から誘うことはなくなるだろう。
幼馴染だからって理由だけで、一緒にいる必要はないのだから。
「は、羽咲さん? 顔色悪いけど大丈夫……?」
「え、えっと……今日は私達とご飯食べない?」
「いいねそれ! ずっと羽咲さんとゆっくり喋ってみたかったんだ~」
「うん……大丈夫……ありがとう……」
みんなの気遣いが心に沁みる……。
だけど、その日のお昼ご飯は食べた気がしなかった。
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