第11話
結局、授業中もモヤモヤと気になって全く集中できなかった。
休み時間だって今までは毎回私の席に来てたのに、今日は一度も来ないし。
……こんなことは初めてだ。
いつまでも悩んでいるのが無理な性格の私は、直接本人に聞いてみようと考えた。
さすがにお昼ご飯のお誘いは断らないでしょう。今まで一度も私の誘いを拒んだことないし。
そう考えて、チャイムが鳴ると同時に瑠果の席へ行く。
「瑠果、お昼一緒に食べよう? 今日は天気も良いし中庭とか――」
「ごめん」
……だけど、瑠果の口から発せられたのは否定の言葉で。
反射的に、その続きは聞きたくないと思ってしまった。
「ちょっと用事があるんだよね。一緒に食べるのは無理かな」
申し訳なさそうに私を見る瑠果。
……でも、その瞳から何を考えているかは読み取れない。
本当に用事があるの? 私を避けるための嘘じゃなくて?
どうしてもそう疑ってしまうけど、これを今この場で聞くのは違うと思う。
だから、次のお誘いをしようと口を開いた。
「わかった。じゃあ一緒に帰るのは?」
今まで、何があっても一緒に下校していた私達。家の方向が一緒なので、拒む理由もなかった。
瑠果はなんの部活にも入っていないし、用事なんて理由は使えないだろう――
だけど、そう思っていた私の予想は、見事打ち砕かれた。
「実は、今日からサッカー部に体験入部しようと思うんだよね」
「えっ……」
「前から梨紗、『何か部活入れば?』って言ってたでしょ? ちょっと考えてみようと思って」
「それはそうだけど……なんでいきなり……」
確かに、前からそんなことを言っていた。
折角運動神経が良いのに、私と一緒に帰りたいからという理由だけで帰宅部なのは勿体無いと思ったから。
でもさすがに本人が嫌がることを無理矢理やらせるわけにもいかないので、最近はめっきり言うことはなくなっていた。
……なのに、なんでこのタイミングで入ろうと思ったわけ?
よりにもよって、私が誘ったこの日に?
明日から始めたっていいはずなのに、瑠果の言い方は確定事項のようで、暗に今日一緒に帰れないと断っている。
今日一日私を避けといて、挙げ句の果てにこの仕打ち……?
「いつまでも梨紗にべったりじゃいけないと思って。だからもう、梨紗のために行動するのは辞めるね」
「……ッ」
そう言ってすぐに教室を出ていってしまった瑠果。
もうそこに瑠果はいないのに、ドアを呆然と眺めてしまう。
……そっか、やっとわかった。
瑠果の今までとは違う行動理由。
答えは至って単純明快だったんだ。
瑠果はもう――私のことが好きじゃない。
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