第3話
翌朝、家を出ると瑠果の姿は見当たらなかった。
少し驚いたのと同時に、私は歓喜に打ち震える。
こ、これは……ついに! ついに!
私のことを諦めてくれた!?
そりゃそうよね、今までずっと王子様やっていた瑠果が不良になんてなれるわけないもの。
潔く諦めてくれたようだ。それか無理難題を言い続ける私にようやく愛想を尽かしたか。
昨日の放課後、私を家に送り届けてくれた後『ちょっと用事があるから』と何処かへ行ってしまったけど、もしかしたら他の女の子に会いに行ったのかもしれない。
私なんかより性格の良い子はごまんといるはずだから。
学校に着いても瑠果はいなかった。
なんだ、てっきり私のことを置いて先に登校しているものだと思ったけど、まだいないのか。
でも私はいつもの如く登校時間ギリギリだから、これ以上遅くなると遅刻になるんだけどな。
瑠果には珍しく寝坊しちゃったとか? それとも、何か事故に巻き込まれたとか……。
い、いや、……まさかね。
瑠果に限ってそんなこと……。
だけど先生に聞いても瑠果から連絡はないって言うし、こんなこと初めてでみんなパニックになってるし。
「は、羽咲さん……三波くんどうしたの? まだ姿が見えないんだけど……」
「いつも一緒に登校してるのに今日はなんで違うの?」
「まっまさか事故とか!」
「そ、そんな! あの完璧なお姿を見れなくなるなんて!」
「見ただけで心が浄化されるのに!」
「我々の癒しがああぁああああ」
うん、パニックなりすぎ。
まだ事故と決まったわけじゃないんだけど。
なんかこうも周りが騒いでると逆に冷静になってくるな。
どうせ寝坊でしょ。それかサボりか。
ふっ……サボりなんて不良みたいなこと瑠果がしたらそれこそパニックになっちゃうかしらね。主に教師陣が。
……ん? 私今なんて?
呆れ笑いを溢したところで、一つ重大なことを忘れていたことに気付く。
“不良みたいなこと”……確かに連絡もなしに学校に来ないなんて、普通は不良がすることだ。
私含めみんなはあまりにもない可能性に消去法で事故だと勘違いしちゃったけど……
私は昨日とんでもないことを言ってしまっている。
『私、不良と付き合ってみたい』
ま、まさか……
まさか――
ガララ! と、私の思考を遮るように教室の扉が開け放たれた。
パニックに陥っていた教室内も静まり返ってそちらを見る。
そこに立っていたのは……
「あ? 何見てんだぶっ殺すぞ」
燃えるような真っ赤な髪をした、間違いなくこの学校で一番美しい顔だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます