石見純インタビュー記事(2/2)

――石見純いしみじゅんインタビュー後エッセイ「スケッチブック」

 インタビューの書き起こしを読んでみると、なにがなんだか自分で分からない。この週間光線という雑誌の行う、怪獣害十年のまとめ役が僕で良かったのだろうか。とやっぱりインタビュー前と同じことを思った。

 文中ぶんちゅうの通り、僕は怪獣害の影響をあまり受けていない。多くの創作者があの経験の影響で、筆を折るなり狂ったように筆を運んだりしたわけだが、僕はそういうものではない。しかもシン・阪神間モダニズムにも属すわけではないし、文壇ぶんだんからもそう受け取られている。

 少し昔ばなしをしよう。――僕は二〇一三年の十一月二十九日の昼三時、大学の前にある、昔ながらという形容詞が似合うラーメン屋で、Aセットを頼んで、テレビを見ていた。Aセットは味噌ラーメンとチャーハンで、液晶のサイズが二十四インチだったことだけ、妙に頭に残っている。

 僕はあの災害の最中、インターネットにへばりついていた。カラスにしか見えない八十メートルのバケモノに名前をつけるという呑気なスレッドで、僕はガメラのパロディとして聖書の一節から名前を提案したが、採用する人はポツリとしかいなかった。

 僕は、あのガララを画面の中でしか知らない。そしてその画面の中のガララは、特撮映画のようでしかなかった。ガララが羽ばたいてビルのガラスが割れ、飛び散るシーン。生中継中のヘリコプターをついばむシーン。自衛隊のF-2が二機墜落したニュースを読んだときもそうだ。現実感は一切なかった。

――僕はこのインタビューを終えてから、昨年上野の博物館跡地に出来た、怪獣害資料館へと足を運んだ。くちばしによって部屋一つ分ほどの穴をあけられたビルの写真や、災害直後の空撮、当時のSNSのログなど、様々なものがあるのだが、ひときわ僕の目を引いたのは、一枚のスケッチだった。そこには、ガララの顔が描いてある。目が大きく、赤黒く光って描かれていて、目があった瞬間に死について考えざるを得ない気迫がある。そしてそのガララの瞳より赤黒いものが右下にこびりついている。血痕けっこんだ。

 僕はこの無名の画家に、無数の敬意と恐ろしさを感じた。――そうしてそれが今も続いている。僕はそれしか言うことができない。


【コメント欄】


匿名:災害の当事者じゃない人を出すなんて、どうかしてる。


匿名:石見純さん、今回は関係なさ過ぎてしゃべりがダメ。


匿名:第三者が総合的に論じたようにしたかったんだろうけど、失敗した感が否めない。


匿名:こういう人が語る怪獣害も面白い!


匿名:石見純、遅筆ちひつなくせに三流雑誌に小遣い稼ぎのために出るんだ(呆れ)


匿名:東大生が元気ないってのには同意!


匿名:純真教G《じゅんしんきょうジー》信者の石見(笑)。ガララは正義の怪獣だと【世界の真実】は書いてあるのに、それを必死に否定しようとするの、工作員しぐさスゴイ。マスゴミもここまで腐ったか・・・


匿名:個人的には、石見の怪獣害色が薄かった理由がわかって少し面白かった。


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東京怪獣害から十年 笠井 野里 @good-kura

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