厭世
容姿、性格、学歴、数値、常識。
なるほど、あなた方が重んじるは表面か。
例えば野外で渇きを覚え、ようやっと見つけた澄んだ川。その水面に通りすがりの端麗な異性が映り込めば、急いで振り返り、乾ききった舌で口説きはじめるというような事か。
是非そのままミイラと化すがいい。もっとも知性はとうに干からびているようだが。
そも表面を重んじるというからして矛盾している。
形式を見るなら、なぜ結果を見ない。
健康、データ、経験、現状、感情。
なるほど、あなた方は結果を重視していたのか。
スコップで金銀財宝を掘り当てたなら、あなた方はそれらを掻き分けさらにその真下へと進んで行くことだろう。そのうち奈落に落ちるとしても。
自らの尾を追いかけ回る犬よ。それが達せられたならおめでたい、喜びを存分に噛みしめるといい。
結果を見るなら、なぜ原因を見ない。
科学、化学、宗教。
なるほど、あなた方の中にも知性のある者がいるらしい。
あなた方は目を開けて光を見た。それを解析し、源まで辿り着いた。しかしその光の先は見れない、又は無いと言う。
皮肉なことに光で盲いている。見るから見れない。
或るいは視界を限定的な光で覆われている。たった一筋の光を解き明かしたところで何になるというのだ。
それらは探求ではない。単に偏屈で頑固で狭量なだけだ。其方に他は見えまい。しかしこの盲人が世間では持て囃される。「神のみぞ知る」のほかに、ここのところでは「専門家のみぞ知る」という考えもあるらしい。
中途半端な機能とは実に難儀なものだ。
原因を見るなら、なぜ本質を見ない。
もとよりあなた方は何も見ようとはしていない。
ただ言われるがままに考えなしに家畜のように世間に従う。丸々肥えたそいつらを、さらに醜く太った豚とも鰐ともつかない連中が食い散らかすのだ。いや、あなた方はみんなが家畜でありまた捕食者でもあった。常に同類どうしでその肉を貪り合っている。あまりに世の中は脂まみれなので、つい文章を書く手も滑るというもの。全くもって筆舌に尽くしがたい。
目先の歓楽に虫みたく群がるあなた方。悦楽にカバの如く浸るあなた方。言動を起こすとき、飢えている自身に気付けないのか。だとすれば虫だ。いざ快楽を貪ろうという時、涎を垂らしながら牙を剥きだしにやけている自分に気付けないか。だとすれば、いや気付いたとしても獣か。ではあなた方を獣と区別する方法を是非ご教授願いたい。
真実、本質を探究する。見えないものを見ようとする。これらをしないあなた方。ああ、でもそれは仕方ない。何故ならこれらは人間の営みであるから。
形式を見るなら、結果を見ない。結果を見るなら、原因を見ない。原因を見るなら、本質を見ない。何も見ようとはしない。
これはなんだ。四顛倒とはまた違ったか。であれば頭の内と外が反転でもしたか。その様、さぞ醜いことだろう。どうにか元に戻るまで、人目に触れず独り過ごすといい。途中、治ったなどと勘違いして、ましてや人と関わるなんて事がないよう気を付けろ。そんな事をしたからには貴様の脳と髪と頭蓋とがこんがらがるぞ。
しかし、これを聞いても改めはしまい。貴様らはもう既にぐちゃぐちゃだ。なに、体形には気を付け、礼節を弁え、常識に沿っているって?それはわざと道化を演じているのか。愚かはまた愚かさをも喰らう。実際に貴様ら、その愚かさを以って自らを肯定してはいまいか。やれ自分は弱いだの、ましてや弱いから人間だの。何も無い者よりは良いと。いや、自身を肯定することそのものが素晴らしいって?嗚呼、もう少し摂生してはいただけないだろうか。貴様らの膨らんだ贅肉で視界が埋まる。というか目をつむりたくなる。互いに心身を圧迫しあうくらいなら、慎ましやかでも快適な方がよくはないか。貴様ら太りすぎてうまく動けていないではないか。なにより魂が窮屈しているぞ。魄は底なし。満たすことは叶わない。ゆえに膨らむは絶望。他害即ち自傷。目に見えなくとも己の魂はひどく傷ついている。貴様らは利他どころか、もはや利己ですらない。
化け物の巣食う世の中が、私には見えている。
そうでなくともいい 海乃 翔流(ウミノ カケル) @kakuyo---
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