第9話 芸人としてのプライド
峰本は個人的に特定の衣装で露出する芸人は、一発屋で終わることが多いと考えていた。
一発屋にすらなれない芸人の端くれが、一発屋になりたくないとゴネるのは恥ずかしい。一発屋になってしまう!という被害妄想の中で暴れている子羊のようである。しかし、空斎のポテンシャルを鑑みると、どうにも琵琶法師のイメージを付けて売り出すことが、正解とは思えないのである。
自分が紙芝居を持つだけの役になるのも、パペット人形を使うのもやぶさかではない。腹踊りだって、大道芸だってやってのける。自分の恥なんて、この際どうでもいい。
でも、空斎は違う。どうすれば空斎の類まれなるボケを世に送り届けられるか、見る人を柔らかくする笑いを伝えられるか…空斎の世界観を大切にしていきたいと思うのであった。
しかも、これまでお笑いコンビ鎌倉時代を一緒に盛り上げてくれたファンのことも思うと、M-1のために芸風を変えるのは忍びない。
漫才コンビ「鎌倉時代」として、二人で完成させるコントを考えなければならない。悩む峰本とは対照的に、空斎は教育テレビに見入っている。
峰本は空斎がどこから来たのか、その話をネタにはできないかと考え始めた。
自分がツッコミをやろう。
ショートコント「タイムトラベル」誕生の瞬間だった――。
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