第24話 聖夜
こっちの世界の暦は、俺の世界とよく似ている。偶然なのか、起源になんらかの関連があるのかはわからないが、ひと月三十日が十二か月あり、それで一年と数えている。そして真冬の一番寒い時期から一月、二月と数えている。
まあこれだと、一年が五日くらい少ないか。微妙に早く歳をとりそうだな。
俺達が王都に着いて早四か月弱。年末が近づき、王都も俺達の世界のように何となくざわついている。そんな中、あごひげさんのキャラバンが、トクラ村へ向け出発する日が迫っており、俺とプルーンはキャラバン出発直近の訓練休暇日の朝早く、ユーレール商会を訪れた。
「すいません。出発当日は訓練を抜けられなくてお見送りは出来ませんが、くれぐれも
俺はあごひげさんに、俺とプルーンの近況を書いた手紙を預かってもらった。もちろん、星さんとメロン宛てだけではなく、里長やオキアなど村の人たちにも手紙を書いた。
先日の話からあごひげさんはまだ何も言ってこないが、俺の軍勤務の見通しがいまだ不透明で、
逆にプルーンは、なんと、稀にみる成績優秀者という事で、すでに軍の正規採用試験に合格しており、年明けから王宮の近衛隊配属になるらしい。
まあ、最初は下っ端だろうが、これなら俺がたとえ落第で除隊になっても、里長は文句言わないよな?
だが、近衛勤務となると、宿舎も王宮敷地内となり、いままでのようにホイホイ会えなくなるのがちょっと気がかりではある。
ともあれ、後八か月もしたら、二人が王都にくるのだ。それまでにちゃんと生活の準備をしておかないとな。そう思っていたら、あごひげさんが俺に話かけてきた。
「ゆうたさん。あなたの軍勤務の件、名前は言えませんが私の知己の方にちょっと相談しています。何かある様ならフマリから連絡をさせますので、今少しお待ちください。あっ、ですがくれぐれも訓練を適当に流して落第するのはやめておいて下さいね。それだと村のダメージが大きいようです」
はは、わざとではなく、頑張らないと本当に落第しそうなのだが……。
脇を見たら懐かしい顔があった。
「シャーリンさーん」
俺が手を振ったのがわかったようで、向こうからこっちに近づいてきた。
「よお、ゆうた。元気そうだな。軍生活はどうだ?」
「あはは、シャーリンさんに鍛えていただいたおかげで訓練はいいんですが、学科が……」
「そうか。それじゃ、落第したら私と傭兵コンビでも組むか?
私も、おまえのつがいでいいぞ」
「えっ? えー!」
「ははは、冗談だ。今のは笑うところだぞ」
「はは。あっ、そうだシャーリンさん。今日は絶対シャーリンさんに会わなくちゃと思ってて……これ、グレゴリーナイフ。俺の家族を絶対守ってほしいから、今度の旅の間、シャーリンさんが持っていてくれると嬉しいです。
王都内に、サンドワームはいない様ですし」
俺は、このグレゴリーさんの軍用ナイフを、敬意をこめてグレゴリーナイフと呼んでいる。
「ああ、そうだな。こいつがあれば五十年物でも百年物でも大丈夫そうだ。確かに預かった! これをお前だと思って、私が肌身離さず持っていてやるよ。そしてたまには舐めてやろう」
「ええええ?」
「ははは、だから冗談だって! ほんとに、ゆうたはからかい甲斐があるな」
出会った頃に比べて、シャーリンさんはすごく明るくなったように思える。
「あの人も、ゆうたに出会って変わったんじゃないかな。私もそうだけど」
プルーンはそう言ったが、俺は、自分ではまだ、人に影響を与えられる様な人間ではないと思っている。
一通りの挨拶や打ち合わせを終え、俺とプルーンは商会を出た。
「まだお昼前だし、王宮に入っちゃったら、今まで見たいに月一会えるかどうかもわかんないから、今日ぐらいはゆっくりデートしてくれるよね?」
「ああ、もちろんそのつもりだ。クリスマスデートってところだな」
「何? そのクリスマスって」
「おれの世界の年中行事でな。十二月二十五日に、サンタクロースさんていう聖人の誕生日を、世界中のカップルや恋人たちがいっしょに過ごしてお祝いするんだ。たぶん……」
なんかちょっと違うような気もするが、正直俺も良くわかっていない。まあ今の説明で大体合ってるだろ。
「うわっ、素敵! それで、いっしょに過ごすってどうするの? 私は知らないんだから、ゆうたがしっかりエスコートしてよね」
「そうだな。確か、いっしょにデートして、食事して、その後ホテルで……」
「…………」
それを聞いたプルーンが真っ赤になっている。
「ゆうた。それって……二人でつがうってことだよね?」
「えっ? あ、あー。いやー」
「うん、いいよ。ダウンタウンでは失敗しちゃったけど、私も反省したから。今度は、もっとちゃんとしたところでゆうたとつがおうって。今日は、下着もちょっといいの付けてきてるし、大丈夫だよ!」
「あー。ははは」
もう、いまさら取り繕うのも全然男らしくないな。俺は覚悟を決め、今日のところは、星さんには頭の片隅に隠れてもらう事にした。
その後、少し町中を二人で歩き、昼食をちょっと豪華なレストランで取った。
さてと、この後は……俺の世界だと、クリスマス当日には駆け込みでホテルなど取れないはず……だが杞憂だった。
この世界では別になんでもない日なので、簡単に部屋が取れた。
イルマンの貴族専用室に比べたら、そりゃ見劣りするけど、小ぎれいな普通の客室で、ダブルベッドではあったがシャワーは無かった。
俺とプルーンは、ベッドに腰かけ、お互いに寄りかかり合う。
「あー、シャワーあったらよかったのに。この部屋ちょっと暑いよね。私ちょっと汗臭いかも」 プルーンが顔を赤らめて言う。
「いや、そんなことは無いぞ。プルーンのいい匂いがする!」
「馬鹿!」
そういいながらプルーンが俺にもたれかかってくるので、俺もゆっくり彼女を抱きしめる。あっ、今日はネックレスつけてないんだ。
抱いていると、だんだんプルーンの顔が紅潮してきたのがわかる。
「ゆうた……私、もう溶けちゃいそう……」プルーンが身体をよじる。
そしてお互い、生まれたままの姿で見つめあう。
「うわー、おっきいね。イメンジのは見た事あるけど、こんなに大きくなかったよ」
「いやいや、父親が娘の前で大きくはならないだろ。俺だって普段はこんなに大きくないぞ」
「そっか。でもこれ入るのかな。私裂けちゃわない?」
「大丈夫だ。ゆっくり気持ち良くなれば……」
「そうなんだ……」
「それじゃ、プルーン。そろそろいくぞ……」
「うん。ゆうた。来て……」
おれは、プルーンの後ろから身体を重ねた。
しかし……入るはずだった俺のあそこが、ぷりゅんと弾かれた。
あれ? 俺、慌てちゃったかな。それじゃ、改めてもう一回。
腰を前にぐいっと……
「痛い、痛い痛い、イタイ! いったーいっ!!」
プルーンがそう叫びながら、たまらず前方に逃げて行った。
「だめだよゆうた。これ、絶対入らないよー。 私が壊れちゃう!」
あ! もしかして……あの、人間のはエルフや獣人の数倍っていう都市伝説って、実話なのか……。
「うわーん……」呆然とする俺の眼の前で、プルーンが大声で泣きだしてしまった。
そんなプルーンを俺は思い切り抱きしめ言った。
「ごめん、プルーン。ごめんな……」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます