第17話 かっぱらい
かっぱらいは犯罪である。
ひげを切ってしまったねこ、タマの買い主である、二件隣の米屋に出入りしていた私は、いつだったか、販売されているガムをかっぱらったことがあった。幼稚園位の頃である。
今見つかればもちろん犯罪だ。
どうしてこんな事をしてしまったのか、覚えていない。
小遣いは、貧乏なりにもらっていたはずだ。
小さいなりに、悪いことをしているとは思っていた。回数は2回か3回位、ブツは、10円のガム一つだったと思う。
犯罪者心理とはよく言ったものだ。どうしてバレてしまったのか、肝心なそこの所を覚えていないのだけれど、米屋が母親に言いに来て、母親が謝っていたのを少しだけ覚えている。
また、かつての「屋久島のとびうお漁師はトレーラー暮らし」の中に出てくる、岩手県出身の隣人「ゆきおくん」が、
「みなさーん、ふくしまひろしくんは、こめやのガムをかっぱらいましたぁ~」
なんて事を言っていたのも覚えている。
母にこの事で怒られた記憶はない。それよりも、前回の250円のキャベツの方をよく覚えている。
やってしまってから、しばらくの間は変な気持ちになって悩まされた。今思い出して、こうして書いていても申し訳ない気持ちでいっぱいになる。
金額的にはたかが数十円なのに、とんでもない身体への負担をかけてしまったものだ。
今では真っ当な生活をしているが、心のどこかにおかしな事を考えてしまう習性や性癖と言われるようなものがあったのだろう。それは"あら還暦"の今も変わらないけれど、年齢と共にそれを抑える事ができるようになって行ったのだろう。
若者が市販の薬を沢山飲んでしまうとか、法律的に認められていない薬物を摂取してしまうとか、ホストに貢いでしまって風俗で働いて借金を返すとか、いろいろないけないことが時々報道されるけれど、私はこの気持ちがわからなくもない。
小さい頃、かっぱらいを経験して、辛い思いを引きずった経験があるがゆえ、いけないことは辞めた方がいいという教えを、自分なりに学んだ。
今は無くなってしまった米屋に、50年以上が経過した今再び謝罪すると共に、もし何か"おかしな事"を考えている人がいるなら、「あとあと後悔するので、それは辞めた方がいい」と、この経験から伝えておきたい。
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