第16話 オオゼキ 大関屋で嬉しかったこと。昭和40年代半ばの記憶
世田谷区を中心として展開するスーパーに、オオゼキがある。
このスーパーの本店が、玉電松原の近くに今でもある。
ここはかつて大関屋という名前の店だった。
ガチャガチャ数字を押し込んで計算するレジがあり、買った商品は紙袋に入れて持って帰ってきたような記憶がある。
大関屋は建て直し工事をして、とても近代的なスーパーになった。当時でも自家用車で買い物に来ている人がいて、すごいなと思った。
サザエさんではないけれど、私は時々母に買い物を頼まれて、大関屋まで買い物に行くことがあった。
殆ど記憶がない中で、一回だけ鮮明に覚えている買い物がある。
母からのオーダーは、「キャベツを買ってきてね」だった。
数量は覚えていないが、普通の家族で考えるなら一つだ。
私は大関屋に行って、キャベツを買って帰ってきた。どうしてだか覚えていないのだが、2つ買って帰った。
おそらく昭和45年前後だったと思うが、このキャベツは一つ250円だった。これを2つ買って帰ったところ、母は怒り出した。
「何でこんな高いのを二つも買ってくるの!一つ返してらっしゃい!」
私はせっかく買い物をして帰ってきたのに、褒められることなく、怒られてしまい、その上返品作業まで仰せつかってしまった。
とぼとぼとキャベツを一つ持って大関屋に行き、中で働いているお姉さんに声をかけた。
「これさっき買ったんだけど、二つ買っちゃって、お母さんに怒られて、一つ返して来いって言われちゃった…」
こう言ったかどうかは覚えていないけれど、担当してくれたお姉さんはしゃがんで私の目線と同じ高さで聞いてくれて、とても嬉しかったのだけは覚えている。
当時の大関屋の中の様子も何も、今となっては思い出すことができないけれど、キャベツの返品が無事にできた事だけは覚えている。
母に怒られた記憶はあまりないのだけれど、このキャベツ案件だけは、何故かはっきりと覚えている。
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