第3話 赤堤幼稚園
幼稚園は、赤堤幼稚園という所に通った。
少し大きな道路を挟んで、2ブロック先に、マリア幼稚園、という所もあったのだが、ここはカトリック系だとかで、六所神社という神社にくっついている赤堤幼稚園に通うことになった。
家から幼稚園までは、今、地図で見ても結構な道のりだが、ここを毎日歩いて通っていた。車も少なかったし、今ほど危機感もなかったので、何の問題もなかった。もちろん幼稚園バスなどあるはずもない。
おかしなことばかりを覚えている。
砂場で何か出てきたと喜んで、手にとって折り曲げてみたら猫の排泄物だったとか、プールの日は先生の裸が見られて楽しみだと、クソガキなのに考えていたこととか、ヤクルトの空き容器でロボットを作ったこととか。
そんな中でも、ハッキリと覚えている事がある。私は無性に幼稚園に行きたくなくなって、家で登園拒否を起こし、泣きわめいていた。原因は自分でもよくわからない。
基本的に放任主義だった家庭だが、この時は何故だか父親が出てきた。
「そうかそうか、わかった。車に乗れよ。ドライブに行くぞ」
と言って、私を当時仕事で使っていた、品川 4 ナンバーの緑のライトエースバンの助手席に乗せた。
私はドライブに行くものだと思い、機嫌が直った。
父は出発すると、甲州街道でも環八でもなく、幼稚園に向かった。
私は狐に摘ままれた状態のまま、幼稚園の正門の前で降ろされた。
とっくに登園時間を過ぎていたので、門は閉まっており、門の外から泣きわめくと、先生が来て園内に迎え入れてくれた。
どんな会話をしたのかまでは覚えていないが、父親が嘘をついたので、このやろうと思ったのを覚えている。
今の時代、登校拒否や不登校などが問題になっているが、このような問題は既に50年以上前からあったのだ。
時代はかわれど、人と人が集まる中には何かがある。
私はいち早く、それを発見してしまったのかもしれない。
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