第46話 彼とのデート

だってリリアンさんの能力なら、死人を生き返らせることも容易いでしょうから。

そしてユウトは続けます。

「最初は不安だったけど、今は大丈夫なんだ。このお屋敷の人たちはみんな優しいし、

何より俺に居場所ができたことが嬉しくて仕方がないんだよ」

と語った後、彼は照れくさそうに笑っていました。

その姿はまるで昔と同じで、懐かしさを感じずにはいられませんでした。

やがて会話は途切れ、お互いに黙り込んでしまいましたが、

それでも心が通じ合っているような感覚があり、不思議と心地良い時間でした。

しばらく経ってから、リリアンさんがお茶を持って来てくれましたので、

皆でお茶会が始まりました。

私は彼と再会したことをとても嬉しく思いますし、

これからはずっと一緒にいられると思うと心の底から喜びが込み上げてくるのです。

だから今この瞬間を大切に過ごしたいと心から思えるようになったのです。

おもてなしを受けながら楽しい時間は過ぎていくのですが、

その間も私の悩みが消えてくれることはありませんでした。

いやむしろ増すばかりでありました。

なぜなら彼の想いを感じていたからです。

リリアンさんを好きなことも、 ずっと私の事を気にかけてくれていたこと、

そんな彼の気持ちが痛いほど伝わってきたからこそ、私の心は揺れ動いていました。

そんな時でした。

ふと顔を上げるとそこにはユウトの姿があったのです。

彼は優しい笑みを浮かべながらこちらを見つめていましたが、私は恥ずかしくて目を逸らせてしまいました。

それでも尚、彼は私に向かって語り続けてくれました。

「愛羅、今まで黙っていてごめんね。

本当はもっと早く伝えたかったんだけど勇気が出なくてさ……でもこうして再会できて本当に嬉しいよ」

と言ってくれた時にはもう胸が張り裂けそうになり、思わず涙を流してしまいました。

そうすると彼は慌てた様子で駆け寄って来て涙を拭いてくれたのです。

それが嬉しくて余計に泣いてしまいました。

そんな様子を見て苦笑いを浮かべる彼の姿に安心感を覚えましたし、

改めてこの人が好きだと再認識することができたのです。

その瞬間、胸の中に温かいものが広がっていき幸せな気分に浸ることができたのでした。

それを見たリリアンさんが微笑みながら言いました。

「ふふっ、二人とも可愛いわね」

そんな彼女の言葉を聞いて更に恥ずかしくなってしまったのですが、

同時に幸せな気持ちも芽生えていたので、自然と笑みが溢れてしまいました。

その後、私たちは夕食までごちそうになりましたが、その間ずっと彼のことを意識していました。

食事を終えて居間に戻るとリリアンさんが言いました。

「さて、そろそろ寝ましょうか」

それを聞いて胸が高鳴りましたが平静を装いつつ答えました。

そうすると彼女は微笑みながら私の手を取り部屋へと案内してくれたのです。

そしてベッドに横たわると隣に彼女がいることに気づいた時、心臓の鼓動が激しくなりました。

緊張でなかなか眠れずにいると、リリアンさんが背中をさすってくれました。

私はドキドキしながら彼女の手を握り締めていると、彼女も握り返してくれてそれがまた嬉しく思えたのでした。

それから程なくして意識が遠退いていったのですが、その間もずっと手を握ってくれていたので安心できたんです。

翌朝目を覚ますと目の前には彼がいて微笑んでくれましたので、それだけで幸せな気分になったのでした。

その後も彼とは毎日楽しく過ごすことができましたが、それでもまだ足りないと思ってしまう自分がいることに気付いていたのです。

もっと彼と一緒に過ごしたいと思っていたので、思い切って尋ねてみることにしました。

「ねえ、ユウト、明日デートしない?」

私が誘うと彼はとても喜んでくれて、予定を合わせてくれることになったのです。

そうして迎えた当日、私は朝早くから支度をしていました。

化粧をして服も選んで、髪も整えて準備万端です。

待ち合わせ場所で待っていると、彼がやって来ましたので駆け寄ります。

彼もまた嬉しそうに笑っていて嬉しくなったのでした。

まずは街中を散策することにしましたが、お互いに緊張していたせいか会話が上手く続かず無言になってしまいました。

そんな時でした、不意に彼が手を差し出してきて言ったのです。

「愛羅、一緒に歩こうか」

と……その瞬間胸の鼓動が高まりましたが、どうにか平静を装って手を握り返しました。

そうして二人で歩きながら他愛もない話をしていきましたが、

それでも尚心は満たされていくばかりであり、時間を忘れて楽しんでいました。

やがて昼食の時間になり、私達はレストランに入りました。

席に着くと緊張が解けたのか、思わず笑いが溢れてしまいました。

お互いに見つめ合った後、今度は私の番だという気持ちになったので、勇気を振り絞って言いました。

「ねえユウト、あなたはこの世界に来てどんな思いを抱いているの?」

それを聞くと彼は少し考え込んだ後で答えてくれました。

「そうだなあ……初めは混乱していたけど、今はみんな良くしてくれるし、

楽しく暮らしているよ」

私はほっとしたような気持ちになりましたが同時に不安もありました。

もし彼が元の世界に戻りたいと言ったらどうすればいいのだろう?

そんなことを考えていると、突然彼が私の手を強く握ってきました。

驚いて顔を上げると彼の真剣な表情が目に入ったのです。

そして彼はこう続けました。

「でも心配はいらないよ、だって僕はこれからもずっと君の側にいるからね」

そう言って笑顔で語りかけてくれました。

その言葉を聞いた瞬間、胸が熱くなり涙が溢れそうになりましたが必死に堪えたのです。

その言葉だけで十分だと思えたからです。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る