第42話 本当は学院生?

なんと彼女が突然姿を消したのです。

最初は心配していたのですが、そのうち戻ってくるだろうと思っていました。

しかし、いつまで経っても戻ってきません。

何かあったのではないかと思って探しに行こうとしましたが、どこに行ったのか見当もつきませんでした。

そんな時でした……突然目の前に現れた人物によって状況は一変します。

それはなんとリティアさんでした。

彼女は私に微笑みかけると言いました。

愛羅、貴女を迎えに来た。

さあ、一緒に行きましょう。

そう言って私の手を摑むと、そのまま引っ張っていきます。

私は抵抗せずについていくことにしました。

なぜなら彼女がとても嬉しそうだったからです。

それに私自身も彼女に会いたかったからです。

だから黙ってついていきました。

彼女は嬉しそうに笑いながら言いました。

「愛羅、これからよろしくね」

その言葉に私も笑顔で応えます。

こちらこそよろしくお願い致しますね、リティアさん。

こうして私は魔王軍の仲間になりました。

でも、一つだけ気になることがありました。

それは彼女がどうして私を好きになったのかということです。

正直言って全く心当たりがありませんし、

そもそも彼女とは出会ったばかりなので尚更分かりませんでした。

だから思い切って尋ねてみることにしました。

なぜ私のことが好きなのか?

と聞くと彼女は笑いながら答えてくれました。

「そんなの決まっているじゃないですか、貴女のことが好きだからですよ」

聞いて私は驚きました。

まさかそんなことを言われるとは思ってもみなかったからです。

すぐに我に返ると慌てて否定します。

私には既に心に決めた人がいるので無理ですと伝えると、

彼女は一瞬悲しそうな顔を見せましたが、すぐに笑顔に戻りました。

私に問いかけてきました。

「そうですか……残念ですが仕方ありませんね」

そう言って立ち去ろうとする彼女を引き止めるように声をかけます。

待ってください。

まだ話は終わっていませんよ?

私がそう言うと、彼女は驚いたような表情を見せましたがすぐに笑顔に戻りました。

そして私に問いかけてきました。

「では、どういった用件でしょうか?」

と聞かれたので正直に答えます。

私は貴方と戦うつもりはありませんし、ましてや仲間になどなる気もありません。

ただ一つだけ聞きたいことがあります。

なぜ私を助けたのですか? その質問に対して彼女は微笑みながら答えてくれました。

「そんなの決まっているじゃないですか、好きだからですよ」

そんなやり取りの後、私達は別れました。

その後、私は魔王城を出て自分の家に戻ることにしました。

(うぅ……痛いよぉ……)

お腹の痛みに耐えながら必死に歩くこと数時間、ようやく家に辿り着いた頃にはすっかり暗くなっていた。

「ただいま……」

誰もいない部屋に私の声だけが響く、いつもなら出迎えてくれるはずの妹の姿もない。

きっとまだ学園から帰ってきていないのだろうと思い、そのまま自分の部屋へと向かった。

部屋に入った瞬間、私は驚愕した。

何故なら部屋の中が荒らされていたからだ。

本棚や机の引き出しなどが開けられており、中に入っていた物が床に散乱していたのである。

一体何が起きたんだろう?

と思いながらもまずは片付けることにした私は、一つ一つ手に取って確認しながら元の場所に戻していくことにした。

そこであるものを見つけたことで手が止まった。

(あれ……? これってもしかして)

見つけたものは一冊のアルバムだった。

表紙には何も書かれておらず、中身を確認するためにページをめくっていくとそこには

幼い頃の思い出がたくさん詰まっていた。

写真に写っているのは私と妹の二人だ。

「懐かしいなぁ……これ、確か幼稚園の頃の写真だ」

次々とページをめくっていくうちに、ある写真を見つけて手が止まる。

そこには私と妹の他にもう一人写っていたからだ。

それは今よりも少し幼い顔立ちをした少年の姿だった。

「あれ? なんでこの子がいるんだろう?」

不思議に思いながらも次のページをめくると、そこにも彼が写っていた。

しかも、今度は別の角度から撮ったものだということがすぐに分かった。

なぜならその少年はカメラに向かってピースサインをしていたからである。

(どうして彼がこんなところにいるんだろう……?)

そんな疑問を抱きながらもアルバムを読み進めていくと、最後のページでようやく終わりを迎えたようだった。

そこで私は再び手を止めた。

何故なら、その最後のページには一枚の手紙が挟まれていたからだ。

(なんだろう?)

「愛羅へ」

と書かれた封筒を開けると、中には一枚の便箋が入っていた。

その内容を読んで私は愕然とした。

そこに書かれていたのは衝撃的な内容だったからだ。

手紙にはこう書かれていた。

突然このような形でお手紙を差し上げることになってしまい申し訳ありません。

どうしてもお伝えしたいことがあり筆を執らせていただきました。

実は貴女の妹さんについてなのですが、彼女は現在ある組織によって監禁されています。

その組織の名前は魔王軍と言います。

彼らは人間族との戦争のために日夜研究を続けていますが、

最近になって新たな戦力として異世界人召喚を行うことにしたのです。

選ばれたのが貴女の妹さんです。

妹さんは無理やり連れてこられた上に洗脳を施されて操り人形となっています。

このままでは間違いなく殺されてしまうでしょうから一刻も早く助け出す必要があります。

「魔王軍」

という単語を見た瞬間、私は嫌な予感がした。

何故ならその名前には聞き覚えがあったからだ。

そう、それは私がこの世界に来るきっかけとなった出来事に関係しているものだったからである。

当時、私は学院性だった。

いつものように学園から帰っていると、突然目の前が真っ暗になったと思ったら次の瞬間には見知らぬ場所にいたのである。

しかもそこは見たこともないような場所で、周りには大勢の人たちがいた。

彼らは口々にこう言っていたのだ。

「ようこそ! 勇者様」

最初は何を言っているのか理解できなかったが、徐々に理解し始めた時にはもう手遅れだった。

彼らの話によると、この世界は今危機に瀕しているらしいのだがその原因は不明であり解決策も見出せていないそうだ。

彼らは最後の手段として異世界から勇者を召喚することに決めたらしいのだが、

その代償として膨大な魔力が必要となり結果として私を呼び寄せることに成功したらしいのだ。

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